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再会と別れ

ある日、ジャンは団長に呼び出されていた。

あのお茶目な団長が真面目な面持ちで、「ジャン話がある。明日は残れ」といわれたのだ。

今日は子供たちに遅くあるから、先に何か作って食べておけと伝えてある。

「いったい何なんだ?」

疑問を抱きつつ、ジャンは仕事を終え団長のもとに向かった。

「団長いますか?」

テントの前で声をかける。

「あぁ、入ってこい」

幕をよけ、中に入っていくと向かい合う椅子の片側に座る団長。

今までにない真剣な表情でいた。

「ジャン来たか」

「何の用ですしょう?子供達が待っているから、早く帰りたいのですが」

「まぁまぁ、()り敢えずは座ってくれ」

若干不機嫌そうなジャンをなだめる様に、団長は椅子に座らせると口を固く閉じる。

文句を言おうと口を開いたジャンだが、静寂に包まれた空気を感じ、思わず言葉を飲み込む。

そして、大きなため息をついた後、団長は決心したかのようにこう言った。

「なぁ、ジャン」

「何です?」

「この指輪、見覚えあるだろう」

団長のシャツの襟の間から見える見覚えのある指輪。

思わず自分の物と母の形見を探すが、どちらも手元にあった。

「団長がどうしてそれを持ってるんですか?」

父が持っているはずの指輪。それを今ジャンの目の前に座る人物が持っている。

まさか、死体から盗むわけはないだろう、ではどうして…などとジャンが考えていると団長は目を覆っている汚れた包帯をゆっくりと外しながらジャンに語り掛けた。

「俺には昔家族がいた、小さい家にみんなで住んで、仲良く楽しく暮らしてたんだ」

徐々に露わになっていくケロイドで醜く潰れた目。

「でもな、友人に裏切られて俺の家族はバラバラになった。そして妻は切り裂きジャックに殺されたらしい」

その言葉を聞いてジャンは、岩の様に動かなくなった。

しかし、団長はそんなジャンを無視して話を続ける。

「なんでだかな、妻が死んだ途端に殺人が起こらなくなったんだよ。なんでだ?なぁ、ジャン、いや、ジャック」

声を出そうにも、声が出ない。考えがまとまらない。

「え、団長が父さん?あれ、死んじゃったんじゃなくて生きてる?どうしてあれ、なんっで?」

忘れ去られていた記憶が一気に押し寄せ、荒波の如くジャンを襲う。

死んだと思っていた父、娼婦になり下がった母、自分が殺した娼婦たち、今共に生活している子供達。

「ジャン、俺はな、お前と久々に会った時驚いたよ。第一声がアンタ誰だよだぜ?父親としてかなりショックだったわ、しかも最近まで人殺してたしよ」

淡々と語る団長と、まだ記憶の整理が終わらないジャン。

「…ジャン、お前は昔から変わらないな、変に真面目でストレスが溜まると可笑しくなる、実に奇怪な子供だった」

懐かしそうに語る団長。その目線は遠い。

「最後に父親としてお前にプレゼントをやろう」

「プレ…ゼント?」

「そーう!プレゼント!」

そう言って、団長は思い切りジャンの鳩尾殴る。

「ッガ!?」

「プレゼントは、身代わりだ。馬鹿野郎」

薄れていく意識の中でジャンは必死に父を呼んだが、それは声にもならず、届くことはなかった。

そして、団長はジャンが殺人に使用したナイフを探し当てると、それを持ち、行方をくらませた。


団長がいなくなって、一月。

ジャンはサーカス団団長兼ナイフマジシャンとして活動していた。

孤児であった子供たちはジャンから様々なことを学び、自分が得意とするものを生業としていた。

ジャンの父である団長は切り裂きジャックとして名乗り出、即絞首刑に処された。

ジャンが助けに行く暇はなかった。

ジャンはこれからも後悔を背負い、生きていく。

何人もの子供たちを助けようとその後悔は消えることも、薄まることはない。


時が流れ、何十年の時が経ったころの事。

一人の孤独な牧師が息を引き取った。

沢山の不幸に塗れ、数多くの幸せに出会った彼の名はジャン。

またの名を『切り裂きジャック』

あれ、団長イケメンでしか想像できなくなったぞ…


これにて、切り裂きジャックの記憶は完結です。

更新中の死神恋哀歌は亀更新で参ります。

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