花の色
今年も綺麗に君が咲いた。
この時を楽しみにして僕は一年を生ききる。
さあ今年は君に何を話そうか。
言いたい事はたくさんある。
一年分たっぷりある。
《あおぞら》
そうそう、あの向かいに住んでいた人は鳥になったよ。
前からそんな気はしていたけれど。
実に気持ち良さそうに風を切って滑空した。
羽ばたなかったのは残念だったね。
あんなに綺麗な青い空だったのに。
《お月様と爪について》
この前、あんまりに大きな月が出ていたから蛇が藪から飛び出してひとのみにした。
辺りは真っ暗。
僕は悲しい気分になって、あの蛇を殺そうとおもった。
で、藪の中を手探りで探したけど真っ暗だからね。
次の朝、僕は蛇が死んでいるのを見つけた。
蛇は二つにぴったり別れて死んでいた。
その日のよる、空をみたら月に誰かの爪痕が残ったてたんだ。
きっと蛇から取り返す時に、慌てて引っ掻いちゃったんだね。
僕ならもっと上手くやったのになぁ。
《大人》
へんな人を見たよ。
ずっと同じところを回ってるんだ。
ぐるぐるぐるぐる檻の中の動物みたいに。
何もない屋上の上で右回りにぐるぐる歩いていた。
「ここに俺がいるのといないのとではどのような違いがあるだろうか」
なんて、動物園の猿にしては哲学的なことを言う。
はっきり言って何にも的を得ないことを延々と。
「皮を剥がれた黒い羊は仲間に入れてもらえただろうか」
「昨日食べたビスケットがたとえば俺の肉でできていた場合」
「右へならえのことなかれ主義より、本当に死んだのは誰か。それが問題だ」
「人形に命が宿るならこの世に人間は必要ない」
ぐるぐるぐるぐる回っていたよ。