夜空の星
寒い、寒い、空気が澄み切った冬にあった話である。
ある日の夜、曇り一つない夜空には満月1つとたくさんの小さな星々とを綺麗なお化粧のように飾られていた。
月を見に、家の庭へ飛び出た少年が月へ尋ねる。
「お月様、お月様、今日もお美しゅうございます。」
月はにっこりと微笑んだ。
「あらまあ、ありがとう。」
「お月様を飾るその1番大きな星はまるで宝石のようでとっても綺麗です。たくさんたくさんあるから、1つだけもらいたくなってしまいます。」
「この星は、亡くなってしまった人の姿よ。亡くなってしまうと、長い時間をかけて魂が遠い宇宙の煌めく星になるのよ。」
「それでは、もらいたいなんて僕は我儘でした。」
「いいえ、星は空から生きていた頃の家族やペットを見守っているけど、それではとっても寂しいのよ。だから、星が喜ぶものを差し出したらきっと良いことがあるに違いないわ。」
月は、隣にいる青く小さく光る星を指差した。
「これはあなたのひいおじいちゃんの星じゃないかしら。だって毎日あなたのことを見つめているんだもの。」
少年は、一度だけ会ったひいおじいちゃんの姿を思い出した。痩せていて、しわくちゃの顔でくしゃっと笑いながら、少年を強く抱きしめてくれた。
次の夜、少年は庭に家にあった日本酒をおいた。
お葬式の時に、ひいおじいちゃんが好んでいたと言われていたものだ。
「ひいおじいちゃん、いつも僕を見守っていてくれてありがとう。」
朝、目が覚めると少年の左手にはアクアマリンのような、ダイヤモンドのような、なんとも形容しがたい、澄んだ海のような宝石が握られていた。