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AppendixEE  作者: 檀敬
Back Side(裏設定)
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第三の扉◇「はらこ・つとむ」

 この扉のエピソードに関しては、恣意的な「裏設定」はありません。強いて挙げるとすれば「東日本大震災によって引き起こされた原子力被害に対する痛烈な風刺でもある」といったところでしょうか。表設定では、戦争や核兵器に対してと、馴染まない宗教感に対するアイロニーであると述べていますが、それに関連して原子力そのものに内在する本質的な危険性に対しても警鐘を鳴らしているつもりなのです。この被害が直近五年のうちに起こったということも、このエピソードを『EE』の中に入れることになる『裏設定』のテーマにもつながっていく訳ですが。


『東海村を訪れた星新一に「所長の『はらこ・つとむ』に会いたい」と言わしめた原子力』


 黎明期のSF作家達は、なんとユーモアに溢れた方々なんだろうと感じます。そして、当時はまだSFは同人のような存在で公に認知されていなかったと何かの本で知った記憶がありますが、そんな何処の馬の骨とも分からない人達によく東海村の原子力研究施設の見学させたものだと、受け入れた原子力研究施設側にも感心してしまいます。世知辛い今の時代と違い、いかに大らかな時代だったのかが偲ばれます。


 思い起こしてみれば「アトム」の動力源も原子力だったけれど「サンダーバード」も原子力なんですよね。サンダーバード二号の後方部にある「ウィング」のようになった部分も確か原子力エンジンで、しかも五連装だったと記憶しているのですが。あの赤いノズル部分はもちろんメインの原子力エンジンですけど、それだけがエンジンじゃないんですよ。そんなこと、知ってました?

 リアルな世界では原子力航空母艦や原子力潜水艦が既に建造され配備されており、軍事機密のベールに包まれていてその実情はよくは分かりませんが、それなりの役割を果たしているようです。

 宇宙開発でいうと、パイオニアやボイジャーの頃から木星軌道以遠に達する探査機は太陽電池が使えないので「原子力電池」が使われています。この「原子力電池」は核分裂を起こして発電をするのではなく、放射性物質の原子核崩壊の時に出る熱を直接的に熱電変換素子で電気に変換するので、その状況はかなり違いますが。


『石油のように大量の燃料を使用することもなく、ずっと長く安定して使えるエネルギーとして、ちょっぴり怖い放射能や大量の放射性廃棄物が出るけれど、上手に使えば永く人類の生活に寄与する原子力』


 こんなような「触れ込み」で拡大した原子力発電所は、スリーマイル島のメルトダウン事故に始まり、臨界に達して炉心爆発したチェルノブイリ、そして外部電源喪失に陥ったフクシマを経て、ようやく原子力そのものの有り方が問われるような状況になった気がします。原子力には元々、こうした危険が内在していると気付いていたけれども、そんな事情をこれほどにあからさまで呆気ない程に分かり易く説明することになるとは原子力関係者はもちろん市民レベルでも予想しなかったことだろうと思います。


 こうした理由から「今すぐ廃炉しろ」と叫んでみたところで、ビルを解体するかのように原子炉のあった場所を数ヶ月で「更地」することは絶対に無理な話であり、数千年以上の時間を経なければ「更地」になど出来ないでしょう。解体に際しても、特に原子炉の格納容器は放射化された建材などが発する放射線の中で作業をする必要があるし、解体出来たとしても放射化して放射線を発する廃材を何処へどのように最終処分をするのかといった問題があり、廃炉をするためには解決しなければならないことが山積しています。

 結局のところ、一旦原子力を扱ってしまった人類は、今後数十年から数万年という長いスパンで、この危険なモノとのお付き合いをしていかなければならないという運命(さだめ)を負ってしまったということなのだと思います。


 放射能を全く無くすということは出来ないにしても、即座に放射能が安全レベルになるような原理とか工学理論とか装置とかを開発する希望のある人類を描くSF小説を多数待つだけでなく、そういうリアルな世界になることを期待しつつも、やはり自然や宇宙の営みに人類は打ち勝つことなど出来るのだろうかと畏敬の念を感じたりしています。そんな想いと「東日本大震災」の原子力被害に対する畏怖を、この扉の『裏設定』にしたいと思います。

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