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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第五十三話「ミノさんVSケルベロス」

「…あの夜から幾星霜。ようやくご恩をお返しできる時が来たのですな、魔王様」


闇の魔王の使い魔、ケルベロスを前にして我は腕を組み目を閉じあの夜のことを思い出す。


「燃え盛るミノタウロスの里を見た時、我は夢であってくれと願った。悪い夢であって欲しいと」

「ミノさん! 浸ってないで戦って! ミノさん!」


魔王様が我に呼びかけてくる。今いいところだから邪魔しないでいただきたい!


「妻と息子の亡骸を抱いた時、我は人生が終わったと思いました。我が生きている意味は何もないと」

「ミノさん!? 前! 前来てるから!? 目を開けて戦って!!!」


魔王様が我に呼びかけてくる。今いいところだから邪魔しないでいただきたい!


「ですがそこに魔王様が来て下さって。妻と息子を蘇らせてくれて、同胞達も蘇らせてくれた。それだけではありませぬ。行き場を失った我らに生きる場所を与えて下さった。このご恩はこれから先一生かけても…」

「ミノさん! 前! 前ー!!!」


 次の瞬間、我の頭が何かに包み込まれ首に何かが食い込んでくる。

我の頭が、ケルベロスが丸呑みにされたようだった。


「うわああああ! ミノさああああああん!!!」


生臭い口の中で、魔王様の悲鳴が聞こえる。


「ぬうん!!!」


我は、ケルベロスの頭を掴み思い切り投げ飛ばす。


『ギャウン!!!』


地面に叩きつけられたケルベロスが、犬のような悲鳴を上げる。


「まだ口上の途中であろうこの犬っころめが! 『待て』もできぬのか!!!」


投げ飛ばしたケルベロスに向けて、我は人差し指を突き立てる。


「よかろう! 貴様はこのミノタウロス・ミノケンティヌス・ハーゲンクロイツ・ボーデンが徹底的に教育してくれるわ!!!」






「ぬん! ぬん! ぬうん!」


 ケルベロスの3つの首の噛みつきが、時間差で襲いかかってくる。

息も吐かせぬ連続攻撃、我はそれをマサカリで弾きながら反撃の隙をうかがう。

と、思っていたらケルベロスが後ろに飛びずさり……真ん中の首が炎を吐いた。

魔王様の『インフェルノ』のような攻撃だ。いや、これは魔法だ!


「こやつ、魔法も使えるのか!」


 炎をマサカリでいなすと、次は左の首から雷の攻撃が飛んで来た。

魔王様の『ライトニング』のような攻撃だ。


「ぬるいわ!」


 しかし我の敵ではない。マサカリで軽く弾き飛ばす。

クリスティーナ殿の聖剣ほどではないが、このマサカリは神木を切り落とし、ドラゴンの硬い鱗も砕いたほどの逸品。

その程度の魔法など相手にならぬわ!

と思っていたら右の首から強烈な冷気が襲いかかってきた。魔王様の『ブリザード』のような攻撃だ!


「ぬううっ!?」


 予想外の攻撃に、我はマサカリを取り落としてしまう。そこに雷の攻撃が飛んで来てマサカリを弾かれてしまった!


「ミノさん!」


 魔王様がマサカリを拾ってくれているが、取りに行く暇がない!

ケルベロスの噛みつきが、襲いかかってくる!


「ぬう! ぬう! ぬうん!」


 我はそれを拳で弾きながら、何とかマサカリを受け取りに行く隙を探すがその暇がない。

ケルベロスの連続攻撃をいなすだけで精一杯だ。

噛みつきだけではない。ケルベロスは前足で引っ掻いてきたりして徐々に対応できなくなってくる。手数が多い! ぬう、このままでは…!

と、思っていたらケルベロスが何やら我のポケットに鼻先を当てスンスン匂いを嗅いでいる。

我はポケットの中をまさぐる。

お菓子だ。

戦いの前にガーさんにもらった新作スイーツだ。戦い終えたら食べようと思っていたお菓子だった。


「………そおれ!」


 我はお菓子を包み紙から取り出しケルベロスに向けて放り投げる。

するとお菓子を争い、3つの首がケンカし始めた。


「…好機!!!」


我は放り出してしまったマサカリを拾いに行った。


「ミノさん!」

「かたじけのうございます魔王様!」


 魔王様からマサカリを受け取り、ケルベロスの方を向く。

結局お菓子は三等分にして食べたようだ。


「食事は済んだか、犬っころ。ガーさんのスイーツはうまかったであろう」


 我はマサカリを構え直し、ケルベロスに相対する。

ケルベロスは鼻を舌で舐めた後、戦闘態勢を整えるように後ろ足で土を蹴った。

それから右の首の冷気の魔法攻撃。

しかし同じ手は食わぬわ!


「マサカリ大旋風!!!」


 我はマサカリを両手で握り、ジャイアントスイングの要領でブン回した!

冷気を回転しながら弾き飛ばし、そのままケルベロスに向かってまっすぐ進む。

攻撃を防がれたケルベロスが、炎を吐いてくるがそれも回転で弾き飛ばす。

そしてそのままケルベロスに、襲いかかった!


『―――――――!!!!?』


 ケルベロスが声にならない悲鳴を上げて、吹っ飛ばされる。

宙を飛んだ肢体が地面に叩きつけられ……ケルベロスの存在は世界から消えた。


「誇るがよい犬っころよ。貴様は我が今まで戦った相手の中で一番強かったぞ」


 我はマサカリを地面に下ろし、ケルベロスを称えた。

我が名はミノタウロス・ミノケンティヌス・ハーゲンクロイツ・ボーデン。

一介の大工にして、家族と平和を愛する者。

魔王軍の一の忠臣にして、魔王軍最強の武人である。

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