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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第三十三話「キャンピングカー」

「キャンピングカーを作って欲しいんだよ、ハカセ」

「きゃんぴんぐかー? それ、何やねん?」


 また魔王さんがおかしな事言い出した。

魔王さんは時々この世界にはない物をウチに作れる?・作って?・でも働き過ぎないでね?と言って依頼してくる。まあそれがウチの創作意欲を刺激するんやけどな!


「キャンピングカーっていうのは動くホテルみたいな車で、こんな風にベッドになる座席とかキッチンとかトイレとかシャワーがついてる車で…

「フンフン」


説明だけだと要領を得ないので絵があるのは助かる。魔王さんは絵が上手いからな!


「作れると思うで。机とか内装とかはミノさんの手を借りる必要があるけどな」

「そうか! それはよかった!」

「で? 納期はいつにするん?」

「申し訳ないけど何とか今月中に作って欲しいんだ。月末の金曜日前くらいに…」

「フウン。まあ、できるけど…」


 3週間以上あるしウチやったら余裕や。でも魔王さんの依頼にしては余裕のないスケジュールだ。いつもは働き過ぎに注意してかなりゆとりのある納期を設定してくるのに…


「このキャンピングカー、何のために作るん?」

「え? …そりゃアレだよ。災害の時とかに役に立つと思って…」

「…」


 妙に歯切れの悪い魔王さんにウチはある嬢ちゃんの事を思い浮かべる。

災害に備えてっていうのもホントだろうが、もっと別の理由があるからだ。

ウチは誰のために魔王さんがキャンピングカーを作ろうとしてるのかピンと来た。




******************************




「邪魔するでー! ちゃんと予約したけどな!」

「はいはい。それにしてもハカセがウチに来るなんて珍しいわね?」

「髪伸びてきたからな! エリザベスの嬢ちゃん、よろしく頼むで!」

「はいはい。どんな感じにするの?」

「嬢ちゃんに任せるわ! 男前にしたってや!」

「はいはい」


 ウチの冗談には付き合わず、エリザベスの嬢ちゃんがエプロンをかけてウチの髪をカットする準備をする。

しばらく髪を櫛で解かれたり、霧吹きで濡らされたりする間黙っていたが、ウチは我慢できずに口を開く。ウチ、黙ってるの苦手やねん!


「なー、知ってるかエリザベスの嬢ちゃん。今魔王さんキャンピングカーいうんを作ろうとしてるんやで」

「きゃんぴんぐかー? 何それ?」

「動くホテルみたいな車やねん! キッチンもトイレもベッドもついてて、旅行先の外でも泊まれる車やねんて!」

「へえ…」

「今魔王さんに頼まれてウチが作ってんねんで! 思ったより大変やったけど納期には余裕で間に合いそうや! 月末の金曜には乗って出かけられるで!」

「…そう」

「魔王さん、誰と出かける気なんやろな?」

「………1人じゃない? 休みの日はいつも1人でドライブしてるし」

「それはどうやろなあ? 魔王さん『2人で乗れるくらいで』ってウチに依頼したんやで?」

「…」

「なあ、エリザベスの嬢ちゃん」

「…何かしら?」

「エリザベスの嬢ちゃんって、魔王さんの事好きやんなあ?」

「…っ!? な、何を言ってるのかしら? ハカセ…」

「ウチの目はごまかされへんで。クリスティーナの嬢ちゃんや他のトーヘンボク達と年季がちゃうからな。まあエリザベスの嬢ちゃんより魔王さんの方が分かりやすかったけどな!」

「…そう。うん、まあそうよね…」


 エリザベスの嬢ちゃんが、もうごまかせないと察したのか神妙な顔をして頷く。

普段接点はほとんどないし、関係ナイショにしてるみたいやけど、たまに話してる2人の様子見てたらピンと来たわ!


「…で? 誰かに言うつもりなの?」


 ハサミを構えたまま聞いてくるエリザベスの嬢ちゃん。怖いわ! どうこうする気はないやろうけどハサミ怖いわ!


「まさか! 人の恋路を邪魔してケンタウロスに蹴られる気ィないわ! それよりエリザベスの嬢ちゃん、キャンピングカーの事で聞きたい事があるねんけどええ?」

「何かしら?」

「こういうのが欲しいとか、ここをこうして欲しいいうのない? 希望があったら教えて欲しいわ」

ポケットから取り出したキャンピングカーの完成予定図と、魔王さんの絵を手渡すとエリザベスの嬢ちゃんがそれを受け取りジッと見る。

「………星」

「んっ?」

「ここの天井をパカッと開くようにできないかしら? それで寝そべりながら星を見れるスペース作れない? 星空を見ながら2人で過ごしたいの」

「それくらいちょちょいのちょいやで! 任しとき!」


エリザベスの嬢ちゃんの頼みを、ウチは薄い胸を叩いて答える。


「…そう、じゃあよろしく」


 エリザベスの嬢ちゃんは、恥ずかしくなったのか黙り込み、黙々とウチの髪をカットし始めた。

ええやんええやん、恋する乙女は素敵やん? そんくらいのワガママ言ってええわ。

ウチはより一層張り切ってキャンピングカー作りに挑む決意を新たにした。




******************************




「おお…、おおーっ!!! これは…想像以上だ!」

「せやろ? ミノさんと2人で頑張ったんやで?」

「座席広い! ゆったり過ごせる! ベッドも広い! それでいて予算内! 余計な機能もついてない! 頼んでないのにポップアップルーフもついてる!」

「星を見ながら寝そべるスペース付きなんやで?」

「完璧だよハカセ! いやー、てっきりまたロボットに変形する機能とか余計なのつけてるかと思ったけどよかったよかった!」


…付けようと思ったのはナイショやけどな。今回はエリザベスの嬢ちゃんの頼みを優先したったわ!


「それにしても……頼んだのは2人用くらいだったのに随分広いな? これなら4~5人は乗れるぞ?」

「広い方がええやん?」

「…まあその通りだし、予算内で常識の範囲内だからいいんだけどさ」


 広くしたのはゆったり過ごせた方がええやろという配慮もあるけど、もう一つの理由は黙っておく。

だって……2人に子供ができたら広い方がええやん?

かくしてウチは、無事キャンピングカーを魔王さんに納車した。

その月末の土曜日、魔王さんとエリザベスの嬢ちゃんが朝帰りしてくるのをたまたま朝早くに目覚めたウチは遠くから見かけた。

その前の日の晩は、星がきれいな夜だった。

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