参謀の仕事
統合軍参謀について説明する前に、参謀という立場についてちょっと解説します。
参謀とは、一言でいえば司令官を補佐する人です。
その補佐範囲は広く、司令官の行う業務のほとんどすべてに及びます。
ちなみに副官という肩書もありますが、こちらは参謀とは異なり個人的ないわば秘書に近い仕事を行います。
そんな参謀ですが、現在の軍隊がそうであるように担当範囲が広すぎて一人では当然務まりません。
また、現代国家は民主主義国家で、選挙で選ばれた普通の人が、国家元首かそれに近い立場で全軍を指揮する形になっています。退役軍人など軍務に強い人が就くこともありますが、そうでない人の場合もあり、まして国軍全体を指揮するともなれば、一つの組織として最高司令官を補佐する組織が必要となりました。
それが参謀本部であり、自衛隊の統合幕僚監部です。
参謀本部の組織は、人事、情報、作戦、補給、企画、通信がメインです。
国ごとの違いも多少ありますが、組織構成はどこの国でも似ています。
人事は軍全体の人事計画を立案します。一般企業の人事部とそう大きな違いはありません。
昇進、配置転換、人員計画、懲罰、映画でよくある軍法会議なんかも担当します。
情報は軍事作戦の要です。情報収集だけでなく、保全、防諜も担当します。
作戦。作戦計画の立案、調整を担当しており一番見栄えする部署です。映画でよく登場する作戦指揮所の管理も担当しています。
補給 お腹が空いては戦はできません。まして、現在の軍隊はプロフェッショナル集団と化しており、単純に水や食料を補給すればそれで終わりとはなりません。イージスシステムのような高度なシステムも故障しますしメンテナンスが必要です。
企画とは、作戦部と内容はほぼ同じですが、作戦部と異なりある程度長期的な作戦計画を検討します。特殊部隊を使用する作戦の立案も行います。
通信は、軍隊がコンピュータ、ドローン、レーダー等を高度に連結して戦うために必須なものです。戦車や戦闘機すらコンピュータがないと満足に戦えません。
逆を言うと、中世ヨーロッパや戦国時代のような、人や馬で伝令を走らせる時代には、重要ではありますが専属の部署を置くほど複雑ではありません。
従軍牧師、広報、会計、法務、憲兵も国によっては参謀本部内に置かれます。
このように、参謀といっても職務の範囲は非常に広範囲です。
参謀本部全体を取りまとめるのが参謀長、参謀総長と呼ばれる人であり、自衛隊では幕僚長と呼ばれています。民主主義国家の軍隊では、最高司令官は民間人ですので、最高位の軍人が就くポストになります。
参考文献
参謀 児島襄 文藝春秋