名も無き物語
昔、こんな本があった。
あるところに、悪の王子と正義の王子が住む街があった。
悪の王子は、おいしいものが大好きで、街の人から奪って食べてしまったり、いたずらをしたりした。街のみんなは悪の王子を避け、嫌いになるものもいた。
悪の王子のお城には、悪の王子と悪の姫がいた。姫は、人に悪いことをしてはいけない。と、王子に教えた。王子は最初の頃、姫に言われたことをなおすことができず、それはすぐ、姫に見つかってしまい、王子はその度に怒られた。姫は、王子が悪いことをする度に何度も怒った。しかし姫は、悪の城を出て行ったりしなかった。それどころか、悪いことをしないように、王子と一緒にいた。2人は、お料理をしたりお食事をしたりした。
王子は、今まで積み上げてきてしまった悪事のせいで、友達がいなかった。だから、側で笑ってくれる姫が好きになっていった。姫が欲しいものは手に入れ、大事にラッピングをしプレゼントした。食べたいと言ったものは、どこにあるか歩いて探した。雨が降っていても、途中で街の人に見つかり石をぶつけられても、姫が自分のために見せてくれる笑顔が見たかったから、どんな時も王子は努力を惜しまなかった。
ある時、悪の姫は眠っていた。しかしその手には、正義の王子が写る写真があった。それを見た悪の王子は、悪の姫が正義の王子に恋をしたんだと、部屋に閉じこもった。悪の王子は、悪の姫が望むことは、叶えてあげたかった。でも、それが嫌だった。悪の王子は自分がどうしたらいいかわからなかった。
悪の王子は、正義の王子と話をするため、正義のお城へ向かう。しかし、そこで見かけるのは、正義の王子と正義の姫が2人で歩いているところだった。帰ってそれを悪の姫に伝えようとするが、正義の王子が写る写真を嬉しそうに見つめる悪の姫に、悪の王子は言えなくなった。
悪の王子は、悪の姫を城から追い出した。悪の姫は突然の出来事に、森の中で泣いた。その泣き声を見つけたのは、正義の王子だった。
そして、悪の王子は正義の姫をさらった。
正義の王子は正義の姫を取り返すため、悪の王子のお城を訪れた。そのとき、正義の王子の隣には悪の姫がいた。
戦いの結果、悪の王子は敗れた。正義の王子は剣を突きつけ、そしてその剣の先は、悪の王子の心臓を貫いた。
正義の姫は、正義の王子の元へ戻り、悪の姫は、正義の王子の提案でこの後も正義の城で暮らした。
街は、平和が訪れたと喜んだ。