番外編③「元・闇の魔王と元・魔王軍幹部」
闇の魔王が闇の魔王でなくなって数ヶ月が経った。
魔王に性根を叩き直された元・闇の魔王は心を入れ直し、バイトに励み定時制高校に通い将来に向けてしっかり歩き始めて……いなかった。
ハローワークでは職員につかみかかり、バイトの面接では上手く喋る事ができず不採用になり、定時制高校はわずかひと月でやめた。
思い通りにならなければ拗ねる、ふてくされる、怒り散らす。やはり人間はそう簡単に変われないものである。
しかし現在入り直した通信制高校は何とかやっている。
合う合わないを選べるようになっただけ少しマシになったといえるだろう。
それと柔道部に入り熱心に打ち込み始めた。
長年運動不足で運動嫌いの割に随分な進歩だ。
ただその理由は浅はかなもので…
「俺もアイツみたいにモテるようになるかな?」
風呂上がりに鏡の前でポーズを取っている元・闇の魔王に小生は呆れかえる。
あれなる魔王はモテている訳ではなく歪んだ変態的な願望を押しつけられているだけである。いや、あの自分に素直になれぬサキュバスの女は本気で好きだったようだが。
そんなこんなで柔道には打ち込んでいるが、勉強の方はあまり身が入っておらず夜も1人遊びとネットと動画に勤しんでいる元・闇の魔王であった。
しかしそんな元・闇の魔王に試練が訪れる。
期末テストだ。
元・闇の魔王が落ち着かぬ様子で試験前の時間を過ごしている。
人が周囲にいるのが落ち着かぬようだ。ずっと一人で過ごしてきたからな。
チラチラと周りを見てハンカチで汗を拭く。
テストが始まってからもその汗は止まらない。
当たり前だ。ロクに勉強しておらぬのだから。
元・闇の魔王がイライラした様子で貧乏揺すりを始める。
また投げ出すのか?
引きこもっている間、何かを始めようとしても挫折した時の癖に小生は悪い予感を覚える。
しかし元・闇の魔王は貧乏揺すりをやめシャープペンを手に取りテストに挑み直した。
…少しはマシになっているやも知れぬかもな。
以前であれば少し躓いただけで投げ出していたのに大した進歩だ。
とはいえまだまだこれから大変であろうがな。
小生は元・闇の魔王の影から窓の外を見る。
入道雲が広がる青空だ。魔王がいたら絵を描き始めるだろう。
少し本音を言うと、
あれなる魔王とその愉快な幹部達がいる異世界がたまに恋しくなる時がある。
しかしこの世界を選んだ事に後悔はない。
テストが終わる。
元・闇の魔王が一仕事終えたと言わんばかりに息を吐く。
答案はすべて埋まっている。どうにかなったのか?
しかし元・闇の魔王は赤点を取り補習を受ける事になった。
どうやらまだまだ前途多難なようである。




