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ごあいさつ???

作者: KOTOHA
掲載日:2025/10/20

さて。


備忘録として書き記します。


放課後ダイアログ(異世界転移編)

女子高生5人組が異世界に巻き込まれる話。

果たして、彼女たちは無事に帰還できるのか?


第1話(草稿)を「ちょい見せ」



第一話:ありふれた放課後、終わりのはじまり


夢を見ていた。


騒がしくて、眩しくて、そしてひどく、空虚な夢。


夢の中の私は、何か重たい金属の塊を両手で握りしめている。


たぶん、フライパンだ。


目の前にはおとぎ話に出てくるような怪物がいて、私はそれをフライパンで次々となぎ倒していく。


すごい力だ。周りには誰かがいて、私を応援している。私たちは勝っていて、みんな笑っている。

なのに、どうしようもなく、心が冷たい。


これは「楽しい」はずなのに、全然楽しくない。早く終わらせたい。早く、帰りたい。


ちっとも満たされない達成感の中で、私はただ、虚ろにフライパンを振り回し続けていた――。



「……っは」


アラームが鳴る直前、児島結衣は息苦しさと共に目を覚ました。カーテンの隙間から、秋の朝陽が差し込んでいる。


見慣れた自室の天井。岡山市南区のとある住宅街。高仕様だが、ローンも高額な注文住宅の一室だ。


「またあの夢……」


結衣は深くため息をついた。


ここ最近、時々見る奇妙な夢。内容は馬鹿げているのに、目覚めた後の胸に残る、この言いようのない「空虚さ」が嫌だった。


「ゆいちゃーん! お腹すいた!」


階下から、弟・優斗の元気な声が響いてくる。小学2年生、9歳差の弟だ。


「はいはい、今行く!」


結衣はベッドから飛び起き、制服に手早く着替えた。夢の感触を振り払うように頭を振る。


IT企業で営業職として働く母は多忙で、今朝もすでに出社している。地方銀行に勤める父も、朝は早い。


弟の朝食と弁当作りは、結衣の担当だ。


キッチンに立つと、結衣の表情は一変した。愛情と努力こそが最高のスパイス。それが彼女の信条だ。


「今日の卵焼きは、甘いのとしょっぱいの、どっちがいい?」


「しょっぱいの! あと、ウインナー焼いて!」


「はいよ。優斗、好き嫌いはダメって言ってるでしょ。ちゃんとこのミニトマトも食べてね」


手際よく卵を溶き、フライパンを熱する。昨日から仕込んでおいた出汁の香りがキッチンに広がった。


あの料理研究家の「一汁一菜でええ」という哲学を信奉しているが、育ち盛りの弟のためとなると、ついつい品数が増えてしまう。


(やっぱり、キッチンに立ってる時が一番落ち着くな)


自分の料理で誰かを笑顔にしたい。その思いだけが、身長や体型に対するコンプレックスを忘れさせてくれる。


身支度を整え、母親からお下がりで貰ったiPhone 14を手に取る。


画面の端が派手に割れているが、修理は後回しだ。


通知欄には、いつもの4人からのメッセージが溜まっていた。


『おはよー! 今日の放課後、いつものマック集合ね!』


結衣は微笑み、自転車の鍵を掴んだ。



放課後、とあるマクドナルド。


夕方の混雑が始まる前の店内は、近隣の高校生たちの溜まり場になっていた。その一角、窓際のボックス席に、5人の少女たちが集まっている。


「あー、もう無理! これ以上、私のワーキングメモリに負荷をかけないで。費用対効果が悪すぎる」


分厚い参考書を前に突っ伏しているのは、某進学高の咲良恵だ。超合理主義者で、常に効率と結果を重視する彼女だが、テスト前はいつもこうだ。


「恵、まだ始めて15分しか経ってないじゃん。ほら、これあげるから頑張りなよ」


そう言って結衣が差し出したのは、小さなタッパーに入った手作りのクッキーだった。恵はガバッと顔を上げ、クッキーに目を留める。


「……結衣、これは?」


「新作。子犬の形にしてみたんだけど、どうかな?」


「ふにゃ……」


途端、恵の理知的な表情が崩壊した。可愛いものに耐性がゼロの彼女は、普段の冷静さが嘘のように語彙力を失い、謎の言葉を発しながらクッキーを凝視している。


「あはは! 恵、またフリーズしてる!」


太陽のように明るく笑うのは、辰巳観月だ。チアリーディング部で鍛えられたしなやかな身体を動かし、スマホで恵とクッキーの写真を連写している。


「ちょっと観月、勝手に撮らないで。肖像権の侵害。訴訟も辞さない」


「いいじゃん! この写真、絶対バズるって! #勉強疲れ #可愛いクッキー #癒やし っと……あー! またフォロワー減ってる! 岡山の魅力発信って難しいなあ……東京のお姉ちゃんみたいにはいかないか……」


観月は少しだけ肩を落とすが、すぐに気を取り直してインスタグラムの編集に戻った。


「二人とも騒がしい。集中できないんだけど」


呆れたように、しかしどこか楽しそうに呟いたのは、琴平舞だ。バレーボール部のリベロとして活躍する彼女は、負けず嫌いの努力家だ。手元のノートには、次の試合の対戦相手のデータが几帳面にまとめられている。


「舞さん、根を詰めすぎも良くありませんよ。少し休憩されてはいかがですか?」


穏やかな声で舞をたしなめたのは、ミッション系女子校に通う聖乃花音だ。医療法人の理事長家系という超上流階級のお嬢様だが、それを鼻にかけることはなく、誰に対しても深い共感性を持って接する。


「花音は余裕だね。まあ、お嬢様には庶民のテスト勉強なんて関係ないか」


「そ、そんなことはありません! 私だって、ちゃんと勉強は……あ、すみません。移動はいつもハイヤーですので、電車の乗り方が少し不安で……」


「花音! ここマックだから! 自分で帰りなさい!」


結衣がすかさずツッコミを入れる。いつもの光景だ。


「……それにしてもさ」


ポテトを一本つまみながら、観月がふと真顔になった。


「私たちって、なんでこんなに仲良いんだろうね?」


唐突な問いかけに、他の4人が顔を見合わせる。


「なに、急に」


舞が眉をひそめる。


「だってさ、高校もバラバラだし、性格も全然違うじゃん? 普通、こんなに頻繁に集まったりしないよね」


「確かに……言われてみれば、そうかもしれませんわね」


花音が小首を傾げる。


恵がクッキーを一枚確保してから、指を立てて解説を始めた。


「確率論的に言えば、極めて稀なケースだね。私たちが友人関係を維持できているのは、互いの欠点を補完し合える、最適なリソース配分が成立しているからだと分析できるけど……」


「そういう理屈っぽいこと言ってるんじゃないの!」


結衣は笑いながら、少しだけ過去に思いを馳せた。


「出会った時から、そんな感じだったよね。初めて会った気がしないっていうか……」


あれは、ちょうど一年前のことだった。



一年前。イオンモール岡山。


休日の巨大なショッピングモールは、大勢の家族連れでごった返していた。当時高校1年生だった結衣は、弟の優斗の手をしっかりと握っていたはずだった。


しかし、ほんの一瞬、目を離した隙に。


「……優斗?」


人混みの中に、弟の姿はなかった。血の気が引いた。


「優斗! どこ!?」


必死に名前を呼ぶが、雑踏にかき消される。どうしよう。


お母さんに何と言えば。


焦りと恐怖で足がすくんだ、その時だった。


「そこの貴女、落ち着いて。状況を整理しましょう」


凛とした声が響いた。


見知らぬ同年代の少女――恵が、冷静な眼差しで結衣を見ていた。


「迷子ですか? 最終確認時刻、服装、特徴は?」


「え、えっと、3分前、青いパーカーで……」


「了解。非効率な捜索は無意味よ。私が全体の指揮を執る。貴女はここで待機して」


恵は即座にモールのフロアマップを頭に描き、指示を飛ばし始めた。


「ちょっと! そこの足が速そうな二人!」


恵が指さしたのは、たまたま近くにいた舞と観月だった。


「はあ? いきなり何?」


「人探し! 時間ないから協力して! 貴女(舞)は北側のエスカレーター周辺、貴女(観月)は南側の玩具売り場をチェック!」


二人は一瞬戸惑ったが、結衣の泣きそうな顔と、恵の有無を言わせぬ迫力に気圧され、走り出した。


「私はインフォメーションセンターに連絡を入れますわ」


いつの間にか隣にいた花音が、落ち着いた様子でスマホを取り出した。


まるで、長年チームを組んでいたかのような連携だった。見ず知らずだったはずの5人が、まるで引き寄せられるように集まり、それぞれの役割を完璧にこなしていく。


そして数分後。


「いた! 確保!」


舞が、ゲームセンターのクレーンゲームの前で立ち尽くしていた優斗を抱きかかえて戻ってきた。


「ゆいちゃん……!」


優斗が泣きじゃくりながら結衣に抱きつく。結衣も涙を流しながら弟を抱きしめた。


「ありがとうございます……皆さんのおかげで……」


結衣が頭を下げると、4人は顔を見合わせて微笑んだ。


「別に、大したことじゃないし」


舞が少し照れくさそうに言う。


「なんか、他人事とは思えなくてさ!」


観月が笑う。


その時、5人全員が同じことを感じていた。


初めて会ったはずなのに、ずっと昔から知っているような、不思議な感覚。魂が共鳴するような、強烈な親近感。


それが、彼女たちの出会いだった。



「……あれは本当にすごかったよね」


回想を終え、結衣は改めて仲間たちの顔を見回した。


「運命、だったのかもね」


花音が静かに微笑む。


「そういえばさ」


結衣は、今朝見た夢のことを思い出し、口を開いた。


「みんなは最近、変な夢とか見たりしない?」


「変な夢?」


舞が首を傾げる。


「うん。なんか、自分がすごい強くなってて、大活躍するんだけど……すごく嬉しいはずなのに、目が覚めると、胸の中が空っぽになるような、変な感じがするの」


「え……」


空気が一瞬で変わった。恵が、珍しく参考書から目を離し、結衣を凝視している。


「……私も、見る」


「恵も?」


「可愛いクマの着ぐるみみたいなのを着て、圧倒的な力で全部を破壊してる夢。でも、すごく……すごく、孤独だった。論理的に説明がつかないけど」


恵の告白に、観月も、舞も、花音も、目を見開いて固まっている。まさか、みんなも?


「ま、ストレス溜まってんじゃない? カラオケ行こうよ、カラオケ!」


観月が努めて明るく言った。そうだ。このかけがえのない日常が、ずっと続けばいい。結衣は心からそう願った。


その、瞬間だった。 


「え……?」


窓の外の景色が歪んだ。店内のBGMが途切れ、周囲の喧騒が遠のいていく。


「なにこれ……地震?」


舞が身構える。5人の足元に、見たこともない複雑な幾何学模様――魔法陣が浮かび上がっていた。

眩い光がボックス席を包み込む。


「きゃあっ!」


「ちょっと、何が起こって……!」


結衣は咄嗟に手を伸ばしたが、その手は仲間たちに届くことなく、光の中に溶けていった。床が抜けるような感覚。全身が浮遊感に包まれる。


割れたiPhoneが、マクドナルドのテーブルの上に取り残された。画面には、5人が笑い合っている写真が表示されていた。



「…………ん……」


最初に目覚めたのは結衣だった。


冷たく、硬い石の床の感触。埃と、苔の匂い。


「……ここ、どこ?」


ゆっくりと身を起こす。そこは、マクドナルドではなかった。


天井は遥か高く、巨大な石柱が立ち並んでいる。壁には古びたレリーフが刻まれ、差し込む光が幻想的な雰囲気を醸し出していた。まるで、古代の神殿のような場所。


「みんな! 大丈夫!?」


結衣が叫ぶと、すぐ近くで倒れていた4人が次々と目を覚ました。


「いった……何なの、これ……」


「夢……じゃないよね?」


「あり得ない。空間転移? 非現実的すぎる……」


「ここは、一体……?」


混乱する5人の前に、コツ、コツ、と足音が響いた。


「ようこそ、異世界アストラディアへ。待っていたぞ、勇者たちよ」


深く刻まれた皺と、長い白髭を蓄えた老人が、杖を手に立っていた。その顔には、深い疲労の色が滲んでいる。


ありふれた放課後は終わりを告げ、絶望と希望が交錯する物語が、今、幕を開けた。


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