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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第五十一話「魔王の決意」

 …最後の夜になるかもしれない夜が来た。

学校や国の住人達に避難計画を説明し、闇の魔王を迎え撃つ準備を整えた後はいつも通り大食堂で食事を取り、皆で大浴場に入り卓球やマージャンを楽しんだ。

明日世界が滅びるかもしれないというのに呑気なもんだ。でも、俺達らしいといえば俺達らしい。

あの後俺は彼女に声をかけた。

夜になったら俺の部屋に来るようにと。


「フーっ…」


 緊張する。

これが最後の夜になるかもしれない。

だから後悔しないよう思いを伝える覚悟を決めた。

覚悟を決めたんだけど……やっぱり緊張する。

断られたらどうしよう?

拒絶されたらどうしよう?

悪い考えが頭を駆け巡る。俺はアルコールをぐいっと飲みその弱気を飲みこんだ。


 いつだってそうだ。

楽な方に流されてしまう方が、楽だ。

けれども人生を変えたいと願うなら、

自分を変えたいと願うなら、

いつだってものすごい勇気がいる。

それを忘れて日常に流されて、考える事をやめてしまって俺は前世で命を落とした。

やりたい事も、見てみたい物も、食べたかった物もたくさんあった。

それを全部、仕事で流されて叶えられなかった。

だからこの異世界に転生した時は、後悔しないよう生きてやろうと思っていた。

なのに結局流されて流されて、大切な事を忘れてしまっていた。

コンコン。

控えめなノックの音がして、俺は思索から現実へと引き戻される。

この時が来たか。俺は改めて覚悟を決める。


「入ってくれ」

「失礼します」


俺が呼び出した彼女、クリスティーナが俺の部屋に入って来る。


「御用事とはなんでしょうか魔王様。明日の事についてはもう打ち合わせは済んでいると思うのですが…」

「ああ、お前に個人的に伝えておきたい事があってな…」

「私に、ですか?」

「うむ、その…」

「?」


 いつもと違う俺の様子に戸惑ったのか、クリスティーナが小首を傾げる。

俺は、意を決してストレートに言った。


「好きだ」

「…………………………は?」

「だから……、好きだ」

「…何がですか?」

「…お前の事が好きだ。クリスティーナ」

「…はっ?」


クリスティーナが、何が何やら分からないといった様子で目をパチクリとしばたかせる。


「……俺は、お前の事が好きだって言ってるんだよ」

「えええええええええええええええええええ!!!!!?????」


 クリスティーナが驚いた表情で叫ぶ。

ええいうるさい。耳がキーンとしちゃったじゃないか。

耳鳴りをする耳を押さえていると、クリスティーナが俺の肩を掴んで揺さぶってくる。


「す、すすす好きってどういう事ですか!?」

「恋愛対象として好きって意味だ」

「抱きしめたいとかキスしたいとかエッチしたいって意味の好きですか!?」

「抱きしめたいとかキスしたいってエッチしたいって意味の好きだ」


クリスティーナが、呆然とした表情で固まる。


「えっ? だって、だって…今まで散々私からの求愛を拒んで、求婚を拒んで、エロい事するのも拒んできたのに?」

「そりゃあれだ……その…なんていうか、自分に自信がなくて…」

「ま、魔王様なのに?」

「魔王かどうかは関係ないだろ…」

「い、いつから私の事が好きだったんですか!?」

「その…………初めて会った時から」

「はっ!?」

「えっと…お前が魔王城に侵入して捕まって俺の元に連れてこられた時から……一目惚れだったんだ」

「じゃあ何でエロイことしなかったんですか!?」

「したかったさ!」

「えっ…」

「したかったよ! エロイこと! でもできるかそんな事! 普通に犯罪だわ!」

「私はいいと言っていたではないですか!」

「だとしても、だよ。俺は誰かとそういう事をするならちゃんと段階を踏んで恋人になってからするもんだと思ってるから…」

「…童貞なんですか?」

「ど、どどど童貞ちゃうわ!」


ちゃんと月1回……彼女の事もきちんとしないとなあ…


「クリスティーナ、好きだ。俺と付き合って……いや、結婚してくれ」

「…本気ですか?」

「冗談でこんな事言わないよ。本気だ」


クリスティーナが、涙目でプルプル震え……俺に思い切り抱きついてきた。


「バカ! バカですかあなたは! 私の事が好きならもっと早く言ってください!」

「スマン…」


 こんな明日死ぬかもしれないなんて時になって、ようやく言えるなんてな。

でも……俺はもう覚悟を決めたんだ!


「俺は覚悟を決めたぞクリスティーナ! 俺はお前を抱く! 文句ないな!」

「は、はい!」

「ほ、ホントに大丈夫? イヤならイヤって言ってもいいんだよ?」

「なぜそこでヘタレるのですかあなたは!? 問題ありません! ドンとこいです! 前々からずっとそう言ってるではないですか!」

「俺はお前が好き! お前も俺が好き! いいな!」

「はい! だから前々からずっとそう言ってるではないですか!」

「ならばよおおおおおし!」


 俺はクリスティーナを抱きしめキスをし、ベッドに押し倒す。

そして高らかに宣言した。


「今夜は寝かさないぞおおおおおおおお!!!!!」




******************************




「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ…」


 そんな事を言いながら、俺は杖を手に取りローブを羽織る。

窓から差し込む朝陽が眩しい。スズメではないけど鳥の声が心地いい。おはよう、世界。


「お目覚めですね、魔王様」

「ああ、おはようクリスティーナ」

「はい、おはようございます」


 今夜は寝かさないと言ったが終わった後2人ともすぐ眠ってしまった。

あの後イチャイチャし合った俺達は、くたびれてしまい寝てしまった。

特に俺は疲れが溜まっていた事もありすぐ寝てしまった。

けれどもそれでよかったかもしれない。

なんせ今日は……大事な戦いの朝なんだから。


「勝ちましょう。勝ってまたイチャイチャしましょう。今度はもっとすごいことしましょう」

「そうだな…。それとお前のご両親に報告して式を挙げないとな。盛大に祝おう」

「はい…!」


 …ああでも、彼女の事も何とかしないとなあ。

でもそれもこれも闇の魔王の事が片付いてからだ!

俺達は、戦いの準備を整えに向かった。




******************************




 魔王城最上階。

通称『魔王の間』の奥にある小部屋には、闇の魔王に通じる鏡がある。

その鏡は今、魔王城の城門の外の荒野に置かれていた。

鏡と相対するように、俺やクリスティーナ、ミノさん達が並ぶ。

俺はティルの作った魔法の威力が上がるポーションを飲んだ。


「もうすぐ正午です。魔王様」

「ああ、闇の魔王も気づいたんだろう。来るぞ…!」


 鏡からは禍々しい瘴気が立ち上っており、その時が来るのを今か今かと待ち構えていた。

そして正午。

魔王城の鐘が鳴り響くと同時に鏡から3体の闇の魔王の眷属が飛び出してくる。

闇の魔王の眷属の1体。三つ首のケルベロス。

闇の魔王の眷属の1体。9つの首を持つヒュドラ。

闇の魔王の眷属の1体。海の魔物クラーケン。

いずれもとてつもない力を持つ化け物だ。


「皆、こいつらは俺が相手するから後ろに下がって…」

「魔王は引っ込んでろ」

「左様、ここは我らの出番ですぞ」

「魔王様、ここは我らにお任せを」


ミノさん、マキシム、クリスティーナの魔王軍最強トップ3が俺の前に出た。


「いや、ここは俺が…」

「バカですか? 闇の魔王と戦う前に消耗するつもりですか? それに魔王様じゃあいつら3体相手できないでしょ?」

「ウム、ここは我らにお任せくだされ」

「牛野郎、あのケルベロスを任せていいか。オレはあのヒュドラをやる」

「よかろう、任された」

「では私はあのクラーケンと戦おう」


 巨大なマサカリを手にミノさんがケルベロスに、魔剣を手にマキシムがヒュドラに、聖剣を手にクリスティーナがクラーケンの前に歩み出る。


『―――――――!!!!!』


 それに応えるように、ケルベロスがヒュドラがクラーケンが、咆哮を上げた。

かくして。

魔王国最後にして最大の戦いが始まった。

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