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宛名なき

『明瞭な朝』


眼鏡を初めてつけて驚いたのは


世界に輪郭があったということです


それまですっかり忘れていた感覚でした


木が葉の集合体であったことや


黒板の字が粉であること


私と世界を分ける線があること




『雑踏から呼び声が』



すれ違うと人の群れが

ぐっとスピードを増して私を追い越した


私は一人置き去りにされて

馬鹿みたいに立ち尽くしていた


掴みかけた得体の知れない感覚が

私の指先からするりと抜けて

あまりにも遠ざかってゆき

しまいには見えなくなってしまって


声の限りに叫んだ





『放火』



部屋が寒いので


君に火をつけて暖をとった


悲鳴の割に部屋は暖まらなかったので


僕は本棚を壊して火にくべた



君は意外と冷たい人だったんだね




『イジメ』



誰もいない

誰も、誰も


圧倒的静寂の中で私は私を見失った


嫌いなクラスメートも

人の話を聞かない大人も

もう、どこにもいない


ただ教室はがらんと静まりかえり

少し寒い



窓の外の雲をながめ

まばたきをした刹那

私は夕焼け空の下にたっている


私は無人の校舎にさよならと言って

帰宅することにした




『融解する』


今日は少し水分を摂りすぎたのか

身体が柔らかくなって不安定になり

しまいには液体状になった


とろとろと服の中から溢れだし

座っていた椅子をつたう



私は浅い呼吸をしながら

カーペットに浸透していくのを感じた


『土砂降り』


こんなふうに雨の降る日は

脚の裏から影がのびて

僕の足を食みにくる


あああああ煩わしい


僕は走って海のようなグラウンドを抜け

屋根の下に滑りこんだ





『私』


映し出した精密な君は

私の思いどおりにならないで


憤る・息通る

毎日同じように

好きと言う透き通る

君に聞こえてる?


傷つけても傷つけても

振り向いてくれないから

愛しても愛しても

気付いてさえくれないから


殺してしまおうか

いやもう少し待ってあげる

嫌もう待てないよ

二つの声反響して



戸惑って・止惑って

泣き暮れる・飽きくれる?

どうして思いどおりにならないの!


重い道理………ワタシ



『渇き』


私は泣き虫なので、貴方は私から飲み物を取り上げます。

私の目の前でペットボトルを逆さにして捨ててしまう。

貴方は私の涙が嫌いで、あらゆる水分が私の目からこぼれないようにそれを奪うのでした。

だから、私は貴方のために水不足の荒れた肌に笑顔を浮かべて、貴方にキスをせがむのです。


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