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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第五十九話「魔王VS闇の魔王③」

 異世界転生したら魔王だった。

いや、最初から魔王というわけではなかったが。

色々あって、この転生した世界で俺は魔王になってしまった。

その色々あったこれまでの人生をざっくり3行でまとめると


①魔法使いの少年(俺)が試練に挑み失敗、闇落ちする。

②死にかけていた少年(俺)を闇の世界の王が助け、力を与える代わりに世界征服を命じる。

③少年(俺)は、魔王になり仲間を集め国を作り世界征服を目指した


 ・・・という感じだ。

色々あった部分はこれまでの物語を読み返してもらいたい。

色々あった結果、俺は闇の魔王に逆らう事にした。

自分の気持ちに素直になって、俺はこの世界に転生した時思っていた事を思い出した。

思えば魔王になってから、

自分の意思がなく働かされていたブラック企業にいた時と同じように言われるがまま何をしていいか分からず闇の魔王の顔色をうかがって生きていた。

でも俺は、本当の気持ちに気がついたんだ。


俺は―――――――――――――魔王になんて、なりたくなかったんだ。




******************************




「クロカゲ!」

「承知!」


ガーさんに一発入れられ、うつ伏せに地面に倒れている闇の魔王の影から俺の影に、クロカゲが移る。


「う…ぬう?」

「あれ…? 一体何が…」

「…私、石に変えられてたはずじゃ…」

「私は… 魔王様!」

「皆! 元に戻ったのか!」


すると石に変えられていた皆が、元の姿に戻り動き出した。


「魔王様!」

「魔王様…、ああ、よかった…!」

「魔王様! ご無事でしたか!」


エリザベスが、クリスティーナが、ミノさんが俺に抱きついてくる。重い! 重いよミノさん!


「待つんだ皆、まだ終わってない」


 皆を振り払い、俺は闇の魔王に向き直る。

クロカゲを失った闇の魔王はただの人間だ。

一方俺は魔王の力を手にした魔法使い。

闇の魔王は、顔面を蒼白にして怯えきった表情になった。

俺はそんな闇の魔王に向けて杖を構え…


「………やめだ」


構えた杖を、下ろした。


「クロカゲ、出ろ」

「よいのか?」

「ああ、コイツとはタイマンで勝負をつける」


 クロカゲを外に出しクリスティーナに杖を預け、俺は闇の魔王と正々堂々1対1で勝負を付ける事を宣言する。


「勝負だ、闇の魔王。俺は魔王の力も魔法も使わない。お前が勝ったらこの世界をくれてやるよ」

「オイオイ、何言って…」

「よい。魔王様が決めた事なら我らは従おう」


 何かを言いかけたマキシムを、ミノさんが手で制す。

ミノさんの言葉に、クリスティーナや皆もウンと頷いた。

一方闇の魔王は、俺を見て嘲笑を浮かべた。

当然だ。俺の体格は自分と比べて頭ひとつ小さく、ケンカ慣れしているようにも見えない。

魔法を使わない魔法使いなんて楽勝だと思っているのだろう。


「…ウオオオオオオ!!!」


 闇の魔王は、吠えながら俺に殴りかかってきた。

繰り出した拳が、俺の肩を叩く。

闇の魔王が、歪んだ笑みを浮かべる。

人を殴った事もない、人を傷つける事を何とも思っていない拳だ。その性根を、叩き直してやる。

闇の魔王が次々繰り出す拳を躱す。

力任せに振り回しているだけに当たると痛いだろう。だが、当たらなければどうという事はない。

普段から運動不足なせいだろうか、闇の魔王の息が上がっていく。

見るからにフラフラになった闇の魔王、俺はその雑な右ストレートを躱し、スウェットの裾を左手で、襟を右手で掴む。

大事なのは相手の勢いを利用する事とタイミング。

俺は闇の魔王の身体を腰に乗せて投げ飛ばした。

一本背負いがきれいに決まり、闇の魔王の身体が地面に打ち付けられる。受け身を取れなかった闇の魔王が呻く。

その身体の上に倒れ込み、裾を右手で握り左腕を首に巻き付けて絞める。

極められた袈裟固めから逃れようと闇の魔王がもがくが俺はびくともしない。


…柔道をやっていてよかった。

初めて警察の柔道教室に行った時、体格で俺に劣る上級生の子に抑え込まれた時の事を思い出す。

技術と努力は裏切らない。体格差だって覆すのだ。

小中高と12年柔道をやってきた経験と技術は、異世界転生したこの世界でも受け継がれていた。ひそかに鍛錬も積んできた。受け身の練習をしている時にクリスティーナに見られ怪訝な顔をされたけど。

もがいていた闇の魔王が、“落ちる”。


「ふうっ…」


意識を失いぐったりした闇の魔王を放し、俺は服を直しながら立ち上がった。


「魔王様!」

「ウム! さすがは我が見込んだ魔王様だ!」

「やるなあ! さすがウチらの魔王さんや!」

「ええ! 吾輩は信じてました!」

「フン、ちったあやるじゃねえか」

「ヒャッヒャッヒャ! 妙な武術の心得が役に立ったのう」

「そうね、魔王様は寝技がお得意だものね」

「ベス姐さん? どういう意味だ?」

「ななな、何でもないわよ」

「して、魔王よ。これからどうするのだ」


俺を褒め称える皆の輪から一歩離れた所にいるクロカゲが問いかけてくる。


「力を失い貴様にも負け、甘ったれの闇の魔王にもう戦う気力もないだろうがこれからどうするのだ?」

「フム…」


俺は気を失っている闇の魔王を見下ろし、ある事を思いつく。


「エリザベス」


俺に名前を呼ばれたエリザベスが、小首を傾げる。


「頼みがあるんだけどいいか?」

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