不良児
僕が中学生の頃、僕の学校にはいわゆる、世間一般で言う不良児に属すだろう、一人の少女がいた。
彼女は授業中だろうと、なんだろうと、常に読書をしていた。それも、誰に隠す事なく堂々と読書。読書の幅は多種多様で厚い辞書から、漫画、雑誌までに及んだ。
当然、先生達も初めの頃は「授業を真面目に受けろ」「先生の話を聞きなさい」などと、注意の声を上げたり、本を取り上げたりして試行錯誤していたらしいが、しかし、それもいずれ相手に直す気が無いと分かれば、その警鐘の声も無くなった。
僕は「なるべく、関わりたく無いな」「真面目に受けろよ」などと思っていたけれど、多分、僕以外の皆も同じ思いだったと思う。皆がその子のことを、影で《不良児》だの、《馬鹿》だのと愚痴っていたのを僕は知っている。
まあ、仕方ないだろう。だって、彼女の机の中には、教科書どころか、筆記用具すら無く、あるのは種々様々の書籍だけなのだから。第三者から見れば、それは勉強する気の無い子供と映って当たり前。尚更、中学生の僕達なら普通はそう考えるしか無いだろう。
その上、彼女は成績も悪いらしかった。僕は実際に彼女の成績表を見たわけでは無いけれど、風の噂で、『下から数えた方が早い』と言われ、先生からも「高校に進学出来なくなるぞ」と喚起されていた辺り、嘘では無いようだった。そして、彼女は実際に、高校には進学する事なく、義務教育を終え、中卒で僕たちの前から姿を消した。
僕達も彼女の存在を、長く覚え止める事はなかった。
そして、それから五年の歳月が経った。
僕は大学生になり、それぞれがそれぞれの道を歩み進める時期。二十歳。
そんな時、僕は成人式帰りの同窓会で懐かしの、ある一人の少女の話を聞く事になった。
これは僕の旧友から聞いた話だけれど、どうやら彼女は今、遠くの土地で作家としての人生を全うしているらしかった。十七才にして、作家としてデビューし、今や執筆に日夜勤しんでいる。充実した人生。
それはもしかすれば、今の僕よりもずっと、充実した生活なのかも知れない。
そして、それらの結果を踏まえ、今僕は思うのだ。
その子は果たして本当に、学校では何も学んでいなかったのかと。
学ぶことが嫌で、勉強が嫌いで、ただひたすら現実逃避をしていただけだったのかと。
不良児と僕たちが言っていい程の存在だったのかと、
僕は今更、考えるのだ。
学校の休み時間の合間を縫って、一日で書き上げた短編小説です。
誤字脱字、重複表現etc...多少の粗があるのはご了承願います。
助言などは、是非是非、今後の参考になりますので言っていただけると、こちらとしても助かります。
貴重なお時間を、自分の短編小説に割いていただき、本当にありがとうございました。