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桎梏の森 ー追憶は眠りの底でー  作者: 月宮 碧斗


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一等星と花

いつもご覧いただきありがとうございます。

 今日は恋人である詩とのデート。夜一緒に近くの山まで星を見に行くことになっている。

 高校生のころ天文部に属していた海翔は、昔から星を見るのが好きだった。星は自らともらない。単純な宇宙の壮大さだけではなく、見上げているだけで、ただそこにあるだけでいいと、ありのままでいいんだと自分に言い聞かせられるような気がしてたまらないのである。辛いときや気分をリラックスさせたいときにはこうして彼はよく星を見に行くのだ。

 彼が大学に入学し、詩と出会ったのはオカルトサークル。お互い怪奇や異界が大好きで、一緒に心霊スポットに行くようになり、意気投合した。恋とは積極性に尽きる、と海翔は思う。彼はいろいろなところに外出を誘い、その先でたくさんの思い出を共有して惹かれ合っていった。

「ごめん!待った?」

「いや今来たとこ。今日も素敵だね。」

 星を見に行くデートに合わせたのか、全身を黒で統一したブラックコーデだ。揺らめくロングスカートにはいくつかキラキラとした宝石のようなものが散りばめられている。

「ここから20分くらいかな。近場だけど理王山からの形式は綺麗だよ。」

 詩はいいね、とうなずきながら買ってきたドリンクを運転席の近くに置く。待ち合わせしていた場所からはそう遠くない距離にある理王山。そこまで有名な山ではないが、そこからみる夜空は絶景だ。交互にお気に入りの音楽を流しながら二人は理王山へと向かった。

 到着したときには辺りも十分に暗くなっていた。車から降りて既に山を登ろうとしている他の観光客の姿もあった。彼らも車を降り、星が一番よく見える場所へ向かおうと歩を進めた。

 頂上での景色は最高だった。山から見える景色はもちろん、空気が澄んでおり、夜空の星達がそれぞれに自身の存在を強く訴えかけてくる。近くにカフェや高台なども設置されており、辺りはかなり賑わっている。

「ここに君を連れてきたかったんだ。」

「ありがとね。すごくいい場所だわ。」

「そうだ、こっちへ来て。お気に入りの場所があってね。」

 海翔はそういうと優しく彼女の手を引いて高台の裏の穴場スポットへ連れて行った。賑わう広場もいいがカップルで来るときはこういう静けさも雰囲気があっていい。二人は地べたに寝転んで、輝く星々を眺めた。

「あれ、うお座だね。フォーマルハウトだ!」

 秋の星座で唯一の一等星。数々のきらめきの中で飛び抜けた白い輝きを放つ星、フォーマルハウト。秋の四辺形を南にたどって見つけられることが多い星だ。

「綺麗...!ありがとう海翔君。」

 海翔は微笑んで詩の頬にそっと触れた。少し顔を赤らめながら彼女もにっこりと微笑み返す。

「あ、これアキノキリンソウじゃない?」

 詩の隣に黄色い花が咲いていた。彼女は植物が大好きで、花に詳しい。目に入るほとんどの花の名前を知っているくらいお花博士だ。

「ボタニカルクラブに昔入っててね。そこでお花好きな子とよく花を見に行ったりしてたから知ってるの。」

 美しい星と花に囲まれ、彼女は幸せそうだ。そして隣の彼も同じく、大好きな彼女と大好きな星を眺め、満足げである。

「最近佑介君に会えてないなあ、元気にしてるかな。」

「そういえば昨日やりとりしたよ。新しい女の子がサークル入ったらしくて。」

 女の子!?と詩は目を輝かせた。自分以外男子しかいなかったサークルに女子が入ってくるのはとてつもなく嬉しいのだろう。

「今度一緒に会おうね。詩は結構人見知りだと思うけど、歓迎会とか開けばすぐ仲良くなれるよ。」

「うん!会ってみたい!でも、可愛かったらどうしよう...」

 不安げな表情を浮かべる詩を彼は強く抱きしめる。君が一番だ、とあえて言葉にするまでもないほどの熱を帯びた抱擁だった。彼女は抗うこともできず、気づけば指先に残っていたはずの黄色い花はするりと離れ、音もなく地面に落ちていた。夜空で輝く秋の一等星は二人をいつまでも照らしていた。

少しでも続きが気になった方、興味を持っていただけた方は評価していただけると嬉しいです。

モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いいたします!m(_ _)m

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