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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第四十一話「クリスティーナ・レイフォード」

 クリスティーナ・レイフォードは東の王国にその人ありと言われた領主の娘に産まれた令嬢だった。

2人の兄を持つ少女が初めて剣を握ったのは5歳の時だった。

初めて持ったおもちゃの木剣で、チャンバラ遊びをしてもらった少女は10コ上の兄の木剣を弾き飛ばした。

その数時間後には、剣の達人でもある領主の父の喉元にニコニコ笑いながら木剣を突きつけていた。

少女には剣の才があった。

剣の才だけではない。楽器を弾かせれば数時間でマスターし、勉強はいつも満点、スポーツでも上級生を相手にしても敵なし。少女は何をやらせても天才であった。

しかし少女が夢中になったのは剣だけであった。

朝から晩まで、暇さえあれば剣を振り続けた。

自分と戦ってくれる相手がいなくなってからも剣を振り続けた。

少女はいつしかこんな夢を抱くようになる。


「いつかおんなきしになって、まおうにまけて、てごめにされたい!」


 クリスティーナ・レイフォード、5歳。

少女は、物心ついた時から手遅れだった。




******************************




 王国に人喰いオーガが現れたのはクリスティーナが17歳になった時の事だった。

一晩で1000人を食い殺したオーガに人々は怯え、恐れ、混乱に陥った。


「私が退治しよう」


 王国最強となっていたクリスティーナは、王国一の刀鍛冶に作らせた聖剣を持ち鎧に身を包みオーガ退治に赴いた。

勝負は一瞬でついた。

オーガが手を伸ばす前にクリスティーナが首を刎ね飛ばしたのだった。

「鬼斬りクリスティーナ」の異名は、王国中に轟いた。

容姿端麗、才気煥発、剣の腕も立つ彼女は王国の人気者に……ならなかった。

強すぎたのだ。

あまりにも強すぎるため畏怖された。

国王の前での御前試合の相手は秒で敗れ剣を捨ててしまい、招待された他国の強者も泣き帰った。

その強さのあまりクリスティーナは孤立した。

そんなクリスティーナの元に魔王国誕生のニュースが届いたのは18歳の春だった。

すぐにでも魔王国に行こうとしたクリスティーナだったが、両親に止められ大学進学も決まっていた事もあり泣く泣く断念した。

両親は4年間で心変わりする事を期待したが、クリスティーナの心は変わらなかった。


「父上、母上。今日まで育ててくれてありがとうございました。では、行ってくりゅ!」


 22歳の春。クリスティーナは意気揚々と魔王国へ向かい旅立った。

そんなクリスティーナを両親は諦めの表情で見送った。

彼女の長年の願望は、毎晩の激しい1人遊びで家族全員に知られていたのであった。




******************************




「…フーッ、これで125体目か」


 魔法で動く土人形のゴーレムを聖剣で斬り捨てて、私はひと息つく。

魔王国に入ってから襲ってくる土人形達は先に進む度に手強くなっていき、さすがの私も手こずるようになっていた。


「中々楽しませてくれるじゃないか、魔王とやら」


 手練れの魔法使いがいるのか、それとも魔王の力なのか分からないがかなり強い。

これは……期待できそうだ!

私は意気揚々と魔王国を進み、遠くから見えていた魔王の城の門をくぐった。


「何だ貴様は! ここをどこだと……うぐうっ!?」


 門番をしていたトロルの首筋を峰打ちにする。

トロルは膝を突き…


「…てめえ! 何しやが……ぐうっ!?」


 膝を突きかけたが立ち上がってきたトロルにもう一発峰打ちを食らわせる。

トロルは音を立てて地面に倒れた。


「私の剣を受けて一撃で沈まないのか……強いな」


トロルのタフさに私は舌を巻く。これは……期待できそうだ!


「ゲイル!? てめえ、ゲイルに何しやがった!」


 門番のトロルが倒れている事に気づいたトロルが、さすまたを振り上げながら私に襲いかかってくる。

私はさすまたを躱し、そのトロルの首筋に2撃続けて峰打ちを食らわせた。


「ク、ソが……」


 こちらのトロルも音を立てて沈む。一撃では倒せなかっただろう。やはり強い。

門番達でこれなら……魔王とやらにも期待できそうだ!

私は意気揚々と広場を進み……怪物と出会った。

そのミノタウロスは大きな木材をノコギリで切り、組み立て、ヤスリをかけ、釘を金槌でトントンやっていた。


「あ、あの…」

「何だ!?」


 話しかけるとミノタウロスが私に気づきぶっとい声を上げた。

私は気圧されそうになりながらもミノタウロスに尋ねた。


「それは……何を作っておられるのですか?」

「ウム! 子供達のために椅子と机を作っておるのだ!」

「椅子と、机?」

「ウム! 学校で学ぶ子供達のためにな! モンスターの子供は種族により身体の大きさが違うから1人1人に合わせた物を作る必要があるのだ!」

「は、はあ……そうなんですか。頑張って下さい!」

「ウム! ありがとう!」


 ミノタウロスはニッコリと笑い、また作業に戻っていく。その手つきは手練れのもので、できあがっていく机と椅子も素晴らしい物だった。

あれが大工なのか…。あのミノタウロス、私より強いぞ? 非戦闘員でこんなに強いのか? これは……魔王とやらの強さにも期待できそうだ!

私は意気揚々と城の玄関を通り…


「ん? 何だこれは?」


 玄関横に置いてある謎の石像が気になった。

その謎の石像の頭には赤いボタンがついており、上にはこんな紙が貼ってあった。


『押すな』

「…」


聡明な私はすぐに気づいた。


「フン! 私は騙されんぞ! これは魔王の部屋への近道が現れるギミックだな!」


 私は迷う事なく石像の頭のボタンを押した。

そして…

プシュー!


「うわあ!? 何だこれは!?」


石像の口から黄色いガスが出てきて私はそれを真正面に浴びてしまう。


「か、体が痺れて…」


麻痺のガスだったのか、私は痺れてしまい前のめりに倒れる。


「いたぞ! 侵入者だ!」

「こいつがノッシュとゲイルをやった奴か!」

「いや、2人とも気を失ってただけだったぞ」

「そうなのか? でも許せねえ!」

「…ていうかこいつ、あの罠にかかったのか?」

「あれにかかった奴って初めてじゃないか?」

「スゴイのか間抜けなのか…」

「とりあえず縛り上げて魔王様の所に連れて行こうぜ」

「ああ、そうするか」


 駆けつけたモンスター達が、動けない私から剣を奪い鎧を外し後ろ手に縛り始める。

これは違う! こうなる事を望んでたけどこれは何か違う!

正々堂々魔王と戦った結果敗れて捕らえられたかった!




******************************




「オラ! きりきり歩け!」


縛られた状態で引っ張られ、モンスターやアンデッド達にジロジロ見られながら私は魔王の城を歩かされる。


「ハア、ハア…」


ご、ご褒美だ…! これぞ私が長年夢見ていたシチュエーション…!


「魔王様! 侵入者を捕らえました!」

「連れて来い」


 魔王らしき男の声が聞こえる。

魔王とやらが腰掛ける机の前にひざまずかされる。


「くっ、殺せ!」


逆光で魔王の顔が見えない。私は魔王に捕らえられた女騎士はこう言うものだという台詞を言う。


「この女1人か? 他に侵入者は?」

「おりません。たった1人で門番たちを倒して門を破り、堂々と正面から城内に入り、入口すぐの罠にかかっていた所を捕えました」

「すごいのかマヌケなのか… あれにかかった冒険者って初めてじゃないか?」

「くっ、殺せ!」

「こちらの被害は? 門番のモンスター達は何体死んだ?」

「いえ、全員峰打ちだったので死んでいません。気を失っていただけです」

「ほう、そりゃまた凄腕だな」

「くっ、殺せ!」

「…あの、何か他にしゃべれないのか」

「むっ、しゃべっていいのか? 魔王に捕えられた女騎士はこう言うものだと思っていたのだが」


 ここまで来て太陽が雲に隠れ魔王の姿が明らかになる。

黒いローブに身を包んだ茶髪の男だ。男、なのか? 随分若く見えるが…


「そりゃまたテンプレな… お前はどこから来たんだ?」

「東の王国だが… それがどうした?」

「随分遠い所から来たな…。まあいい、今から貴様をテレポートで送り返す」

「なぜだ!? そこは『魔王軍に捕まった女騎士がどうなるか分かってるよな? ゲヘヘ』となるのが普通ではないか!?」

「そりゃまたテンプレな・・・いや、しないから。そんな事しないから」

「そんな!? 私はそうなる事を夢見てここまで来たというのに! どんなお預けプレイだ!」

「・・・」


魔王とやらが、この子何言ってんの?という表情になる。


「お前魔王だろ! 魔王なら魔王らしく捕まえた女騎士にエロイ事をしろ!」

「しないよ」

「遠慮するな! 私は一向にかまわぬ!」

「遠慮するよ」

「何故だ!?」

「何故だって言われても……そういうのってよくないと思うし」

「なんだそのフワっとした理由は!? …というか貴様、人間ではないか?」


私は魔王の顔を確認して思っていた事を聞く。


「人間ですが何か?」


 魔王が答える。やっぱりか! この男、普通の人間だ!

いやでも、これはこれで……アリだ! 結構私の好みのタイプだ!


「いや…うん、てっきりものすんごい魔族の王かと思っていたがこれはこれで好都合だ。さあ! 私にエロイ事をしろ!そして私を嫁にするのだ!」

「しないよ!」


分からず屋の魔王が私に向けて杖を構え呪文を唱える。


「『テレポート』!!!」


…しかし何も起こらない。


「あれ?」

「私にテレポートは効かんぞ」


私は縛られたまま自慢げに胸を張って答えた。


「…何で?」

「私は魔法抵抗力が高いからな! 魔法の類が一切効かぬのだ!」

「ええー… マジで? じゃあ『スリープ』」

「効かん!」

「『スタン』」

「効かん!」

「『ミニマム』」

「効かん!」

「『テレポート』」

「効かん!」

「…『テレポート』! 『テレポート』!! 『テレポート』!!!」

「効かん! 効かん!! 効かん!!! というか貴様! どれだけ私を追い返したいのだ!」

「いらないからだよ」

「いらないから!?」


私はショックを受ける。そんな、せっかくここまで来たのに!


「何故だ!? 私は自分で言うのも何だが中々の美人でスタイルも抜群なのに!?」

「性格と性癖に問題があるからだよ。ところでお前、名前何ていうの?」

「私の名前はクリスティーナだ! さあ! エロイことをしろ!」

「しないよ」

「エロイことをしろ!」

「しないよ」

「エロイことをしろ!!!」

「しないよ!!!」


不毛なやり取りを終え、双方荒い息を吐く。


「くっ… 何故だ… 幼い頃から剣の腕を磨き、いずれ魔王に戦いを挑むも力及ばず敗北し捕らえられ、言葉にできないような卑猥な拷問を受けながらも心だけは魔王の物にならないよう抵抗しつつも最後は屈服し魔王に手籠めにされるという私の子供の頃からの夢が…」

「ちょっと何言ってるのか分からない」


 魔王は面倒になったのか、私を地下牢に放り込むようモンスターに命じた。

それから1ヶ月。

私は寝る時と風呂に入る時以外ほとんどの時間縛られた状態で吊るされた。

ずっと縛られてるのは退屈だったが交代で牢番に来ていたベス姐さんが話し相手になってくれた。

魔王は私がその内諦めると思っていたようだが、捕らえられている事に興奮してハアハア言ってたら牢番をしていたハカセが「もうイヤや!アイツハアハア言ってて怖いねん!」と言い出し根負けしたのとベス姐さんの「秘書にしたら?」という進言もあって私は魔王様の秘書になった。

それからもうすぐ3年、私の毎晩のラブラブアタックにも関わらず魔王様は落ちてくれない。

でも私は諦めない! 魔王様に手籠めにされるその日まで!!!

魔王軍幹部 趣味


魔王 絵を描く事・散歩・花を育てる事・読書・マージャン

クリスティーナ 特にない

ミノさん 模型作り

マキシム サウナ・マージャン・卓球

ティル 昼寝

ガーさん ピクニック

エリザベス 絵を見る事・花を愛でる事・読書・マージャン

ハカセ 仕事

クロカゲ イタズラ

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