実況解説
日常は日々戦場である
平日には会社へ行き、世のため人の為に汗水たらして営業回り
特に電車は通勤ラッシュ時はまさに白兵戦である
リュックやバッグは剣や盾、キャリーバッグまさに重火器の類だ
『さぁ!始まりました隣の実況解説!』
『実況は私、角田と』
『佐藤がお送りします』
異常なまでにハイテンションの実況と妙に落ち着いている解説である
隣の実況解説は毎日ランダムに選出される一般人の起床から会社に行くまでをお伝えする番組である。
友人に勧められ1回ぐらい聴いてみることにした
誰しも思うことは、どうやって家の中を撮影しているのか、と言うことである。
驚くことに未だにクレームなどの類は一切ないらしい
さらに佐藤の解説が評判らしくファン曰く
「生活感溢れる生々しさが逆にそそられる」らしい
何とも理解しがたい
『それでは参りましょう!今回は東京都在住の鈴木さんのお宅です』
名前ランキング上位者である
『前回に引き続き名前ランキング2位の方ですね』
どうやら佐藤も同じことを考えていたらしい
『起床時間は6時30分だという鈴木さんですが、これはどうしたというのか!』
何かトラブルか?
『時計はとっくに7時回っている!』
『残業でも有ったのでしょう、これは痛いでタイムロスですね』
30分は長いようで実はとても短い、やってしまったな鈴木。ドンマイ!
『おっと、ようやく起床したようだ。時計を見て焦っている無理もない』
『帰って来て直ぐに寝たため服がヨレヨレですね、奥さんがいたら大変でしたね実は私もね・・・』
どうやら鈴木は未婚らしい。そしてこの後、佐藤の失敗談を10分位聴いた
そうこうしている内にいつの間にか駅に向かっている場面になっていた
『何やらソワソワし始めたぞ、もしかしてこれは!』
『定期を家に忘れたようですね』
『定期を家に忘れたようだ!』
ほぼ同時で言葉を発したようだったが、少し遅れて穏やかな口調が聴こえた
『すごい汗ですね、よっぽど上司が怖いんですかね?』
どうやら尋常では無いらしい、現にこの前似たようなことあったし気を付けないとな
『定期は諦めて切符買うみたいだが、ここでまたアクシデントだ!』
まさかな・・・
『切符を買うお金が入ってないとは、とても残念ですねもし自分だったら耐えられない』
散々な言われようである、哀れなり鈴木
『ATMも混雑しているがもう迷っている時間は無いようだ』
『時刻は8時手前ですね。もうこうなってくると上司に電話するかどうか悩みどころですね』
結構絶望的な時間ではあるが最近では9時までに出勤すればいい所もあるみたいだが
鈴木の様子から察するに8時30分出勤とかであろう
『ようやく電車にも乗れた鈴木さんですが追い打ちを掛けるように降りかかる不遇』
『あぁよくありますよね、待ち合わせ停止』
不運にも鈴木は見事引っかかったらしい
そして停車すること5分電車は動き出し目的地である千葉県の下総中山到着
たとえ中央快速で新宿から御茶ノ水まで行っても下総中山までは
各駅で行くしか方法が無い、前後の駅で快速が無いのだから
結局、会社に出勤できたのは9時手前である
その後上司はこっぴどく怒鳴った
そう何故こんなにも詳しいのかそれは・・・
私がその上司であるから