↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みすぼらしい公爵家三男は、兄の婚約者に気に入られる  作者: さとう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/13

アイレイウス家の茶会

 茶会に相応しい服に着替えた。だが、髪やべっ甲縁眼鏡はそのままだ。

 テスラは、グレイハルトの髪をいじろうとして拒否される。


「……グレイハルト様。髪は」

「い、嫌だ。目元が見えるとか、恥ずかしい」

「あの……せっかくいい服を着ても、髪型や眼鏡で台無しですよ。そのべっ甲縁眼鏡はやめて、フレームなしの眼鏡を掛けましょう。それと髪を切らないと」

「……嫌だ」

「はぁ……わかりましたよ」


 テスラは諦め、手土産に用意した有名店のケーキをグレイハルトへ。

 そして、黄色い薔薇の花束も持たせた。


「いいですか、女性の主催する茶会に招かれたら、手土産は必須です。婚約者などの場合はアクセサリーなどでもいいのですが、今回の場合、菓子や花束がいいでしょう」

「なるほど……」

「では、参りましょうか。ちゃんと挨拶は覚えてますね?」

「ああ。『アイレイウス令嬢、ご招待ありがとうございます』だろ?」

「ええ。くれぐれも棒読みにならないよう」

「わかってる。取材だからね」


 グレイハルトとテスラは馬車へ乗り込み、アイレイウス公爵邸へ。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 アイレイウス公爵邸のテラスでは、エリが茶会の最終確認をしていた。

 テーブル、クロス、椅子は新品の物へ。天気がよかったので中庭に準備をしたのは正解だった。アイレイウス公爵邸自慢のローズガーデンに咲き誇る薔薇は、今日も美しい。

 すると、ドレスに着替えたエリーゼがやってきた。


「お嬢様。準備は完璧です」

「ご苦労様。そろそろ到着ね……ふふ、楽しみだわ!」

「お嬢様、くれぐれも間違いを起さないようお願いします……グレイハルト様は、リツハルト様の弟君。本来なら二人きりで会うということ自体、好ましくないのですから」

「今日くらいいいでしょう? いくら仕事といえ、婚約者を差し置いて別の令嬢とダンスを踊るリツハルト様には、いい薬だわ」


 正直なところ、単なる当てつけでもある。

 リツハルトが悪いわけではないのは百も承知だが、ちょっとだけ意地悪したかった。それに、作家グレイハルトの話も聞いてみたかった。

 すると、アイレイウス家の執事が中庭へ。


「お嬢様、リトハルド公爵家より、グレイハルト様がお越しになりました」

「通してちょうだい」


 中庭に案内されたのは、着飾ったグレイハルト、そして離れたテスラだ。

 着飾ってはいるのだが、べっ甲縁眼鏡に目元まで隠れた髪の毛は相変わらずだ。 

 エリーゼは微笑み、スカートをちょこんと上げて一礼した。


「エリーゼ・アイレイウスの茶会へようこそ、グレイハルト・リトハルド様」

「お招きありがとうございます。こちらをどうぞ」

「あら、うれしい」


 花束を渡し、ケーキの箱をエリへ渡す。

 席に案内され座り、エリが淹れた紅茶を飲む……とても美味しかった。

 グレイハルトは、周囲を見渡す。


「素晴らしい中庭ですね。アイレイウス家のローズガーデン、噂以上だ……」

「ふふ、お母様自慢の中庭なの。と……そろそろ堅苦しい話し方はおしまい。グレイハルト、今日はいろいろ聞かせてもらうからね」

「え、な、何を?」

「作家としてのあなたに決まってるじゃない!」


 さっそく、エリーゼの質問が始まった。

 どうして作家になったのか、おすすめ作家や物語、知り合いの作家からサインはもらえないか……と、取材をするつもりだったのに、質問攻めでグレイハルトが喋れない。

 だが、面白かった。


「でさ、クレイステネス先生の『愛する人へ』の恋愛描写なんだけど、あれって女性としての価値観から見た恋愛論なのよ。グレイハルト、クレイステネス先生ってもしかして女性? 私の予想だと三十代前半の未婚女性……貴族じゃないわね。平民だと思う」

「驚いた。あたり……あ、今のなしで! 作家の個人情報は秘密なんだ。サインくらいはもらえるけど、それで勘弁してくれよ」

「あはは! じゃあそれで勘弁してあげる。それと、あなたの書いた本も読んだわ。『賢者シリーズ』! ふふ、面白くて読みふけっちゃった」

「そ、そうかい? ありがとう」

「うん。ねぇグレイハルト、次に書く作品の構想とかあるの?」

「もちろん。今、書いてるのは───って、それは言えないよ。あぶないあぶない」

「ああ、惜しいわね。もう少しだったのに」

「か、勘弁してくれよ……」

「あははははっ」


 取材のつもりだった。

 だが、コロコロ変わるエリーゼの笑顔に、いつの間にか普通に会話できるようになっていた。

 本の話は、とても楽しい。

 今までは、グレイハルトとテスラ、編集長くらいでしか話さない。

 グレイハルトの世界に、エリーゼが加わった。それだけで違う。


「あー楽しい……ね、グレイハルト。あなたのおススメ本、読んだわよ」

「え、何をだい?」

「ララティア・ベルリオーズの短編集。素敵な恋物語ばかりだったわ……」

「ララティア・ベルリオーズは、自らが悲恋を経験したことから、物語の世界ではハッピーエンドが多いんだ。初心者向けの恋愛小説だよ」

「あなたは、書かないの?」

「え?」

「恋愛小説」

「……えっと、恋愛小説はいずれ挑戦してみたいけど、その……」

「ふふ、恋愛してみないと書けないわよね。ララティア・ベルリオーズみたいな作品は」

「ま、まぁね」


 意味深に笑うエリーゼ。

 もしかして、からかわれているのだろうか。

 でも、にっこり見つめてくるエリーゼから、目が離せない。

 

(まてまて、兄上の婚約者だぞ……!?)


 グレイハルトは内心焦る。

 これ以上、踏み込んではいけない気がした。

 初めて話の合う女性と仲良くなりすぎるのはまずい。このままでは、ララティア・ベルリオーズのような……と、ここまで考える。

 すると、中庭にアイレイウス家の執事が入ってきた。


「お嬢様、来客が」

「来客? 今日は約束していないはずだけど」

「そ、それがその」


 執事は、グレイハルトをチラリと見る。

 エリーゼは、少し強い口調で言う。


「構わない。言いなさい」

「……はい。ヘルマン侯爵家のプリメラ様が、お嬢様に謝罪がしたいと参られました」

「……は?」


 意味が分からず、エリーゼは首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


お読みいただき有難うございます!
最強種族『竜人』の落ちこぼれ少年~最強の力に覚醒し無双する~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』、『評価』、『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。