機能別統合軍(戦略軍を例に)
機能別統合軍については資料がそもそも少ないため、推測が多く含まれます。
地域別統合軍は、単に各地域にいる4軍(陸海空軍、海兵隊)を束ねただけなので、説明も比較的しやすいのですが、機能別統合軍は与えられる任務ごとに部隊を持っているうえに、高度な機密に関わる任務を担っている関係か、そもそも話が外部に漏れてこないので、説明自体がしにくいです。
原著としている統合軍参謀マニュアルも、そもそもが冷戦初期に書かれた文書ですので、機能別統合軍の例が戦略航空軍団(SAC)という今では存在しない組織のことしか書かれておらず、この分野では参考にはなりません。
といいつつ筆者の記憶の範囲と、その唯一の事例である戦略空軍の発展形といえなくもない戦略軍を参考に機能別統合軍の解説を無謀にもしてみます。
設立は1992年。実質的に戦略航空軍団(SAC)の後釜として組織されました。
最大の任務はアメリカ軍が保有しているすべての核兵器の統合運用です。設立前は、海軍が原子力潜水艦に搭載している核ミサイルを、空軍は戦略爆撃機搭載の核弾頭と地上配備の核ミサイルをそれぞればらばらに管理していました。
冷戦の終結とともに核戦力の戦略的価値は低下傾向にあり、アメリカ軍では核ミサイル搭載原子力潜水艦の更新も、戦略爆撃機の更新も遅れています。大陸間弾道ミサイルに至っては、ロシアとの軍縮条約の絡みとはいえ新しい方のミサイルを廃棄し、1970年代に運用開始されたミサイルをいまだに使っています。
中国が核戦力を増強しており問題視されていますが、アメリカ軍の核戦力には遠く及んでおらず、更新予算を春沢に確保するには至っていません。
そんな戦略軍の参謀職ですが、わかりません。
核兵器という国家最高機密に属していそうな兵器を管理している統合軍であり、そのほとんどが開示されていません。わかるのは配備されている兵器の一部と、配備されている基地の一部です。
例えば核ミサイル搭載原子力潜水艦は、戦略抑止パトロールと呼ばれるものを日々遂行しており、核ミサイルをいつでも海面下から発射できるように備えていますが、その具体的な内容は一切公開されていません。一説では乗組員や家族にすら説明されず、行先は艦長と副長のみが知っているともいわれています。そうした計画の立案もおそらく戦略軍の任務であり、まさに戦略軍参謀の職責など推測されますが、詳細は闇の中です。
単一統合作戦計画というアメリカ軍の核戦争計画があり、その作成にも関与しているかもしれませんし、していないかもしれません。
ほかの機能別統合軍
特殊作戦軍:超有名なネイビーシールズや、グリーンベレーなど、4軍の特殊部隊を配下に持ち
ますが、詳細はやはり秘密のベールです。
輸送軍:アメリカ軍は全世界に展開している関係上、その補給や輸送も全世界に及びます。そう
した輸送を一手に引き受けています。
宇宙軍:以前は戦略軍の一部でした。宇宙戦を担当していますが、いまのところ映画の中でしか
起きていないので、基本的な任務は人工衛星の監視です。今後、重要視されるはずです。
サイバー軍:こちらも戦略軍配下から独立しました。サイバー戦を担当します。戦略軍配下にいた
頃を含めても創設から12年しか経過していませんが、サイバー空間での防衛や
場合によってはサイバー攻撃も担当するだろうことは想像できます。