第二十六話「魔王国VS連合軍」
『天啓が下った! 帝国と手を結び魔王国を滅ぼせとのお告げだ!』
「…アホか」
ヤバイ国に送り込んでいる密偵の報告通りの連合軍の依頼に、ワシは嘆息する。
な~にが天啓だ。自分達だけでは勝てぬから我らの手を借りたいだけだろ。ウチの国に何度も攻め込んでおいて調子のいい。
「しかし…悪い話ではないな」
魔王国とやらの強さがどれくらいか測るいい機会だ。花街で遊び歩いてふぬけている剣聖を叩き起こすいい機会にもなる。
ヤバイ国は約束を守らない国だが、借りを作っておいて損はないだろう。
「今回だけは……手を結んでやるとするか」
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「これはこれはパルミジャーノ・レッジャーノ7世殿! この度は誠にありがとうございます!」
「ああ、うむ、よろしく」
「我らと御国が手を結べば最強無敵! 魔王国など一瞬で滅ぼせましょう!」
「ああ、うむ」
…やっぱ手を結ばなきゃよかったかなあ。
暑苦しくてうさんくさいヒゲに長髪の俗物を適当にあしらいながらワシは思う。
今回の連合軍はヤバイ国の軍がどれほどのものか調べる意味合いもあったが、どう見ても寄せ集めの烏合の衆で士気も低い。兵器と軍備だけはムダに揃っておるがな。
しかしワシは兵士が雨合羽を着ていたり、大砲やら何やらに何かをかぶせてあるのが気になった。
「グムグムの王よ。そなたの国は以前魔王国に攻め込んだ時があったそうだな」
「はい」
「その時はどのような戦いになったのだ?」
「…戦いと言いますか、攻め込む前に天啓が下り引き返す事になったのですがな。いやあ、魔王も命拾いしましたな!」
ウソつけ。
コテンパンにされて逃げ帰ったくせにそれを認めない俗物が。
「その時は、ちょうどそう、この辺りで突然大雨が降り出しましてな」
「え」
俗物の言葉と同時に、空に黒い雲が広がり土砂降りの滝のような豪雨が我らに襲いかかってくる。
ちょっ!? 何このスコール!!? 息! 息できない! 苦しい!
降り続いた突然の大雨が止んだ頃には、ワシと軍の兵士達、それに大砲などがびしょ濡れになっていた。もう使い物にならないだろう。兵士達の士気もがた落ちだ。
「大丈夫ですか? パルミジャーノ・レッジャーノ7世殿」
自分は天蓋の下にいて濡れなかった俗物が、そんな事を言ってくる。
この阿呆が! 自分達だけちゃっかり対策しおって! こうなるならこうなると事前に伝えておかぬか!
「魔王の魔法とやらなのでしょうが、我が神通力も効きませぬでな。いやあ卑怯な手を使ってきますな」
ウソつけお前神通力なんかないくせに! このほら吹き! ペテン師!
…と、俗物に言いたいのをグッと我慢して尋ねる。
「…それで? この後は何が起こるのですかな?」
「次に砂嵐が襲いかかってきましてな」
俗物の言葉通りに、砂嵐が砂を巻き上げながらこちらに襲いかかってくる。
俗物の王は天蓋を閉めて閉じこもり、兵士達も雨合羽の前を閉じてうずくまり盾を構えて砂嵐に備える。
ちょっ!? ワシら! ワシらはどうすりゃいいんじゃ!
ワシとワシの兵士達は砂嵐の直撃になすすべなく巻き込まれ、服と顔は砂まみれ、装備はグチャグチャ、士気はだだ下がりになった。
「大丈夫ですか? パルミジャーノ・レッジャーノ7世殿」
自分は天蓋に隠れていた俗物が、そんな事を言ってくる。
この阿呆が! 自分達だけちゃっかり対策しおって! こうなるならこうなると事前に伝えておかぬか!
「魔王の魔法とやらなのでしょうが、我が神通力も効きませぬでな。いやあ卑怯な手を使ってきますな」
ウソつけお前神通力なんかないくせに! このほら吹き! ペテン師!
…と、俗物に言いたいのをグッと我慢して尋ねる。
「…それで? この後は何が起こるのですかな?」
「さあ? 我らが以前来た時はここで天啓が下って帰りましたからなあ」
この根性なしが!
大雨と砂嵐で心が折れたんじゃろうが! ぶっちゃけワシも心折れたわ! もう帰りたいわ!
「ですが此度の我らならこれから先にも進めまする! さあ、魔王国へと攻め込みましょう!」
俗物は元気に言うが、魔王の城はまだまだ先だ。
あまりにも遠すぎる魔王の城を眺めていると、何かが近づいてきているのが見えた。
「…何じゃありゃ?」
大きな氷の壁が、まっすぐこちらに向かってきてるのを見て、ワシは呆ける。
マジであれ、何?
「魔王の魔法でしょうなあ」
当たり前の事をつぶやく俗物。そんなん分かっとるわい!どうするんじゃ! このままじゃワシら、あの氷の壁に押しつぶされるぞ!
「ご安心めされい。パルミジャーノ・レッジャーノ7世殿。こうなった時のために我らは大砲を用意しておいたのですから」
俗物の軍が(自分達だけ)無事だった大砲を構えて氷の壁に放つ用意をする。
「放てー!!!」
一斉に放たれる大砲。
その砲弾が氷の壁に当たり………跳ね返された。
「王よ! 全然効いておらぬぞ!」
「ど、どどどどうしよう! 神様助けて!」
お前が神じゃないんかい!
「皆の者、どけ!」
そうこうしてると、我が国の剣聖がびしょ濡れ砂まみれながらも剣を引き抜き氷の壁へと進み出た。
剣聖さん来た! これで勝つる!
剣聖が剣を一閃。
氷の壁が真っ二つに断ち切られた。
「おお…」
「さすが剣聖!」
「我はこうなることが分かっておりましたぞ! 天啓が下っておりましたからな!」
ウソつけ! この俗物が!
しかし剣聖が氷の壁を斬り落としたのに安堵した次の瞬間。
後ろから新しい氷の壁が現れ剣聖を跳ね飛ばした。
「ぐわあああああ!!!!?」
氷の壁に吹っ飛ばされる剣聖。
そしてそのまま我らの前に迫り来る氷の壁がぶつかった。
氷の壁は我らに当たった瞬間に崩れ、氷の波になり我らを飲み込んだ。
我らは寒さに震えながら氷の中から脱出し、這々の体で国へと帰った。
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「魔王様、北の帝国の王から和議が来ております」
「和議? 何かあったっけ?」
「この前ヤバイ国と連合軍を組んで攻めてきたではないですか」
「ああ、この前追い返したアレか」
「『もうヤバイ国とは国交を断絶するから許して欲しい。二度と魔王国には攻めないと約束し、貢ぎ物も献上する』だそうです」
「まあウチには被害ないし、その辺が妥当な所か。それでOKだって返事しといてくれ」
「はい」




