学校
いつものように、駅前のコンビニで朝飯のパンを買って電車に乗り込む。
家でひいおばあちゃんが作る朝ご飯を食べてもよかったけど、ちょっとでもサーフィンがしたいから通学途中のコンビニで済ませている。
僕は、父や母が通った高校とは違って海沿いの高校に進学した。
理由は、授業中も海を見ていたいから。
これは、どうやら祖父の遺伝子らしい。
なぜなら、祖父は、有名な海洋科学者で波の研究のために、今僕が住んでいる家に下宿していた。
そして、波の研究のためにずうっと海を眺めていたらしい。
その時に、僕の祖母、今一緒に暮らしている曾祖父母の娘に恋をして結婚した。
残念ながら、彼の頭脳の遺伝子も僕を拒否したみたいだ。そして、その二人の子供が、僕のお父さん。
ちなみに、僕の母親は、この近所に住んでいて、病弱のために環境の良いこの田舎に転校してきた父と出会った。
体を鍛えるために、サーフィンを始めた父とそれを見守る母。
勉強では、地域の進学校でしかも学力テストで1位と2位を争っていた二人。本当にぼくは、貴方達のこどもですか?と思いながら、海を眺めている。
それでもこの高校では、上位の成績なのでとりあえず良しとしておこう。
午前中の穏やかな授業が終わり、学食までの猛ダッシュの後、眠そうな目をこすりながら英語の授業を受ける。
『海外でサーフィンをしたいなら、英語はしゃべれるようにしないとだめだよ!』の師匠に教え通り、どんなことがあっても英語の授業は聞くようにしている。聞くだけだけどね。
さらに、この高校では、国際交流が盛んで、海外の留学生も多い。日常会話的に、英語が喋れるのもこの高校の魅力だ。
数学と物理そして体育も得意なので、それなりにクラスに溶け込んでいる。
それなりの高校だから、当たり前か?
身長も170㎝は超えていたので、いじめられることもなかった。
やっと6時間目が終わって、教室から出ようとしたら、担任の田中先生から声を掛けられた。
「山田君、ちょっと時間ある?話があるの。職員室まで来てくれる?」
「今日バイトなので、10分ぐらいでお願いします。」
「そう。わかったわ。すぐに終わるから大丈夫よ。」
僕は、そのまま田中先生の後について教室を出た。
職員室に行くのかと思ったら、そのまま生徒相談室に連れていかれた。
机を挟んで、いすが向かい合わせに置かれている。刑事ドラマの取調室のようだ。
こんな部屋、合ったんだ。
一体、こんなところに誰が相談に来るんだろう?
「先生、まさかこんなところに連れ込んで、か弱い高校生を襲うつもりですか?」
「誰が、自分より体力の有りそうな高校生を襲うのよ?」
「いや、その大きな胸で、誘惑しようとしてません?」
あきれた顔の田中先生に
「では、私は、襲われないうちに帰ります。」
「ちょっと待った。話したいことって、生徒会のことなんだけど。山田君、クラブ入ってないでしょ?」
「2学期になったら、生徒会に入ってみない?」
「生徒会ですか?生徒かい?いちよう、僕もこの学校の生徒です。」
「そうよ、みんなクラブが忙しいって、受けてくれないのよね。」
「それで、暇そうに見える僕が選ばれと。」
「違うよ。成績優秀で、いつも時間には正確で、クラスでも人気があるあなただから、お願いしてるんだけど。」
先生、あなたはそうやってその胸で、何人の生徒を不幸にしたんですか?
「僕、クラスでは人気無いですよ。友達もいないし。1日中教室の窓から海を見ているだけだし。それに、大学の推薦を受けないから、内申は関係ないでしょ。」
「それでは、僕はバイトがあるので、これで失礼します。」
「山田君、あなた、山田海人のお子さんだよね?これは、使いたくなかったんだけど。」
「バイトの許可申請も、家族構成が曾祖父母と自分だけなので生活費を稼ぐため!って、なってるけど必要ないでしょ。」
「あなたのお母さんは、この辺でも、有名な会社の社長さんでしょ?」
そう、僕の祖母は、僕が、今飲んでいる薬を開発するために、この近くに研究所のある製薬会社を買収し、その社長が僕の母だ。
「実は先生、あなたのお父さんの担任だったのよ。」
「お葬式の時のあの坊やが、山田君なのね。そういえば、貴方のお父さんにどこか似ているわ。エッチなところが。」
「取引ですか?バイトの許可を取り消さない代わりに生徒会をやれ。と」
「違うわよ。やってくれたらいいなと思っているだけ。」
「生徒会ですか?とりあえず、一晩考えさせてください。」
そう言って僕は、その生徒相談室、いや取調室を出た。
僕がその部屋から出るのと入れ違いに、同じクラスの城川さやかが、その部屋に入っていった。
すれ違う時に、軽く笑顔をそしてお辞儀を僕に向けたように思った。
思わず、入るのやめたほうがいいよって、言いそうになったけど、他人のことには干渉しない。
それが、クラスで美人と評判の人であっても。
他人への無関心は、毎朝飲む薬の所為かもしれない。
あの薬を飲むの止めたら僕は、どうなってしまうのだろう。
死んでしまうのかな?そんなことはないと思うけど、お母さんは、ただの自分の気休めのためだと言ってたけど?
そのまま、僕は校舎を後にして、バイト先に向かった。




