邂逅
初執筆になります。実体験をもとにファンタジックな要素を加えて物語をかいてみたいと思いました。ミステリーが好きな方は楽しめる作品になると思います。ぜひご一読いただけると幸いです。
(追記)
わかりやすく読みやすい表現を目指すため、修正を加えました。ストーリーに関連する変更はありません。
僕だけにしかわからないことがある。それは誰にとっても同じことがいえるように、人には自分だけの感情がある。
昔からそうだった。小学生のころ、友達と揉めたときにはなぜこの子は僕の言っていることがわからないのだろうと、悲しく、もどかしく、腹立たしい気持ちになった。多分友達もそう思っていたであろう。
人との関わり合いのなかでの意思疎通には限界があり、完全に相手の深層心理を知ることなどできない。
では、それでも限りなく相手の思いを理解するにはどうすればいいのだろうか。
そしてあなたにしか理解できないことがあるのと同様に、あなたには理解できないことがある。知る由もないようなことだって世の中にあふれていて。僕はその荒波にもまれながらも日々・・・。
「今日、一限じゃないの。」
母親の言葉ではっとして、ぼーっと考え事をしていたことを後悔する。もう時間だ。このままじゃ間に合わない。今日は出席確認のある授業なのに。
母が焼いてくれた好物のハニートーストを頬張って、冷たい水を流し込む。お気に入りの黒いアウターを羽織ると、白熊のストラップがついた家の鍵だけポケットに突っ込んで外に出た。
考え事をしてしまうのにも理由がある。最近、あきらかに異質な夢を見るのだ。毒蛇に噛まれる夢、高いところから落ちる夢など恐怖体験の類いのものは時々経験するが、それらともまた違った不思議な感覚の夢だ。森の中を一人で彷徨う、孤独な夢。
そんな夢を繰り返してみる。周りには誰もおらず、暗闇のなかでただあてもなく、無限に広がる森を歩き続ける。聞こえるのはザクザクという草木を踏む音と、時折上空で鳴くカラスの声だけだ。
二週間くらい同じ夢を見続けているけどけれど何かの前触れなんだろうか。佑介は、電車の中でぼんやりと考えながら今日の大学の授業を予習していた。高校を卒業してからというもの、なんだか友人と新しく踏み入って仲良くすることができなくて、授業は一人で受けている。サークルも、オカルト関連のものに1年生のころに入ったが、そこでも心を許せるような親友といえる人は見つからなかった。その分、大学での授業やレポートは真面目にこなしている。オカルトサークルでは代表を務め、遊び相手はいないにしても任されるタスクはかなり多かった。
一限の教室で席に着くと、後ろから誰かにぽんと肩をたたかれ、慌てて振り向いた。
「こーんにちは!」
艶やかな長い黒髪に清楚なレースブラウス。つぶらな瞳は佑介を今にも吸い込みそうだった。
「君は誰だい。」
「私、この秋からオカルトサークルに入ることになりました!山城藍那と申します。代表ですよね!タイミングがよかったのでぜひ挨拶を...と思いまして。」
「そりゃどうも。でもなぜ俺が代表だと?」
「SNSでサークルが運営しているアカウントがありますよね。そこを逐一チェックしていますので。というかそんなことより、ですよ。」
藍那の表情が変わった。
「先輩、元気がないですよね。活力を感じないというか...何か悩みでも?」
なかなかに失礼な子だ。これから入るサークルの代表に活力がないとは。
「そんなこともないが。一限ともなればこんなもんだよ」
「うーん、またそれとは違う感じというか...なにか最近悪夢にでもうなされてます?」
彼女の発言にビクッとした。まさに最近、悪夢をみている。
「私、夢のことになるとつい敏感になってしまうんです。小さいころから夢の本を何百冊も読んできたので、少しの変化でもすぐ分かっちゃいます。」
彼女はかなりのオカルトマニアなようだった。金縛りや夢と現実の関連に興味があり、このオカルトサークルへの参加も決めたという。間違いなくその付近の知識は多いだろう。
「先輩、夢。行ってみませんか。」
「え?」
一瞬何を言っているのかわからなかった。
「夢の世界へと入り込み、そこで実際に体験するのです。現実ではありえない世界を、あなたの望むままに。」
第一話、読んでいただきありがとうございました。
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