『TS美少女は魔法の力でぐうたらしたい(二次短編)』
『TS美少女のある1日。』
この小説は二次創作です。湊みらい様の『TS美少女は魔法の力でぐうたらしたい』を読んでから読むのをおすすめします。
『私』が目覚めると、いつもの天井が見えた。 窓から朝日が差し込み、最高の目覚め! こんなによく寝たのは久しぶりだなぁ。
えっ? 『私』って誰だよって? やだなぁ、私は、ユナ。ユナ・ナンシィ・オーエン。この森に住んでるただの魔女さ。
ええっ!? 本当に知らないの!? ちょっとショックだよ……。 それじゃあ……いや、説明が面倒くさい。
魔法創造!ナレーション魔法! アンド、発動。 そして私はその間に朝ごはん食べてくる!
◇
───魔法を創るのはもう手馴れたもののようで、彼女は朝起きてすぐめちゃくちゃな魔法を創って朝ご飯を食べに行ってしまったわ。
あ、私?私はヴェスタ。別の世界の女神なのだけれど、ナレーション魔法とやらで無理矢理呼び出されちゃったの。私の事見たことあるんじゃないかしら? えっ、ない? ショック……。
ひとまず私の事は置いておくとして、この世界は【湊みらい】様の『TS美少女は魔法の力でぐうたらしたい』という小説の世界の中のようね。つまりこの短編は二次創作なので、もし読むなら原作を読んでからの方がいいと思うわよ?
そしてあの子は、自称魔女の『ユナ・ナンシィ・オーエン』。 周りからは『ユナ』と呼ばれることが多いみたいね。 自称と言っても彼女は計り知れないほどのチカラを持ってるようだわ。筋力や身体能力は年相応……どころかこの世界の同年代より圧倒的に低いみたいだけど、その点は魔法で補ってるのね。
……それにしても、彼女の魔力は凄いわね…。 この私を呼び出すなんて……。 まあ、あっちでの出番はしばらく無いみたいだから配神以外はすることも無くて暇してたし、丁度いいかもしれないわ。
今彼女が食べているのは……ベーコンの乗った目玉焼きと納豆、それとご飯と味噌汁。 なんか軽く和洋折衷な朝ご飯って感じが元日本人って感じしていいわね。
毎朝自炊してるのかしら……。 うちのハンバーグ狂の巫女ちゃんも見習って欲しいわね。 えっ私? 私の事はいいってば!
なんだかすごくゴキゲンな雰囲気ね。 今日はなにか予定があるのかしら? あら、急に立ち上がって…えっちょっと待って!私まだ話したいことg
◇
……なんか面倒だったから適当にナレーション魔法なんか作っちゃったけど、ずっと頭の中によく分からない自称女神な女の人の声が聞こえてるのちょっと不快だったから魔法解除しちゃったよ。 あれ? ヴェスタって名前だれかから聞いたような……?
気にしててもしょうがない。 最低限私のことは説明してくれたようだし全部がぜんぶ無駄だったということはないだろう。
今日は待ちに待ったあの日が来た、早速着替えて出かける準備をしよう!
◇
「あっ! ユナおねえちゃん! きてくれたんだ!」
「せっかくマーシャちゃんから招待されたのに行かないなんて酷いことは私はしないよ」
「えへへ、おねえちゃんだいすき!」
私は今、フィネス村という村に来ています。 そして第一村人発見! ………冗談。 何度が来たことあるし、会ったこともある女の子だ。
現に私のことを朝から待っていたように見える。 黄色のワンピースに桃色の花を編んだ髪飾りをしていてとてもかわいらしい。 今日のために沢山おめかしして用意してたのかな?
いくら約束してたと言っても村の入口で待ってなくなっていいのに。 隣の番兵さんもちょっと引きつった顔をしている。
「マーシャちゃん、あっちの方からガヤガヤと沢山の声がするけど……」
「うん!あっちだよ、きて! ユナおねえちゃん!!」
「あっ待って! ……元気いっぱいだなぁ」
私がなにやらいつもより騒がしい村の中心部を指さしてマーシャちゃんに尋ねると、活発な少女特有の太陽のような笑顔で風と共に走って行く。
私も負けじとマーシャちゃんに着いていこうとするけど、何しろ私は普段家でぐうたらしているから運動不足。 全然追い付けないのは流石に恥ずかしいのでちょっとだけ魔法でズルしちゃおう。
「……移動速度上昇、ファスト・ムーブメント! あとついでにいつもかけてる身体強化も脚に強めに…うん、これくらいで」
「ユナおねえちゃーん! うごかないでどうしたのー!? おなかいたいの?」
「大丈夫、今い……うわぁ!」
「ユナおねえちゃーーーーーん!!!???」
バキャッッッ!!
───移動速度上昇を強くかけすぎた私は、心配するマーシャちゃんを軽く通り過ぎて、お店に立てかけてあった村祭りの看板に激突してしまったのだった。
あっそうそう、私はこのあと普通に気絶するけど言い忘れたことが。 今日はフィネス村の村祭りの日! 前からマーシャちゃんから誘われてて、ずっと楽しみだったんだ……あっ、もう意識が
◆
「ハッ! ……今何時!?」
「っ! ユナおねえちゃん!! やっとめがさめたんだ! よかった………。いきなりとんでいっちゃった」
「ふぁ、マーシャちゃん何かあったの? ここは……」
目が覚めると見覚えがない天井だった。 いや、ここはマーシャちゃんのお母さんがいたベッド…?
そうだ思い出した、かけた魔法が強すぎたせいで勢い余って看板に顔面からぶつかってそのまま気を失ったんだった……。
ふと窓を見ると、日が沈むのが見える。 ……日が沈んでる…?
…
………!?
「あっ…ああ……」
「ユナおねえちゃん!? どうしてないちゃうの? まだいたい…?」
「そ、そうじゃなくて……せっかくマーシャちゃんと約束してた村のお祭りなのに、一日が終わっちゃうよ…ごめんなさい……」
ずっと楽しみにしていたであろう少女にがっかりさせてしまう……。 こんなことならいっそ、時間魔法を造って……。
「あれ、おまつりはよるになってからだよ」
「……え!?」
「はなすののわすれちゃってた。さっきはね、むらのあんないをしようとしてたんだよ?」
「そ、そうなの!? ガヤガヤしてたのは…?」
「よるのじゅんびしてたよ、みんなにもユナおねえちゃんにあってほしくて!」
全部私の早とちりだったみたい。 加速する魔法だけに……なんでもない。
よかったぁ〜〜〜!
目が覚めたと思ったらいきなり泣き出す私を見たマーシャちゃんは困惑しても仕方ないだろう。変に気を使わせちゃったかな……?
「それじゃあマーシャちゃん、お祭りに行こう!」
「だいじょうぶ? もうどこもいたくない?」
「ううん、まだちょっと鼻が痛いけどこれくらいなら…」
鼻が痛かったので軽く治療魔法をかける。 するとすぐに痛みが引き、もういつも通りだ。
「やっぱりユナおねえちゃんはすごい! じゃあ、もうとんでっちゃわないように、てをつないで!」
「えっ!? は、恥ずかしいよ……」
「つないでくれないの…?」
マーシャちゃんが悲しそうな顔でこっちをみてきてる。 ……一緒に歩いたりお話したかったのに、私がいきなりすっ飛んで行ってそのまま夕方まで気を失ってたんだもん、心配なのだろう。
「うぅ………わかったよ。 しっかり私の手を離さないでね」
「えへへ…おねえちゃんだいすき!」
◇
あのあと私は……予定通りとは行かなかったけどようやくマーシャちゃんと約束の村祭りを楽しむことが出来た。
知らない踊りだけど、ノリのままに体を動かしたり美味しいお肉も食べた。
マーシャちゃんもあれからはいつものようにずっと笑顔で、私と一緒に祭りを満喫したのだった。
◆
───ふぅ……。こんなもんかな。
えっ? これで終わりって? いやだなあ、『私』はただあの魔女の1日を覗いてただけだよ。
特殊な1日だったけど、『私』の所の子と同期みたいなものだって思ったらナレーション魔法とやらが解除されてもついつい気になっちゃってね、干渉は出来なかったけど、覗くくらいならねぇ。
TS要素はどこだって? ………何を言ってるのさ、たまたまとある1日が性に関係する日だったってことある? あくまで『私』が見てたのはなんでもない彼女の日常。 そういうのが見たいんだったら本編を見に行くといいよ。
あれ、流石にもう限界? 時間切れか。 また会うことがあったら『私』を覚えててくれるとありがたいな。
私は暖炉の女神、ヴェスタ。 彼女のなんでもない1日にも暖かな祝福があらんことを……。