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桎梏の森 ー追憶は眠りの底でー  作者: 月宮 碧斗


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13/16

境界を裂く

いつもご覧いただきありがとうございます。

「あいつらも気づいたかな。失踪事件の真相。」

 津村はそう言うと三人が食事をしていたお店から離れるようにして歩き出した。

「どうですかね。まあ僕らの考察が正しければですけれど。」

 澪が津村についていく。もう夕日も落ちてきている時間帯だった。

 四人の大学生が失踪した事件以来、彼らは二人でシャイニングヒル失踪事件との関連性を調査していた。二十年前以上に起きた失踪事件と同様に跡形もなく消えたという事実は興味深いものであり、澪達はこの二つの事件の犠牲者は両方とも異世界へ飛ばされたとしか考えられないという結論に至った。すなわち、佑介達が実際に実行しているような異世界への飛び立つ方法が夢の中以外にも存在している可能性がある。その方法がシャイニングヒル失踪事件付近の山で偶然的に発生しやすい状態が作り上げられていると考えると、成瀬花菜が姿を消したのも、詩の友人達が失踪したのも辻褄が合う。抵抗もできないままに異界に引きずり込まれる我々が知らない何かが起こっているとしか考えられないのである。二人は『異世界の生き方』の著者であった八木孝について詳細に調べ、彼の息子である八木慎吾の所在を突き止めた。八木慎吾は父親の研究を継いでいないようで、父親の研究拠点であった別荘を見せていただきたいというと、合鍵を渡すので自由にみてもらっていいと、快く受け入れてくれた。

 研究拠点は町外れにあった。長く使われていなかったのか扉はかなり重く、別荘内はひんやりした空気が漂っていた。

「何かがみつかるという確証はないが、手がかりが埋もれている可能性はある。手分けして、八木が研究していた資料を探そう。」

 津村の言葉に澪もうなずき、本棚の片っ端から精査し始めた。どれくらいの時間が経ったころだろう。津村が八木のものと思われるデスクを調べていたとろ、引き出しから彼が『異世界の生き方』を執筆していた際のメモ書きを見つけた。

「これは...。」

『異界』と黒のペンで大きく書かれた透明のファイルの中にA4の紙何枚かをホッチキスで止められたものが入っている。その一枚一枚にきちんと付箋が貼られ、研究に取り組んだ日にちや関連事件まで記載されていた。

「インマー・アウフェント...佑介が言っていた呪文だ。夢の中での異世界リープの方法はなんとなく分かったが他にも必ず...」

 一枚ずつ紙をめくっていく。『異世界 夢』、『異世界と夢を行き来する方法』、『異世界に行くには』。タイトルが少しずつ夢から離れていく。やはり夢以外にも空間の歪みできっと異世界リープが起こってしまうのだ。期待に胸を膨らませながら津村は最後のページをめくった。そこに記されたタイトルは『異世界に飛ばされる事象』。

「これだ...!」

 津村が求めていたものだった。やはり八木孝は、夢から異世界に飛び込む方法を研究する際に、異世界について詳細に調べていたのである。津村の声に澪も気づいたのか小走りで彼の元に近寄ってきた。書かれている内容はこうだった。

『異世界とは我々が生きるこの現実世界と、明確に境界線が引かれる空間である。現時点での研究結果では以下の事象が発生しない限り、境界を裂いてこの空間を行き来することはできないと考えられる。

 ・記憶の断片を再生する際に脳に刺激が加えられる事象(インマー・アウフェントという呪文が引き金となる)

 ・霊の思念が宿った事物に触れたとき

 ・霊の思念が非常に強い空間に足を踏み入れたとき

 一つ目は自発的、二つ目と三つ目は強制的に異空間へ飛ばされる。その際にはエンデ・アウヴェルトという呪文を知らないと、決して帰還することはできない。』

 津村と澪は顔を見合わせた。新たな手がかりが発見できたことは間違いないが、どこか腑に落ちない部分があったのである。二つ目と三つ目はあくまで事故物件、心霊スポットなどの霊的エネルギーが高い場所でしか起こりえない。だとすれば、シャイニングヒル失踪事件以前にも失踪者が全く出ていないのが不自然だ。霊的エネルギーが突発的に出現したとも考えにくい。では一体なにがーーー。

 二人はその後もくまなく書斎を調べたが、めぼしいものは他にみつからなかった。届きそうで届かない一歩がもどかしかった。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

ストーリーは楽しんでいただけておりますでしょうか。

果たして失踪事件の真相とは。

感想、考察、評価、ブックマーク等ぜひよろしくおねがいいたします。励みになります。

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