扉の前で◇一人の女と一匹の男
それでは『表設定』の記述を開始します。章を追って、つまり「扉」ごとに解説をしていきます。
本来なら、このプロローグでメインキャラである『マーサ』と『ドドさん』と、その舞台である『アインシュタイン・エレベータ』についての説明を簡単にでもすべきなのでしょうが、何しろ五つのエピソードを書き終えてから、文字数調整を含めてプロローグとエピローグを書いたために、かなり端折っているというのが本当のところです。いろいろと書き忘れているのは分かっているのですが、短編の文字数制限のために五百文字余りに制限されてしまいましたので、非常に窮屈なプロローグとなりました。
それではメインキャラを紹介しましょう。
先ずはレギュラーキャラで人妻の『マーサ』から。
彼女は『賢木 真朝』という名前で、通称は名前の方を訛らせて『マーサ』としました。この名前に意味を持たせてあります。それは『賢い木に真実の朝(が来る)』というものです。こじつけですけどね。
想定性別はもちろん女性で、想定年齢は三十四歳。想定容姿等は、いつも喪服を着ていて、声はアルトボイスでヒラヒラと喋るイメージ、そして酸いも甘いも宇宙も知り尽くした人妻という設定です。実はこの辺りのことは『裏設定』との絡みが濃いので、後ほどの解説になることをご了承くださいませ。
人妻と表現し喪服を着ていることから「未亡人」ではないかと思われるでしょうが、最初の設定ではそうでもなかったのです。初期の設定では『アインシュタイン・エレベータ』の内装と共に各扉ごとに「装い」を替えようと思っていたのです。
ある扉では、花柄のサマーワンピースを着て、サングラスを掛け、つばの広いストローハットを被ったマーサだったり、ある扉では、紺色のスーツジャケットの下に襟を立てた白いブラウスを着て紺色のタイトスカートを穿き、髪の毛を後でまとめて巻き上げた、クールなビジネスウーマンのマーサだったりと、バリエーションを考えていました。
このようなマーサのバラエティーなファッションで未亡人というイメージが付くことはないだろうと思っていたし、マーサ自体にミステリアスなイメージもまとわせることが出来たであろうと思います。
しかし、ここまでバラエティにしてしまうとストーリーがぶれてしまうのではないかという恐れと、文字数制限の中でストーリーを書くための文字数の確保と把握がしたいために、五つの扉全てで同じ表現を使い回したのです。
続いてレギュラーキャラのもう一人、いや一匹ですね。猫の『ドドさん』をご紹介しましょう。
彼の名前は『百々 来生誼』といい、通称はそのままの『ドドさん』としました。充分に不思議な名前なのですが、実際に「百々」と書いて「ドド」と読ませる苗字の方がいることを知っていますし、通常なら「もも」と読ませる方が普通でキレイな音感でいいのですが。そこはあえてふてぶてしいキャラのイメージにしたかったので「ドド」という濁音を選択しました。
この名前にもちゃんと意味があります。それはこの名前をこう読むのです。
『百々、生れ来ても、誼い』
つまり「何回生れ変わっても良い」という実にありがたい名前の意味になっています。何だか宗教めいて、輪廻転生からの発想かと思われそうですが、そうではないのです。実は「ある数学的論法」を用いただけで、ただその結果だという事実です。これは、マーサの『賢木 真朝』も同様の手法で生み出しました。それは『裏設定編』でタネ明かしします。もっとも、この名前のイメージから「成仏」なるセリフを発したりさせたのですが。
想定性別は雄、想定年齢は猫なので不詳、想定毛並みはミントブルー(水色)の縞模様、本文中では『ソーダアイス色』という形容をしています。想定容姿等は、人間の言葉で豊富な知識を振りかざす、甲高い声の二足歩行の猫で、帽子も服も長靴も着用してはいません。ただ猫だから後ろ足二本で立っていることや二足歩行が少々ツライだろうという想定で、チタンブレードの長剣を持って「杖」代わりとしているのです。
なぜ長剣を持っているかについては、これも『裏設定』なのでここでは明かしませんが、感想板でも賛否両論の「チタンブレード」の由来についてはここでお話しましょう。ただ単に語呂が良くてカッコ良い言葉だったというだけです。「鉄剣」とか「プラチナブレード」とかも発案しましたが、どうもSFじゃないような気がして。確か、何かのキャラクタがチタンブレードの剣を持っていたような気がしますが、そこまでは思い至らず仕舞い。よって「格好の良さ」意外に他意を持ってはおりません、残念ですが。
さて、レギュラーキャラの紹介が終ったところで、プロローグの解説へと進みましょう。
プロローグで一人と一匹が乗り込んでいるのは確かに「エレベータ」で、ビルなどに普通に設置されているエレベータの描写を施しています。でも、これは『アインシュタイン・エレベータ』ではありません。このエレベータはあくまでも入り口であり、『アインシュタイン・エレベータ』につながる連絡用のエレベータなのです。
二人、いやいや一人と一匹は、ある目的のためにこの『アインシュタイン・エレベータ』に乗らなければならないのですが、宇宙空間に浮いていたり、はたまた次元断層に浮遊していたりするのだと想定している『アインシュタイン・エレベータ』に移動するためにはどうしても入り口が必要で、それがこのプロローグのエレベータなのです。連絡用のエレベータと言ってしまえばそれまでなのですが、もっと意味深な想いを込めて、ダディは「ワームチューブ・エレベータ」という名称を与えたいと思ったりも。
そのワームチューブ・エレベータには意味有り気な五つのボタンがあり、手順通りにそれぞれの『アインシュタイン・エレベータ』に移動する訳です。
え?『アインシュタイン・エレベータ』は一つじゃないのかって?
えぇ、先ほど説明した通り、また本文でお読みになった通り、いろんな空間に『アインシュタイン・エレベータ』は存在しています。ただ、作者の怠慢、いやいや策略により『アインシュタイン・エレベータ』の内装が同じになっているだけなのです。
そして、ドドさんが手筈通りに「1」のボタンを押して第一の扉へと移動する、という訳なのです。