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異世界転生したら魔王でした  作者: アブラゼミ
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第十五話「魔王の休日」

 魔王の朝は遅い。休日ならなおさらだ。

低血圧で寝起きが悪く、エリザベスにやさしく起こされ服を着てモーニングコーヒーを飲み、ベッドに戻って二度寝をし、昼近くまで寝ている。

寝だめは逆によくないと分かっていても、前世からの習慣が中々抜けない。

ようやく目が覚めて朝食兼昼食を大食堂で取る。


「やあオリバー! 今日のランチは何?」

「見りゃ分かんだろ。パスタだよ」


 狼人で副料理長のオリバーに尋ねると、無愛想に返される。悲しい。

適当に盛り付けられたパスタを食べてからは、基本的に外をブラブラする。

絵を描いたり、畑仕事をしたり、ドライブに行ったり様々だ。

魔王城の中にある菜園に向かうと、ケンタウロス達が耕運機を牽いて畑を耕していた。


「やあサウロ! 何か手伝う事はないかい?」

「魔王様! いえいえいえ! 魔王様のお手を煩わせるような事は何もございません! どうぞ! ご自分の菜園に行かれて下さい!」

「…」


 ケンタウロスのサウロに声をかけると、どうぞどうぞという風に畑の奥へ行くよう勧められる。

工場とか大工仕事とかでもそうだけど、『何か手伝おうか?』と言ったらいつもこんな感じだ。モンスターやアンデッドから距離を取られているように感じる。俺をこき使うのはクリスティーナとエリザベスだけだ。

まあいきなり社長が会社に来て、『何か手伝おうか?』とか言っても遠慮するだろうしな…

俺はトボトボと奥にある魔王専用菜園へと向かった。




******************************




 雑草だらけの土を鍬で掘り起こし、小石や雑草を取り除く。

葉っぱだけちぎっても雑草はまた生えてくるので、しっかり掘り返して根っこから取るのが大事だ。

デスクワークの身にはこれだけでも重労働だが、いい運動と気分転換になる。

軍手を取って頭にかぶった麦わら帽子を外し、首に巻いたタオルで汗を拭く。

掘り返した土の匂いが気持ちいい。生きている匂いだ。

以前サウロが『土起こしなら自分がやりますよ!』言ってきた事があるがこれは自分でやらないと意味がない。

自分の手だけで花を育てたいのだ。

土に肥料を混ぜ、十分に馴染ませたら等間隔に穴を掘り種を植える。

来週には芽が出て、2ヶ月後くらいに花を咲かせるはずだ。


「…っと」


 風に舞って飛んできた何かを手で掴む。

ゴミだ。空になった魔王軍スナックの菓子袋だ。


「まったくもう。ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てろって言ってるのに」


 手に持ったゴミを、魔法で燃やそうかと考えて思案する。

せっかくだから、このゴミを何かに変えてみるかな。

あの漫画の主人公の能力みたいに、『ゴミを木に変える魔法』なんてどうだろう。

手に握った菓子袋に、魔力を込めて土に押し当てる。

手の中で緑色の光が光り、見事菓子袋は苗木になった。


「…ま~たつまらん魔法を作ったようじゃの」

「ティルさん」


振り返ると、どこからともなく現れたリッチーのティルが呆れ顔で立っていた。


「魔法を作るなんて、ホイホイできる事じゃないのに簡単にやりおって。その割にいつもつまらん魔法ばかり作りおる」

「つまらん魔法じゃないさ。『ゴミを木に変える魔法』だよ」

「つまらん魔法じゃよ。魔王なら世界を滅ぼす魔法でも作ったらどうじゃ?」

「いいよ、それこそつまらない」


この美しい世界を滅ぼすなんて、それこそつまらない。


「『花を長持ちさせる魔法』に『ムダ毛を永久脱毛する魔法』、『床をキレイにする魔法』に『ゴミを木に変える魔法』に『壊れた物を元通りにする魔法』………どれも魔王が作った魔法とは思えんのう」

「いいの、どれも俺が作りたくて作った魔法なんだから」

「ヒャッヒャッヒャ、誰のために作った魔法なのかのう」

「…」

『契約』について知っているのはティル1人。


からかわれるのは慣れているし、特に何とも思わない。


「それよりティルさん、何か用?」

「ヒャッヒャッヒャ……『奴』がお前さんの後をつけておったぞ。ワシが姿を見せたら『ただ散歩してただけですよ~』という風を装ってどこぞへ逃げおったがの」

「…そうか」


 改心してくれればと思ったが、どうやら改心する気はないらしい。

直接的な証拠はないので糾弾できないが、間接的な証拠から見て『奴』はクロだという事で間違いないだろう。


「まあ改心してくれるのが一番なんだけどね」

「ヒャッヒャッヒャ! 随分甘い魔王様じゃのう」


 自分の命を狙い続けている相手に甘いと思うが、できれば始末せずに済ませたい。

殺してしまうのはやっぱりよくないと思うしね。


「ヒャッヒャッヒャ! …まあお前さんの好きにするがよい。何が起きてもワシは知らんがの」

「とか言ってわざわざこんな風に見張りや忠告してくれるくせに、リッチーがツンデレても可愛くないぞ」

「ヒャッヒャッヒャ! …ツンデレって何じゃ?」

「何でもない」


 首を傾げるティルに手を振って、俺は軍手を外し作業を終える。

いつの間にかもう夕方だ。

晩飯の後は本でも読んでゆっくり過ごすか。

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