最後の扉◇セリフに秘めた想い
いよいよ、裏設定の解説も「最後の扉」を残すだけとなりました。
表設定で言葉を濁していた『セリフついてのこと』をここでお話しすることにします。
本編からセリフのみを引用してみましょう。
【マーサ】 「結局、ここに来てしまうのね」
【ドド】 「もう一度、やり直すのかい?」
【マーサ】 「いいえ、もうやり直さないわ」
【ドド】 「ホントに最後だと?」
【マーサ】 「えぇ、終わりよ」
セリフだとこれだけになります。……なんか侘しい。ダディの表現能力がまだまだであるということが最大の要因ですけれども、それ以上に文字数制限の壁と戦っていたこともあるので、この辺りは致し方ないといったところではありますが。そして、描写はその場の雰囲気を表現しているだけで決して不要という訳ではないけれども、ここでは裏設定を解説する上でそれ程重要ではないので引用を限定しました。
ここで、今まで隠し続けてきた『裏設定のテーマ』を明かしましょう。その方がこれから叙述する解説に得心することが出来るのではないかと思われるからです。
さて、そのテーマとは?
それは『五年間の空想科学祭』なのです!
こうしてテーマを明した後で、最後の扉で語られたマーサとドドさんのセリフを振り返ると見えてくるモノがあると思われますが、どうでしょうか?
順を追って、セリフを解説していきましょう。
最初のマーサのセリフである『結局、ここに来てしまうのね』は「空想科学祭の閉幕」を意味します。
続いてのドドさんのセリフ『もう一度、やり直すのかい?』は「また次回の空想科学祭をやるのか」と問い掛けています。
それを受けてマーサは『いいえ、もうやり直さないわ』と述べています。これは「次回の空想科学祭をもう開催しない」とキッパリと言い切っています。
それに対してドドさんは『本当に最後だと?』と念を押すように尋ねています。「もう二度と空想科学祭を開催しないのか」と。
そして最後のセリフである『えぇ、終わりよ』とマーサは言い放ちます。完全に「もう空想科学祭を主催しない」と宣言しているのです。
この「裏設定」の最初の章である『扉の前で◇マーサとドドさん』で、マーサは「天崎 剣」様であり、ドドさんは「戯独堂」様であることを明かしました。ですから、この部分はある意味で『ファンタスティック・ラジオ』の一部分を文字で再現したのだと思ってくだされば、このセリフの響きがあなたの脳裏にはその声と共に甦ることでしょう。
しかしながら、このセリフを創作したのは「ファンタスティック・ラジオ」が公表される一ヵ月以上前のこと。こんな風に書くための材料があったのは事実だけど、自分で創作した小説にも係らず、何とも言えない『ファンタスティック・ラジオとの不思議で奇妙な符合』を感じている次第です。
最後の最後に、小説の結末としてまた空想科学祭の終焉を象徴的に飾る言葉にしたかったのです。それも、解り易くもあり、分かり難くもありの、ダディらしくて中途半端な文言で。そんな想いでこのセリフを紡ぎました。
いくらかの残念さや無念さを含みながらもそれはごく一部のことであり、これが一つの時代を象徴……とは言い過ぎかもしれないけれども、それに近い熱い想いが関係者の胸の中には存在するであろうと確信をしています。
楽しかったあの夏の日々を思い出すかのようにそんなモニュメント的な小説として存在できたら、そういう気持ちで文字を綴りました。
こうしてコンセプト的にもストーリー的にも、そして空想科学祭のイベントにも終わりを告げるような、最後の扉の裏設定を解説させていただきました。そして、ここで明かした「裏設定のテーマ」は、この後の『裏設定の総論』で「裏設定のコンセプト」とかと併せて華が咲きます。……咲くはずですが。(汗)