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おもてにうら
『二心同体』
二本の足がある
一本は君ので一本は僕の
交互に出して歩いてく
君の手が器用にピアノを弾く
僕は楽譜が読めないけれど
「上手だね」僕が言う
「3才から習っていたの」君が答える
僕たちは一心同体
心が宿るのは心臓だけじゃないと君が証明した
今日も僕は君の右足で歩く
『自殺志願者の彼』
貴方を殺すとしたら、私はまず貴方の綺麗な瞳を潰すでしょう。
貴方に私が見えないように。
次に喉を潰すでしょう。
貴方が私の名を呼ぶ前に。
それから腕を潰すでしょう。
貴方が私を抱き留めないように。
私は貴方をきっと殺すでしょう。
貴方が貴方に殺されるより前に。
『尋問』
「嘘をつくなら目を見ていいなさい」
と君は言う
私はどうにも落ち着かなくなって俯いたり浅く息を吐いたりこぶしを握ったり解いたり
「だらしがないなぁ。ほら、言う」
と君は私の顎をくいっと指で押し上げる
息を詰まらせて私は君の黒い瞳を見つめた
苦しい
「君が好き」
声がかすれた
「好きだよ」
『死に印象』
真珠色の瞳
真珠色の瞳
美しい沈殿
連なる腐敗
真珠色の瞳
真珠色の瞳
宝石を眼窩に抱き
君融けたり