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大根と王妃①  作者: 大雪
第二章 大根王妃登場
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第2話 ごちゃまぜ文化、風習、文明

 【始まりの世界】と呼ばれる世界があった。

 後に【天界(てんかい)】と呼ばれ、現在では【天界十三世界(てんかいじゅうさんせかい)】と名を変えた世界である。

 そこは、もとは一つの世界だった。

 しかし後の大戦で消滅寸前の末に再創造され、十三の世界からなる神々の住まいとして、数多の世界の上に君臨するようになった。

 その後、【天界十三世界】と名を変え、大戦以降に即位した天帝とその側近たる十二王家により治められていた。

 ここに、凪という国がある。

 広い領地に広大な平原と急峻な山岳地帯。

 豊かな川と海域を持ち、『海耀石』という希少な鉱物を市場へと供給する。

 そんな凪国は、天界十三世界が一つ――十二王家の炎水家が統治する炎水界の大国であり、同時に最も豊かな国と言われていた。

 しかし――果竪には別の意見があった。

 というのも、凪国は発展した鉱山業の反面、農産業の著しい遅れにより、農作物関連の大部分の輸入依存とそれに伴う食糧自給率急降下という負の連鎖を抱えていた。

 これを解決せずして、真の大国にはなり得ないと果竪は豪語する。

 大根、いや、農業を制するものが世界を制する。

 それはこの【天界十三世界】でも同じ事だった。

 ゆえに、果竪は農作業に勤しみ、いつか農作業を極め大根で世界征服――ではなく、全世界を豊かにするという夢を抱き努力してきたのである。

「だから畑に戻らせて」

 だが、そんな果竪の志を明燐は笑顔で無視した。

「さあ、果竪。こちらの洋風ドレスと和風着物、それとも中華風衣装、どれが宜しくて?」

「無視しないで……って、相変わらず和洋中ごっちゃまぜね」

「ふふ、他にも色々とありますわよ」

 そこには、数多の世界の衣装が綺麗に並べられていた。

 洋風、和風、中華風、仙界風、アジア風、西洋風――あげれば切りが無く、装飾品、装身具、室内に置かれている家具にも及んでいた。

 多種多様というかごちゃごちゃ。

 しかしこれこそが、今の天界十三世界の全てを凝縮した光景と言える。

「昔ならあり得ない光景よね」

 それは何も、衣装関係に限ってのことではない。

「ですわね~、特にこのごっちゃまぜ感はその最たるものですわ」

 明燐も改めて部屋の様子を見て苦笑した。

「でも、これが今の神々の世界ですわ」

「いや、そうなんだけどね……」

 この【天界十三世界】がまだ【天界】と呼ばれていた頃、一度壊滅寸前まで世界を追い込む大戦が起きた。

 今も尚、多くの者達に後遺症を残すそれに狂わせられたのは、神だけではない。

 多くの種族の命を奪っただけでなく、全ての世界の文明、文化、風習……そして世界すらも壊し、生き残った者達の運命すらも、あの大戦は狂わせた。

 遙か昔から天界に伝わる詩がある。

 何千何万と在る世界。

 生み出された数多の命。

 でも最初の命は、たった二人の存在によって創造された。

 彼らは『創世の二神』と呼ばれ、混沌を司った。

 全ては彼らから生まれ、彼らへと戻った。

 彼らは存在した瞬間から夫婦だった。

 彼らはまず自分達の眷属を創った。

 全てを注いで創った彼らの分身とも言える子供達。

 更にその子供達が住まう世界を創った。

 それが後に全ての世界の基となる【始まりの世界】であり、数多の世界にとって源となる。

 後に原初神(げんしょしん)と呼ばれし子供達は、そこで自分達に似た者達を造る。

 造られた者達は創造者の一字をとり、眷族神と呼ばれた。

 その後、【始まりの世界】は名を変え天界と呼ばれるようになる。

 それが、古代から伝わる神話の詩。

 だが――楽園は次第に腐敗と崩壊を繰り返し、一つの悲劇をもたらした。

 その名は暗黒大戦。

 千年に及んだそれは、前天帝や奸臣達の暴虐と殺戮の末に勃発し、結果世界の大半を消失させ、数多の民達を犠牲にした。

 更に【始まりの世界】と呼ばれた場所の混乱は、他の世界にも影響を与え滅亡へと追い込んだ。

 それでも現天帝達により大戦は終結し、世界は新たなる一歩を踏み出していった。

 それから百五十年――現在は、先の大戦を終結させた英雄――天帝夫妻と配下の十二王家によって治められていた。

 十二王家――それは大戦後に興された、天帝夫妻に次ぐ絶対的権力、地位、身分を持つ十二の家の総称である。

 天帝夫妻と共に【創世の二神】の力を賜った彼らは、他の神々とは全ての面で絶対的な差を有していた。

 彼らは、現天帝夫妻とは大戦以前からの仲間であり、その強大な力で創造、修復を重ね、世界を支え続けて来た。

 世界は、宇宙に似た階層構造へと姿を変えた後、十三の区域に分かれ、天帝夫妻が統治する区域を中心に、それを取囲むように十二の区域を持つようになった。

 後に【区域】は【世界】と名を変え、中央を除く十二の世界が、十二王家にそれぞれ与えられた。

 世界はそこを治める十二王家の名で呼ばれ、また一つの世界を十三に分けた事で、天界は【天界十三世界】と呼ばれていった。

 それぞれの世界には、神々が住まう惑星や銀河があり、数千から数万の惑星が存在する。

 なかでも、天帝や十二王家が住まう主惑星に在れるのは、主の信頼高い選ばれし者達とされている。

 凪国は炎水家の住まう主惑星にその領地を持っていた。

 しかし、全てが丸く収まったわけではない。

 再創造された世界は、神々が振るう力――神力が影響しては崩壊を起こすほどの不安定さを孕み、終に神々は神力の使用を制限される事となった。

 おかげで、神々は長きに渡って人間同然の暮らしを強いられていた。

 だが、それが【天界十三世界】に神力とは別の科学技術というものを発展させる結果になったのだ。

 世界の崩壊と共に天界に引き上げてきた数多の世界の神々は、新しく再生された【天界十三世界】に、あらゆる世界の文化と風習、文明を余すこと無く持ち込み、その恩恵をもたらした。

 だが、神々が持ち込んだのは文明の類だけではなく、科学技術――それに世界が注目するまで時間はかからなかった。

 そう――神々は、使用出来ない神力の代わりに科学技術を使う事にしたのである。

 取り入れられた技術は数えきれず、人間界からも、滅びる寸前に栄えていた二十世紀半ばまでのそれが取り入れられた。

 更に、その科学技術と神々の世界にある宝珠の欠片を組み合わせた第三の技術も次々と編み出され、場所によってはそれが主流とさえなっている。

 結果、多々の便利さを神々は手に入れる事が出来、それは紛れもなく、神力の使用を制限されたからこそ得た新たな力だった。

 その成功が、神々にあらゆる世界の要素が好意的に取り入れられる要因となったと言っても言いだろう。

 それに加えて、大戦によりそれまでの神々の常識の大半部分が砕け散った事も原因の一つと言える。

 しかし――。

「なんかチグハグ感が否めないのよね」

 果竪は衣装や装飾品を見ながら呟いた。

 いくら入り交じっているとは言っても限度はあり、国によって大きく基盤となる文化と風習、文明がある。

 凪国は仙人界のものが基盤となり、ただそこに、他の文化等が多少なりとも入り交じる程度である。

 しかし、国によっては幾つかの文化等が混ざり合って新たな文化を形成している場所もあるらしく、ゴスロリとチャイナドレスが共存する場所もあるとか。

「私としては、こちらのドレスも良いのですけどね」

「それは美人だけが許される代物です」

 果竪は全力でロリータドレスを持つ明燐を止めた。

「ならば、この淫猥なシスターコスプレもありますが」

「いやじゃああっ!」

 続く戦いは終りが見えなかった。


ちょっとずつ変わってきます。

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