第一の扉◇「太陽系の外側」と「DSWB」
この扉の話はダディが得意な宇宙空間の話です。しかも太陽系内のエリアでEVA(宇宙遊泳)を行うというストーリーです。全然嫌いな話なんかじゃありません。むしろ、大好きなんです。
エマージェンシー等に関する部分の描写は表設定でも述べた、星野宣之の『2001夜物語』に出てくる「第四夜・大渦巻Ⅲ」をイメージしていますが、EVA(宇宙遊泳)の描写については、その大部分を太田垣康男の『MOONLIGHT MILE』(ムーンライトマイル)に負っているところが大きいです。特に月開発黎明期の猿渡吾郎がBSとして大活躍するISSでの働きは大いに参考にさせていただきました。
連載中のこの作品の現在はかなり話が進んでいますが、第一部のネクサス計画で月面基地を作る辺りは食い入るように読み込みましたので描写は堂に入っていると自分では自負しているのですが、どうでしょうか?
そして、EVA(宇宙遊泳)といえば、空想科学祭二〇一一の短編部門で参加させていただいた『DSWB』を弥が上にも思い出してしまいます。というか、それを思い出しながら書きました。
宇宙の闇をモノローグ的口調で書いた『DSWB』ですが、あれは幸村誠の『プラネテス』をオマージュしています。アニメ版もありますが、主にコミック版での内容に対してのオマージュであり、その中で取り上げたのは「はしかみたいなもの」の部分で、ダディがそこを読んで、思うままに感じたことや勝手な想いとか理屈っぽく考えたことを、ダディが書くキャラやストーリーに乗せて再構築してみたという作品だったのですが、イマイチそれが理解されなかったようでした。
そして、ジョンとマークが修理する船は「太陽系外探査船『ディープスペース号』」で、コイツは見事にそして無事に太陽系へと帰還し、海王星ISCのスペースドックに駐留されているという設定。ジョンとマークが行う修理内容も「反物質粒子の衝突による対消滅爆発」で、幸いにも宇宙船の構造が進化していて「ハニカムビーコア」という蜂の巣に似た構造体を開発していて、あらゆる衝撃に対して内部の構造を守るという緩衝材を用いていても、百パーセントのエネルギー開放である「対消滅」には損傷を負ってしまうということですね。生きて還ってきただけでもありがたいという感じですね。
そんな「太陽系外探査船」「海王星ISC」「対消滅爆発」というキーワードは、三年前に書いた「太陽系の外側」に由来します。空想科学祭二〇一〇の短編で参加させていただいた『太陽系の外側』と共通します。
えぇ、もちろんですとも。『太陽系の外側』も思い出しながら書きましたですとも。
この『太陽系の外側』では「深宇宙有人探査宇宙船『ランナウェイズ号』」のクルー全員が死亡し、しかもランナウェイズ号自体は「真っ黒に汚れた濡れ雑巾を絞ったような塊」という有り様で帰還したという実にSF通好みの悲惨な結末で、感想ではかなり叩かれましたねぇ。
……ということで、はっきり言って「リベンジ」だったんですね、これ。
でも、リベンジになってない感じなのですよねぇ。
まだまだ精進が足らないということは自覚しております、はい。
宇宙を書くのは、実に奥が深いです。
それから、この扉の裏設定について最後にもう一つだけ、ゲストキャラについて言及しておきます。
まず、この「等価原理の闇」に出てくる「ジョン」「マーク」「エレン」には裏設定はありません。ただし、この名前を付けるにあたって参考にしたことがあります。それは、ニュージーランドに在住している「モギイ」様の作品を読んだ時のことです。彼女は英語圏にお住いなので、彼女の作品に出てくるキャラの名前が実に自然に馴染んでいて「ニックネームのような短い名前っていいよなぁ」と感動し、それがとても新鮮に感じたのです。それで、英語の辞書を検索してそれらしい名前をピックアップしました。それがここに使われた「ジョン」「マーク」「エレン」の三つの名前という訳です。