第四十話「ポテトチップス」
「ポテトチップスが食べたいんだよ」
「…はあ」
「ポテトチップスが食べたいんだ、オリバー」
また魔王様がおかしな事を言い出した。
魔王様はウドンやらソーメンやらスシやら何やら聞いた事ない食べ物を作ってとたまに言ってくる。
「そのポテトチップスとやらは何なんですか? ポテトというからにはジャガイモかサツマイモですか?」
「サツマイモのもあるけど今回はジャガイモのだ。ジャガイモを薄くスライスして油で揚げて塩で味をつけた奴なんだよ」
「…はあ、それなら作れると思いますけど」
「ホント? じゃあ頼む」
「…はあ」
俺は魔王様に返事をし、さっそくポテトチップスとやら作りに取りかかった。
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「もうお前はクビだ! 出て行け!」
俺は狼人のオリバー。
こう見えて料理人だ。
しかしどう頑張っても見た目がイマイチな料理しか作れない料理人だ。
真面目に働いているのにこれまで数々の店をクビになった男だ。
俺が狼人である事も関係しているかもしれない。
狼人は人を襲わない温厚な種族だが、見た目が狼なせいかあまり人から歓迎されない。
モンスターが人を襲ったという事があってから、クビになってからはどこも雇ってもらえなくなってしまった。
「…ハア」
ため息しか出ない。俺は料理がしたいだけなのに。
そんな俺の前に、一枚の古新聞が飛んできた。
「…魔王国?」
大陸の端の廃城に、魔王とやらが住み着きモンスターやアンデッドを集めているという記事だった。
俺は、その魔王国とやら行く事にした。
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「狼人のオリバーさんだね。何かやってみたい事はある?」
「あの、俺…ずっと料理人をしてて…」
「へえ! 料理人かあ!」
「でも、無愛想で周りと上手くやれないし盛り付けも汚くてクビに…」
「いいよいいよ、誰だって苦手な事はあるさ! オリバー、ウチの大食堂で働いてくれるかい?」
「は、はあ…」
何だか気前のいい事を言う魔王様。
「早速腕前を見せて欲しい」というのでパスタを作ったら、「確かに見た目はイマイチだけど味はうまいよ!」と褒めてもらえて無事働く事になった。
そしてそこで、料理長のオークと出会った。
「オイラの名前はペンスだ。よろしく」
ひと目見て分かった。
コイツは悪い奴だ。
ペンスは俺をイビったり仕事を押しつけてきたりはしてこなかったが、たまにコソコソと魔王様の後をつけていたりしていた。
俺は魔王様に進言する事にした。
「魔王様、ペンスの奴が…」
「知ってる」
俺が言う前に、魔王様が答えた。
「でも今の所は何も問題起こしてないからね。多少サボったりつまみ食いする事はあるけど。でも何かされたら遠慮なく言ってね」
魔王様はそう言ったけど、俺は不安だった。
お人好しの魔王様の事だ。いざとなったらペンスを始末する事をためらってしまうかもしれない。
数年間は何も起きなかったので俺は一安心した。
けれども最近、ペンスがドス黒い感情を募らせている事を俺は感じていた。
「クリスティーナさん、実は最近…」
俺はクリスティーナさんに相談する事にした。
クリスティーナさんは俺にうんと頷いた後こう言った。
「ペンスを試す事にしよう。オリバー、協力してくれるか?」
クリスティーナさんはペンスに更生のチャンスを上げようとした。
そしてペンスは、そのチャンスをふいにし始末された。
俺は、別になりたくなかったけど料理長に昇格した。
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「魔王様、できたぞ」
俺ができたてのポテトチップスを盛った皿を差し出すと、魔王様がひとつ摘まんで食べる。パリっと小気味音がした。
「うん! これだ! これだよ! 完璧だよオリバー!」
「…どうも」
魔王様の喜ぶ顔を見て、俺もうれしくなる。
「…オリバー? もしかして作らされるのイヤだったりした?」
「いえ、全然」
表には出さねえけど。
「残業代はつけるからちゃんと申請してね? オリバーも食べなよ! 後時々作ってくれるとうれしいな」
「はあ、分かりました。いつでも頼んでください」
「…イヤだったらちゃんと言ってね? 遠慮しないでね?」
「いえ、別に」
俺は狼人のオリバー。魔王国大食堂の料理長。
料理を作るのが好きで、食べた人を喜ばせるのが好きな一介の料理人だ。
魔王軍幹部 苦手な食べ物
魔王 チーズ(ピザは好き)
クリスティーナ キノコ類
ミノさん 肉
マキシム 特にない
ティル 魚卵系
ガーさん 苦い物
エリザベス 乳製品全般(ピザは食べれる)
ハカセ 熱々の食べ物(猫舌だから)
クロカゲ 特にない




