第五の扉◇悟と真優子
第五の扉の裏設定も、やはりゲストキャラのカモフラージュでしょうか。
表設定では「この扉のゲストキャラはカモフラージュはある意味で慎重に丁寧に行っております」などと書きましたが、実際はそれ程凝ったことはしていないというのが本音だったりします。
実は「名前は後で付け替えよう」と思っていましたから、とりあえずの仮の名前で執筆を始めました。ところが、この扉の文章文字数は最終的に五千五百文字に達したために余計なことを考える暇も無くて、結局のところ、仮の名前をそのままで採用することにしました。ですから、マーサやドドさんのように数学的手法を用いたりとか、この扉のテーマの、多世界解釈の提唱者である『ヒュー・エヴェレット三世』からミドルネームをいただいたりとかの小細工は一切行っておりません。それでもそれなりのカモフラージュを一応は行っているので、それをご公表いたします。
まずは、主人公である『悟』から。
この名前については全然捻りはございません。空想科学祭のスタッフである「黒木露火」様の別名から全くのそのままで拝借しました。ここ最近のダディの創作において「キャラの名前は、漢字一文字で表すこと」がマイブームでして、そのマイブームの琴線に触れた訳です。
もちろん、この名前はダディの名前候補一覧表にも連ねてあるモノでもありましたので、特別に何かを考える必要は無かったということもありますが、のちに述べる『裏設定のテーマ』とか『裏設定のコンセプト』に引っ掛けるためにも、あえて「黒木露火」様からお名前拝借したということを強調しておきたいのです。
そして、ヒロインの『真優子』へ。
こちらは捻りました。といっても微妙な方法のカモフラージュですが。ネタ明かしをすると、空想科学祭に参加されている「桂まゆ」様のお名前から拝借しました。「まゆ」に「子」を付けて、好みの漢字で装飾しました。それだけです、はい。
なんて安直なんだと罵倒しないでくださいませ。充分に「桂まゆ」様のことを想いながら『真に優しい子』と名付けたのですから。え? その理由自体が余分だと? ……あ、はぃ、失礼しました。
こちらも「黒木露火」様と同じで、裏設定のテーマやコンセプトに引っ掛けたいがためのお名前拝借ですので、そこの辺りを強く強調しておきたいと思います。
お名前は確かにお借りしたのですが、それぞれの方のキャラまでお借りするのは憚られたので、悟と真優子の人物造詣はダディの創作です。……っていうか、ダディがいつもの通りに書き上げるキャラクターそのものでしかないですけれども。何度もエレベータ落下事故を経験する悟が二十一本の薔薇に執着する辺りは、エヴェレットの多世界解釈との絡みなのでストーリー的に動かしようがありませんが、それ以外の部分はダディのいつもの恋愛小説に他なりません。
恋愛小説って代物は、妄想だけで充分に機能して書き上げることが出来るモノだと思います。けれども、細かなディテールとかちょっとした「恋愛の仕草」とかはある程度の経験で深みが増したりしますし、パプニングなイベントは意外とセンスを問われます。そういう意味で言えば、ダディの恋愛小説はオーソドックスでパッシブでサイレントなラブストーリーが多いですから、恋愛小説としては微妙な立ち位置の表現かもしれません。
ですから、悟がはぁはぁと息を荒げてマンションのセキュリティボックスに飛び込むシーンとか、やっとの思いで十九階に到達して真優子に言い訳をし、その悟に対する真優子の受け応えだとかは全く先に挙げた通りで、自分でも少々野暮ったさを感じております。
何だかんだと書きましたが、それでも「この扉のストーリーが出色だ」と言っていただいたことに対してとても嬉しく思い、また感謝している次第です。これは、たまたまこのストーリーが上手く収まったということだけで、このことに自惚れずに切磋琢磨して精進しなければならないと感じております。