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桎梏の森 ー追憶は眠りの底でー  作者: 月宮 碧斗


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2/16

異世界の生き方

いつもご覧いただきありがとうございます。

第二話もよろしくお願いいたします。

(追記)

わかりやすく読みやすい表現を目指すため、修正を加えました。ストーリーに関連する変更はありません。

 午前中の授業が終わり昼食の時間になった。いつもは一人でお弁当を食べるのだが、今日は全く新しいお友達がそばにいるわけでそうもいかない。佑介が教室を後にして食堂へ向かうと、後からカモのように藍那がひょこひょことついてきた。

 誰かとご飯を一緒に食べるというのは久しぶりの感覚で、大学のはじめにできたヨッ友と生姜焼き定食を食べた以来である。少し緊張するような気もするが、なにしろこれから後輩になる子であるし、オカルトに興味があるのであれば話したい気がしないでもない。彼女と一緒に校舎を出ると風通しのいい中庭にあるベンチに座った。

「それで夢を操るというのは....?」

 母に作ってもらったお弁当を開けながら彼女にたずねる。女手一人で彼を育ててくれた母のご飯はいつ食べても、どこで食べても美味しい。自分で領したときや、外食したときには得られない何かが彼をそっと包み込んでくれる。

「とりあえずこの本、読んでくださいな。」

 藍那に分厚い本を一冊押しつけられて、箸でつかんでいただし巻き卵を落としそうになった。表紙には『異世界の生き方』とかかれている。本を読むのは嫌いではないが思った以上に厚みがあった。全て読破するのに短くても丸一日はかかりそうだ。

「これを読み切れと?」

「もちろん。あなたの研究のヒントにもなるかもしれないし。」

 彼女の言うとおり、オカルトサークルの代表として片づけなければならないことは山ほどあった。

 佑介がいま強く惹かれているのは、山奥や廃墟に潜む怪異の噂だ。近いうちにその情報をサークルのメンバーにも共有し、次の活動に弾みをつけたいと考えていた。


 橋野一家殺人事件。彼が一番目をつけている事件だ。もう二十年以上前の事件になる。

 その一家は四人家族で、両親とその双子からなる家だった。ある夜その双子が一緒に帰宅すると、鍵が開いたままになっていた。不思議に思いながら中へ入ると寝室で両親が並んで死亡していた。しかし不思議なことに、目立った外傷は全くない。子ども達は同じ用事で出かけていたためアリバイがあり、周りに特に怪しい人間関係もなかったとされることから、この事件は怪奇ではないかとたちまち噂になった。

 さらにこの事件、怖いのはこの後同時に双子が死亡したのである。それは両親と同じく、謎の突然死であった。

 僕がにらんでいるのはこの事件と、シャイニングヒル失踪事件との関連性である。シャイニングヒル失踪事件は、この橋野一家殺人事件とほぼ同時期に起こった失踪事件で、シャイニングヒルでのキャンプ中に少女が行方不明になったというもの。そしてこの少女が姿を消した場所が、やけにその橋野家が位置するところに近いのである。オカルトマニアとしてこの明らかな違和感は見過ごすわけにはいかなかった。


「じゃ私、バイトがあるので今日はこの辺で。明日あたりにサークルに顔を出しますので。」

 気づくと藍那は自分で作ったお弁当をぺろりと平らげ、すでにトートバッグを肩に提げていた。ついてきて一緒に昼食は食べるくせに人が食べ終わるのは待たないのか。彼女はにかっと笑うと長い髪を翻して去って行った。

 今日はこの本に手をつけることにしたい。先延ばしにしているオカルトサークルのタスクもこれらに関連する内容があれば何かの助けにはなるかもしれない。それにしても夢にフォーカスした本などそんなにあるだろうか。あったとしてもどこまで実用的な内容が記されているのか。異世界の生き方とは、何を意味するのか。

 懐疑的ではありながらも胸のどこかで佑介は期待していた。新しい後輩がみつけた何かが、近頃自分を悩ます悪夢を解明するきっかけとなるかもしれない、と。

 愛情たっぷりの母親のお弁当は今日も変わらずおいしかった。心地よい秋風が中庭を吹き抜ける中、佑介は大学を後にした。



最後までご覧いただきありがとうございます。

少しでも興味を持っていただけた方は、ブックマーク・評価等よろしくお願いいたします。

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