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繰り返される悲劇

最初の犯行から数週間。

女を二人今まで殺したが、憎しみは消えなかった。

恨みは快感に変わった。

あの首を切り裂く感覚、腹にナイフを刺した時の、あの幸福感。

持ち去られる内臓を見た時の女の驚愕と絶望に満ちた表情。

全てが快楽的だった。

まるで麻薬の様に、止められない、この病に名を付けるとしたら『殺人依存症』。

現在、ジャンは3人目の獲物を探していた。

どの女にしようか、そう思うだけで、目に紅く線が走り、眼光が鋭くなる。

ジャンの中では楽しい狩りの時間だ。

口の端が吊り上がっていることに気付き、思わず手で隠す。

これでは獲物に近づけない、そう思ったジャンは元の表情に戻し笑顔を作った。

「こんばんわ、お嬢さん」

今夜は若い女。恐らくジャンよりも歳は下だと思われる。

幼さを残した表情に大きく胸元の開けた淡い青のワンピース、妙に妖艶な女だった。

「こんばんわぁ。いい夜ですね」

「えぇ、とても夜空が美しいですよね」

女がジャンの傍に近づく、ジャンは欠伸をするフリをして口元の変化を隠した。

早く切りたい、早くあの白い首を切り裂いて紅くしたい。

早くなる鼓動を抑え、女が絡みついてくるのを待つ。

「お兄さん…どうですかぁ?」

グッと押し付けられて柔らかく変形する女の胸。

女を油断させるために、笑顔を作るとジャンは女を突き放す。

「え…?」

驚いている隙に、柔らかい喉を刈る。

紅い雨が降る中、更にジャンは腹にナイフを突き入れる。

ナイフ越しに感じる内臓の柔らかさに一瞬酔いながら、ナイフを薙ぐ。

途中、肋骨に当たったらしく、擦れる音がしたが気にはしない。

凶器の特定をされても、このナイフはどこにでも売っている代物だからだ。

女が呼吸をする度に空気の抜ける音がする。

「ヒュー…ヒュー…」

目にはもう既に光はなく、空気は切られた首からどんどん排出されていく。

「なぁ…苦しいかぁ?苦しいだろ、辛いだろ!」

楽しげに、憎しげにジャンは言葉と紡ぐ。

薄い記憶の中にある娼婦への憎しみがジャンを駆り立てる。

空気の抜ける音だけを発する女の腹に腕を入れ、内臓を無理矢理引き抜く。

肉の千切れる音が、ジャンの鼓膜を満たす。

あまりの痛みに、死にかけている女が腕を伸ばしてジャンを止めようとするもそれは無駄な抵抗で終わる。

「あ…あぁ…」

「声帯がダメになってるから、会話はできないんだよ、残念だったね」

女の腕をつかんで、ナイフを突き刺す。

痛みで女が暴れる。

「ああああああああ!!」

「そろそろ、かな」

ジャンがそう言葉を発した直後、女の体から力が抜け動かなくなる。

地面が酷く紅い。

「あんなに暴れるから大量出血で死んじゃったよ、もっと遊びたかったのにさ」

ジャンはそう悪態をつくと、女のワンピースでナイフを拭き、死体を力一杯顔を蹴る。

「もっと遊ばせろよ!この娼婦ども!」

徐々に女の顔が潰れていく。

「あーくそ」

最後にぼそりと呟いて、ジャンは靴についた血をまたワンピースで拭き取る。

自分の証拠を残さないように、丁寧に。

「あーあ。つまんない」

先ほどまで蹴っていた顔は、熟れ過ぎて落ちて破裂したトマトの様だ。

ジャンは自分で作り出した死体をもう一度見ると、ため息をついた。

「…()きた、帰ろう」

今まで散々遊んだあとは、片付けもせずに帰っていく。

殺人鬼は気紛れだ。


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