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2話 決闘だっていいじゃない

「はいこれで全部ですね。では受理いたしましたレアンさん」

「ありがとう」


 結局かれこれ30分程度は並んだ後、書類の確認作業に10分くらいかかった。

 長すぎだよね。アイツだったら列に並んでる人達を脅し始めそうだったし僕でよかった。


「おう、アンタ。災難だったな」


 受付での業務を終え、ウキウキな僕にさっき列に並んでいる間に話したおっさんとはまた別のおっさんが話しかけてくる。

 風貌からしてベテランの探索者っぽいな。ここの探索者ギルドで結構顔広そうだし、仲良くしておきたいな。


「俺はクロウ・ベスチップっていうんだ。アイリンと同じくレベル5の探索者さ。よろしくな」

「僕はレアン。よろしく」


 アイリン……ってあのちっちゃい女の子冒険者の事か。決闘とか言って地図みたいなの渡してきたあの。

 レベルの方は隠しておく。今までの経験上、やっかみを受けることが多いから。


「レアン? ここじゃあんま聞かねえ名だな。探索者だよな?」

「ああ。最近ここに拠点を移したばっかなんだ」

「なるほどな。それであの『龍殺し』に目を付けられるとはツイてねえな。まあでもアイツの感情も分からねえこともねえ。『世界の探究者(ワールド・シーカー)』のリーダーである『完全無欠』に憧れてやっとの思いでレベル5に到達できたばっかだったんだ。『やっとあの方に認めてもらえるくらいまで来た』とか喜んでたし。それを馬鹿にされたんじゃ頭にも来るわな」


 へえ、憧れてんのヨシュカの方じゃないんだ。珍し。


「僕は馬鹿にしたつもりないんだけど」

「まあお前さんのその感じを見るにホントに知らねえんだけなんだろうな。ま、ここの洗礼だと思ってあいつの決闘を受けてやってほしい。死にそうだったら俺が助けに入るからよ」


 ウキウキな顔でそう宣うおっさんを見て僕は確信する。ああ、このおっさん決闘見たいだけだな。

 はあ、つくづく探索者ってのは碌な奴が居ない。僕も含めて。


「そういやレアン、お前は『世界の探究者(ワールド・シーカー)』の職員募集に応募しないのか?」

「しないよ」

「へえ珍しいな。ここじゃ最強の一角であるあのレベル7の『流星姫』ですら応募したってのに」


 りゅ、流星姫? 二つ名をもらってるし多分強いんだろうな。うんうん。ここは知ったかぶっておこう。


「へ、へえ~。そりゃ凄いな。てかなんで皆職員募集に応募するんだ? ただの職員だろ?」

「本当にお前は何も知らないんだな。良いか? 探索者パーティの職員募集っていうのは言うなれば門下生募集みたいなもんだ。パーティ募集もしてない、更にはクランなんて作っていない有名パーティってのはちらほら存在する。そんなパーティと唯一近づける方法ってのが“探索者ハウスの職員募集”なんだ。特に今回の『世界の探究者(ワールド・シーカー)』ってのは世界でもトップクラスの人気パーティ。謎も多い上に神出鬼没だからこそ多分、この噂を聞き付けた奴ら全員、この機会を逃すまいとわざわざこの王都までやってきて応募しに来ると思うぞ」


 どうしよう。クロウのおっさんの話を聞くたびにどんどん胃が締め付けられるように苦しくなってくる。

 え、今まで結構面倒な書類関係とか出しまくってようやく解放されたのにまた仕事が増えそうじゃない? ただの面接にしようとか思ってたのに。

 おい話が違うぞ。どうなってんだ。書類仕事は僕に任せてお前は気ままにダンジョン攻略でもしとけとか言うんじゃなかった。

 いやこれも主人公を支えるための僕の仕事か。はあ、めんどい。


「てかさ、そんなことはどうでもいいんだけど」


 そう言って僕はクロウにアイリンから受け取った紙を広げて見せる。中に描いてあったのは手書きの地図なんだけど。


「下手くそすぎてこれがどこか分かんないんだけど」


 行くつもりはなかったけど、彼女が『世界の探究者』の職員募集に応募しているのなら話は別だ。

 出来るだけ穏便に過ごしたいってのもある。それに()()()()()()になるかもしれないし。

 ギルドを通しさえすれば探索者からのスカウトもありらしいからね。

 ま、今のところはマイナス評価だけど。


「お、いいね~行く気になったか! さあさあ新人よ! 龍殺しに鍛えられに行け! 俺も見に行く……ぞ? うん?」

「どうした?」

「……どこなんだこりゃ?」


 お前も分からないのかよ! てか自信満々にこの手書きの地図だけ渡した癖に下手くそすぎるあの女の子もどうなってんだ!?


「仕方ないな。それなら帰るよ」

「お、おう」


 そうしてクロウも若干歯切れの悪そうな顔をしながらギルドから去る僕を見送るのであった。



 かなり多くの観衆が探索者ギルドから歩いて5分程度のところにある修練場を取り囲んでいた。

 そのど真ん中のステージの上には軽装の少女、アイリン・シュバルツはイラつきながら拳をステージのど真ん中へと打ち込む。


「アイツ、来ねえじゃねえか!!!!」


 そんな悲しき遠吠えがレアンに届くことはついぞなかったという話である。

ご覧いただきありがとうございます!


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