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第8話 詐欺の果てに Dead End
――美沙稀のマンション
ピンポーン ピンポーン
「美沙稀、いるんだろ! 開けてくれ、俺だ、敦だ! 開けてくれ!」
ガチャリ
開いたのは、隣の部屋の扉だった。
大学生くらいの若い男だ。
「あの……そちらの方、引っ越しましたよ」
「はぁっ!? いつ!?」
「三日前くらいですかね。ご丁寧に挨拶されていきました」
「あ、挨拶……?」
「はい、『目標が達成できたので引っ越します』と」
一瞬呼吸をするのを忘れる。
やられた。
詐欺だ。
五千万、騙し取られた!
常に空腹だった俺の欲望という名の胃は、底が破け、絶望という名に変わり、底の穴からは次々と希望が流れ出ていく。残ったのは五千万円の借金。溜まっていくのは、膨れ上がっていく利子だった。あの高利貸しの追い込みから逃げ切ったヤツはいない。誰が相手でも、どんな手を使ってでも回収する鬼の高利貸しだ。
完全に詰んだ。
俺はそのまま膝から崩れ落ちる。
「大丈夫ですか? もしもし、大丈夫ですか?」
男の声はまったく俺の耳には入ってこなかった。