二人だけの
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ストーリーも過渡期を迎えてきました。
明かされる真実は一体...?
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歓迎会から数日後、佑介と藍那はドリームクルーズを実行することにした。澪に借りた『濫觴世界』は、二人とも既に目を通している。『異世界の生き方』だけを読んで飛び込んだこの前の冒険は、今思うと非常に危険なものだった。この世に戻ってこれない条件を知らなかったからである。
『濫觴世界』によると、異世界に幽閉される条件は二つある。一つは、世界を終わらせる呪文『エンデ・アウヴェルト』を忘れてしまうこと。もう一つはその世界を心から愛してしまうことである。また、興味深いことに、ドリームクルーズは普段見ている夢においての成功率は低いとされているものの、夢から飛び込んだ異世界対しては90%の確率で成功すると記されていた。
約束の日、一人暮らしをしている藍那の家に泊まることになった。悪夢の正体を突き止めたい一心の佑介もさすがに緊張していた。今日は大学が夜まである。一緒に授業を受けた後、軽く夜ご飯を購入してそのまま彼女の家へ向かった。
「ここが私のおうちです!」
彼女に招かれて部屋へ足を踏み入れた瞬間、佑介は思わず息を呑んだ。内装は青と白で端正に統一されていて、壁際の棚や小物に至るまで色の調和が崩れていない。まるで海の底に沈んだ静かな一室に迷い込んだようで、空気までひんやりと澄んでいる気がした。
それでいて、不思議なほど生活の気配が薄い。読みかけの本も、脱ぎ捨てられた上着も、誰かがここで日々を過ごしている痕跡はどこにも見当たらず、整いすぎたその空間は、かえって微妙な居心地の悪さを感じさせた。
それでいて、不思議なほど生活の気配が薄い。読みかけの本も、脱ぎ捨てられた上着も、誰かがここで日々を過ごしている痕跡はどこにも見当たらず、整いすぎたその空間は、かえって微妙な居心地の悪さを感じさせた。
「お邪魔...します。」
「荷物は適当に置いてください。すぐにご飯食べましょ。お肉が冷めちゃう。」
促されるまま食卓につくと、香ばしい生姜焼きの匂いがふわりと鼻をくすぐった。彼女と交わす何気ない会話は胸の奥にあった夢への警戒を少しずつ薄れさせていった。
気づけば時計の針は深夜へ差しかかっていた。夕食を終え、湯を浴びて火照った身体が冷めないように、二人は早めにベッドに入る。異性と同じベッドで眠るのなんていつぶりだろうか。
「今日はだめですよ。」
電気を消しながら、冗談ぽく藍那が言う。
「分かってる。ゆっくり休んで夢で会おうね。」
佑介はそういいながらそっと彼女の肩に手を回す。
「佑君、女の子の部屋なのに全然緊張してないですよね本当。妹さんとかいそう。」
「残念、一人っ子。もう、今日は早く寝るよ。」
藍那は口をとんがらせながら深く布団をかぶった。佑介も夢の旅に向けて心をリラックスさせる。数分も経たないうちに二人の意識は夢の世界へと落ちていった。
果てしなく続く森の世界はもう見慣れたものになっていた。佑介が以前のように頭に刺激を与えながらインマー・アウフェントと唱えると、同様にどこかで爆発音が鳴り、歩き続けているとやがて白い館が現れた。問題なくこの前と同じ異世界には来れたようである。あとは、藍那に出会うことができれば成功だ。
しかし、辺りを見渡してもどこにも彼女の姿はない。失敗してしまったのだろうか。館の前で藍那を待っていると、後方から紫に輝く光がゆっくりと近づいてきた。
「この世界の意味に気づいたか?全てはお前次第だよ。」
誰かの声がして、アメジストのように輝く光は高速で上空へと消え去った。佑介が振り向くとそこには藍那が立っていた。
「佑君!」
彼女は佑介に抱きついた。
「よかった、成功したんだね!」
現実世界のどんな抱擁よりも強く藍那を抱きしめる。人間誰しも、普段生活していない世界に飛び込むことは恐怖でしかないのである。
恐らく、この館が真実を知っている。前回探索できなかった場所を調べればなにか手がかりが見つかるはずだ。佑介は藍那の手をつなぎ、ゆっくりと扉を開けた。二人だけの空間、二人だけの世界。そして二人だけの秘密。重々しい軋みを響かせながら、洋館の大扉がゆっくりと閉ざされる。森を渡る風はいっそう勢いを増し、木々の梢を荒々しく揺らしていた。
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