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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第四十七話「プロジェクトE」

「今日皆に集まってもらったのは他でもない…」


 魔王城6F、魔王軍会議室。

その魔王席に座った私は皆に重々しく言い放つ。


「節分プロジェクト、『プロジェクトE』を実行するためだ!」

「クリスティーナ殿、『プロジェクトE』とは何なのですか?」


上座に座ったミノさんが手を挙げて聞いてくる。


「『プロジェクト恵方巻き』だ」

「「「「「えほうまき?」」」」」

「私も詳しくは知らないが…、魔王様によると節分に縁起のいい方角を向いて太巻きを食べると縁起がいいらしい」


 私が人喰いオーガを討ち取り凱旋パレードを行った日を記念して広まった記念日、鬼に扮した大人達が子供にお菓子をあげる「節分」の話をすると「俺の知ってる節分と違う!」とおっしゃっていた魔王様が話してくださった不思議な風習だ。その他にも歳の数だけ豆を食べるとか、鬼に扮した人に豆をぶつけるとか言っていたがちょっと何を言ってるのか分からない。


「ねえクリスティーナ?」

「何だベス姐さん」

「それって魔王様の許可取ったの? お金勝手に持ち出したりしてない? 回転寿司の時みたいな事にならない?」

「大丈夫だ。ちゃんと魔王様に話して許可も取ったしお金も予算を頂いてきた」


 魔王様の承認印が入った書類を見せると、皆がオオーッっと言い拍手し始めた。そんな事で感心されても困る。ドMの私でも、冬の寒い時期に地下牢で吊るされるのはゴメンだ。


「それに作るのは太巻きだけだからな。回転寿司みたいに新しく作る機械もないし予算はさほどかからない」

「なんやー、ウチの出番はなしか」

「いや、出番はあるぞハカセ」

「何やて?」

「…オイ、それよりまさかとは思うがまたオレに海の上で1ヶ月頑張れとか言わないよな」

「いや、太巻きのほとんどは魚を使わない物にするから大丈夫だ」


私の言葉に、マキシムがほっと肩をなで下ろす。


「でも魚を使う物も作りたいから海の上で頑張ってきてくれ。今回は1週間くらいでいいぞ」


しかし続いた私の言葉にマキシムがガックリ肩を落とす。忙しい奴だな。


「太巻き作りは大変だから大食堂だけでなく、魔王国皆で作る事にする。シャリ班、具材班、仕上げ班に分けたから各々確認してくれ」

「「「「「…ああ(ウム!)(はい!)(ええ)(ヒャッヒャッヒャ!)(分かったで!)」」」」」


 私の指示を受けて、皆が解散していく。

かくして、プロジェクトEは始動した。




******************************




「いやー、思いの外盛り上がらなかったわね。プロジェクトE」

「…」

「そりゃあ皆で黙って同じ方向向いて巻き寿司食べるだけだもんね。豆をぶつけるイベントの方が盛り上がったんじゃない?」

「…」

「ミノさんはお寿司食べられて喜んでたけど、冬だし寒いものね。お寿司の季節じゃないわよね。魔王様が熱いお茶を淹れるよう言ってくれなかったらもっと盛り下がってたわね」

「…」


 ベス姐さんの容赦ない総評に、私は黙り込む。

あんなに頑張って準備したのに…! あんなに大変だったのに…!


「でも、魔王様を元気づけたいって気持ちは伝わったんじゃない?」

「…」


ベス姐さんの言葉に、私は顔を上げる。


「最近魔王様の元気がないから、元気づけようと思って今回のイベント企画したんでしょ?」

「ベス姐さん…」

「その気持ちはきっと魔王様に伝わってるわよ。ご苦労様」

「ベス姐さん…!」


私はベス姐さんに抱きつく。


「でも…どうして魔王様、元気がないのかしら」


私の頭を撫でながら言ったベス姐さんの言葉に、私はパッと顔を上げる。


「そうなのだ! 聞いても『何でも無い』と繰り返すばかりで教えてくれないのだ! 一体どうしたというのだ魔王様は!」

「知らないわよ。でもそうね…、今度聞いてみようかしら」


 今度というのはいつなのか気になったが、ベス姐さんの言葉に私は一安心する。

しかし、このプロジェクトEの最中もずっと浮かない顔をしていた魔王様の事を思い出し、私は一抹の不安に駆られるのだった。

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