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私の幽霊事情と神様の嘘  作者: 古都助
番外編
6/13

幽霊少女の転生事情①

番外編失礼いたします。

今回は、三部構成。桜の過去話が関わってくるお話になります。




「神様、もうそろそろ転生ルートに入りたいと思うんですが」



「却下だ。そんなものは現実には存在しない」



「嘘言わないでくださいよー!!

 続々と、私のお仲間の幽霊さん達は、役目を終えて転生の道に入っちゃってますよ!!

 皆さん良い笑顔で「また来世~」って……!!」




和室で雑誌を読んでいる神様に縋り付くと、

ちらりと一瞥されただけで却下されてしまいました!!

ううっ、酷いですよ~……、私だけ転生出来ないなんて……!!

神様に出会って早半年。

私と志を同じくした幽霊さん達は、攻略対象さん達の補佐を終え、

続々と旅立ち始めました。

そりゃあもう良い笑顔で……、置いて行かれる私の気持ちがどんなものか、

この神様は少しも考えてくれていませんよ!!




「一生のお願いです。転生権、返してくださいっ」



「だが断る」



「もう!! なんでそんなに頑固なんですかー!!

 私の事なんて、通りすがりの風か何かだと思えばいいじゃないですか!!

 きっと他に良いお嫁さん見つかりますって~!!」




こんな元・平凡庶民な幽霊に固執しなくても、

神様には美しい女神様達がよりどりみどりだと思うのです!!

きっとスタイル抜群の妖艶な美女さんとか、お胸の大きな色気溢れる方とかっ。

そう訴えた私に、神様が雑誌を閉じると、盛大な深く重々しい溜息を吐かれました。

な……なんでしょうか、物凄く呆れられてますよ!!




「あまりくだらない事を言うと、さすがの俺も怒るぞ?」



「え、えっと」




ついでに、ものすごーくお怒りになられているようです!!

私、何か地雷でも踏んだんでしょうかっ。

神様が私の腕を掴んで、自分の胸元へと飛び込ませます。

厚く逞しい胸板に顔を埋めると、神様の鼓動が伝わり変にドキドキしてしまいます。

ちなみに、神様は人間でないので心臓はありません。

その代わり、核となる存在ものが胸の中にあるそうで、それが鼓動を発しているのだそうです。

……って、今はそんな事より、この状態をなんとかしないと!!




「な、何か悪い事を言ったのなら謝ります!!

 だからっ、離してください~!!」



「お仕置きだ。このまま俺の腕の中にいろ」



「い~や~で~す~!!」



「はぁ……。本当にお前は、男心を傷付ける天才だな。

 まぁ、拒絶されても好きな事に変わりはないんだが」




神様はまた一つ疲れているような溜息を零すと、私の背中をよしよしと撫でました。




「あ~! 何桜ちゃんを独り占めしてるのさ!!」




急に目の前の空間が揺らいだかと思うと、白銀の長い髪の青年が姿を現しました。

最近、あんまり来ないな~と思っていたら、お久しぶりのカミサマご登場です。

神様に抱き締められている私を見つけて、神様に文句を言い始めました。




「俺だって桜ちゃんの事大好きなんだよ?

 ぎゅっとしたいし、キスもしたい、ついでにその先も」



「わー! わー!! 何言ってるんですかああああ!!」



「あぁ、その反応、本当可愛いね~。

 ほら、こっちにおいで。俺がむぎゅっとしてあげる」



「い~や~で~す~!!!!!!」




両手を差し出したカミサマに断固拒否の叫びをあ上げると、

神様が不機嫌そうに強く私を抱き込みました。

カミサマを冷たく睨んでいます。




「帰れ、このド変態が」



「失礼な事言わないでほしいな~?

 俺は桜ちゃんの事が好きでたまらないだけだよ。

 ていうか、君ばかりずるいだろう? こっちに渡しなよ」



「断る。これは俺のモノだ」



「横暴にもほどがあると思うんだけどな~。

 少しは弟にも分けようとか思わないわけ?」



「他の事は妥協してやるが、桜だけは渡さん。

 これは俺の嫁になる女だからな、浮気は厳禁だ」



「違うだろう? 桜ちゃんは、『俺のお嫁さん』になるんだよ。

 君みたいな俺様の嫁なんて、彼女が可哀想でしょ」



「ド変態の嫁になる方が哀れだろうが」




見事に私を無視して会話を進めてますね~……。

私は最初からどちらの神様のお嫁さんにもならないと断固拒否しているのに、

いつもこんな感じで自分達の都合の良いように物事を決めようとするんですよね。

どうすればわかってくれるのか、転生権を返して貰えるのか、いまだにわかりません。

まぁ、幽霊という立場上、時間だけはいくらでもありますから、

気長にお願いし続けて転生権を返してもらうしかないんでしょうが……。

と、冷静に状況を観察していると、神様の両手が私から離れましたよ。

カミサマと睨み合いを始め、ギリギリと両手をお互いに掴み合って罵り合ってます。




「さっさと帰れっ。じーさん共からのペナルティがまだ終わってないだろうっ」



「ふんっ、あんなの面倒でやってられないよ。

 可愛い桜ちゃんを俺の腕の中で愛でる方が優先事項だし?」



「そんな事、俺が許すわけがないだろうが!

 今すぐ帰れ!! 一秒、いや、一瞬たりとも俺の桜を見るんじゃない!!」



「それこそ聞けないね~!!」




……今のうちですかね。

のそのそと神様の懐を脱出した私は、お二人に気疲れないように和室を出ました。

一旦神様の住居空間を離れて、一人になれるところに行きましょう。

幸いな事に、神様はカミサマと喧嘩中です。

難なく空間を潜り抜けて、人間界にある神社まで辿り着けました。

お日様が山の向こうに消えていく夕暮れの時間帯。

カラスさんのカァカァと鳴く声を聞きながら、境内へと腰を下ろしました。

幽霊体では強く感じる事の出来ない風を、今だけは肌に強く感じたくて、

少しだけ実体化を行います。




「ふぅ……。一体どうすれば転生権を返して貰えるんでしょうか……」




究極の難題に溜息を吐いていると、神社の中に人影がやってきました。

黒髪の可愛らしい高校生ぐらいの女の子……。

そういえば、私が死んだのも……彼女と同じぐらいの歳の時です。

死因は……病気でした。

両親や友人を悲しませ、最後には眠るように逝きました。

生から死へ、そこに至る日常は……今でも忘れる事なく私の中に在り続けています。

私の罪は……、たくさんの人を悲しませて逝った事です。

だから、すぐに天国に行く事が出来ず、神様のもとに送られました。

その善行さえ終われば、天国で少しゆっくりして転生に迎える事になっていたんですが……。

ははっ……、気付いたら神様とカミサマに求婚される毎日です。




「あの……」



「ほへ?」




思考に沈んでいると、ふいに上から声がしました。

何だろうと顔を上げてみると、目の前には先ほどの可愛らしい黒髪の女の子がいました。

心配そうに私を見下ろしています。




「具合でも悪いんですか?」



「えっと……」




どうしましょう。凄く本気モードで心配してくれています。

私はどう反応すべきかわからず、きょろきょろと目を泳がせてしまいました。

すると彼女は、私の隣に腰を下ろして手を握ってきました。




「動くのが辛いなら、救急車呼びましょうか?

 少しだけ我慢できるなら、病院に付いて行く事も出来ますけど」



「え、えっと、あの、……ち、違うんですっ」



「え?」



「心配してくださっているところ、本当に申し訳ないんですけど……。

 ちょっと、悩み事がありまして……それでここに」



「あ、そ、そうだったんですかっ。すみません、勘違いしちゃって」



「いえいえ!! 私こそ心配をかけちゃって申し訳ないです!!」




お互いに顔を赤くして、すみません、すみません!! と謝り合う私達です。

はたから見たら、酷く滑稽に映るんでしょうね~。

でも、赤の他人をこんなに心配してくれるなんて、すごい良いお嬢さんですね。




「あ、でも、もうすぐ暗くなりますよ。

 お家に帰った方が……」



「……、そ、それが……、ちょっと帰りにくいといいますか……」




今神様の住居空間に帰れば、逃げた事に怒って神様とカミサマにどんな目に遭わされる事か。

考えただけでも憂鬱になります。

すると女の子は、また心配そうに表情を曇らせました。




「何か……ご事情があるんですね?

 あ、良かったら、家に来ませんか?

 一晩ぐらいだったら大丈夫だと思うのでっ」



「え?」



「そうしましょう!! 暗くなる前に善は急げです!!」




女の子は名案だとばかりに、私の手を引いて立ち上がりました。

薄暗くなる神社の敷地内を駆け抜けて、二人で走り始めます。

えっと……、もしかしなくても……これって、まずいですよね?

攻略対象キャラでもない、普通の人間の女の子に付いて行くなんて……。

だけど、何故か私は、止める事も出来ず後を走って付いて行っています。

それは、彼女のもつ気配がとても優しくて、どこか惹かれるものを感じたからかもしれません。

この女の子ともう少し一緒にいたいような、そんな不思議な心地になっています。

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