生徒会
確か、体育館の手前に生徒会室があったはずだけど。
しばらく廊下を進むと扉のガラスに『生徒会室』の貼り紙が目に留まった。
『ここか。なんか普通の部室みたいだな。』そんなことを思いながら、オフブルーのドアを開けた。
一歩その中に入ると、冷気が僕を包みこんだ。
昼間なのに遮光カーテンの閉められた部屋は、真っ暗だった。
何か出そうな雰囲気。
とりあえず僕は、その暗闇に、ちいさく声を掛けてみた。
「誰かいませんか?」
「どちら様ですか?」としばらくたってから、さらに小さな声が聞こえた。
ここには、妖精がいるのか?
それとも学校の七不思議か?と思いながら、
「こんにちは。山田優斗です。今日から、生徒会を手伝うように、田中先生から無理やり言われたものです。」と、再び暗闇めがけて、さらに声を潜めて答えた。
次の瞬間、いきなりカーテンが開いたかと思うと、一人の少女が窓の前に立っていた。
「生徒会にようこそ、山田君。さすがね、田中先生は、君をこんなに早く生徒会におくりこんでくるとは。」と彼女は、一歩前に進もうとして、ごみ箱につまずいて転んだ。
「痛て!」と言って彼女はおでこをさすった。
「痛いのは、足では?」
「違うわ。痛いのは、初対面の人の前で大きく転んだ私の心よ。」
ちょっとついていけないな。
多分、この人のおかげで生徒会が、人手不足なんじゃないかな。
しばらく沈黙、そして周りを見る。
生徒会室の中は、思ったよりも広く真ん中に四角いテーブルそして、両側に椅子が3脚ずつ。
そして、窓際に大きな机が置かれていた。
そして、右側には、日報!と書かれたファイルに埋め尽くされている本棚が、所狭しと並んでいた。
「ハイそこ、美人でスタイルのいい私を無視しない。」
「だって、窓を背にしたシルエットで顔なんてわからないよ。」
「それにここの制服、体のラインなんて全然わからないし。」
「会長と副会長は、今所用で席を外してます。で、私は、この学校で唯一学生が、エアコンの効いている部屋でくつろげる生徒会室の主、佐久間良子3年生です。」
「昨年の生徒会長ね。」
「ああ、ご隠居ね。」
「相談役と呼びなさい。」
「ハイハイ。」
「ハイは、一回で良い。」
「では、バイバイ。僕帰ります。」
「はい、はい。なかなか面白いことを言うね。君は。」
「すみません。1つ聞いていいですか?」
「なんでも聞いてくれ。」
「さっきなぜ、カーテンを閉めてたんですか?」
「それをレディに聞くのか?」
「だって何でも、聞いてくれって。」
「それはだな、暗闇でやることってそんなにないだろう。あれだよあれ。」
「ああ、寝てましたね。さては。」
「違う違う。いつも運動部の連中が、押しかけてくるから居留守を使おうと・・・。」
と言って彼女は、僕と目を合わせてくれない。
「こう見えても、人見知りなのだ。」
「良子さん、よくそれで、会長なんてできましたね。」なんだか僕は、彼女をからかいたくなった。
「なんだ、私を下の名前で呼ぶとは。お前は、俺の何なんだ?恋人か?」
ツインテールの眼鏡女子が、顔を上げた。僕より年下にしか見えないんだけど。
「もう、一つ聞いていいですか?今日、何かやることあるんですか?」
「そうそう会長から、すぐ戻るから、君にここで待ってるよう言ってくれって言われたっけ。」
「ということで、しばらくそこで待っていてくれ。」
僕は、生徒会室の端に並べてあるパイプ椅子を取りだして、そこに座って会長を待つことにした。
良子さんは、おもむろにノートパソコンを開いて、カタカタというこぎみよい音を響かせていた。
しばらくすると、生徒会室の扉が開いた。
ひょろっとした、メガネ男子がそこに立っていた。
「ごめんね。待たせた?佐久間前会長が来てくれてたから、暇じゃなかったと思うけど。」
ツインテールのメガネ女子が、おもむろに胸を張った。
「ハイハイ。」僕は、パイプ椅子から立ち上がりながら、彼女の方を見てつぶやいた。
「もう少ししたら、副会長と書記が戻ってくるから、そうしたら簡単な自己紹介と、今の生徒会の現状を説明します。」
しばらくして、ちょっと小太りの学生と女子生徒が入ってきた。
「こんにちは。副会長の大野木です。2年生です。」
「山田、元気?」と言いながら、同じクラスのさやかが入ってきた。
ああ、もしかしてこいつ、田中先生とグルになって僕をはめた?僕は心の中でつぶやいた。
「じゃ、みんな揃ったのでミーテイングを始めます。」
「まず最初に、本日から生徒会のメンバーになってくれた山田君。」
「担任の田中先生とそこの城川さんにはめられて、生徒会に入るようになった不幸な1年2組の山田優斗です。」
「会長の高橋です。2年1組です。」とひょろっとしたメガネ男子。
「さっきも言いましたが、副会長の大野木です。趣味は、料理一般。作ることと食べることね。2年2組です。」
「あらためまして、1年2組の城川さやかです。趣味は、ピアノ。なので生徒会では、音楽系クラブの担当です。」
「会長の僕は文系、副会長の大野木君は家庭科系のクラブの担当で、山田君には、運動部のサポートをお願いします。」
「時々、助っ人の依頼も来るから君のようなスポーツ万能な人が欲しかったんだ。」
「前会長も、もう居留守を使う必要もなくなるし。」
えっ、さっきの本当だったの?ぼくは、おもむろに前会長の方を見た。
そこには、自慢げに胸を張った前会長がいた。何が自慢なのかわからないけど、まあいいか。
「特に今困っていることは無いので、きょうは、この辺で終わります。山田君もゆっくり仕事を覚えてくれればいいから。忙しいのは、秋の文化祭ぐらいかな。後、この部屋は、民法90条の公序良俗及び校則に違反しなければ何に使ってもいいから。ということで本日は、お疲れさまでした。」
生徒会というから、ちょっとビビっていたけど、この程度なら何とかなりそうだな。
「じゃ、すみません。今日はお先に失礼します。」そう言って僕は、生徒会室を後にした。




