第2話 建国の日 いえ 修道院創立の日です
13歳の私が 敵陣の中で領地経営をするのはまず不可能に近い。
しかも私は女
「結婚」を掲げて支配下に置こうと迫りくる男どもをことごとく追い払うのは大変だ。
1対1の武闘試合や頭脳戦では男どもに負ける気はしないが
体格の良い暴力バカに囲まれては 負けはしないが勝てる気もしない。
それやこれやを考えて、私は尼僧院設立宣言を出したのである。
館の中でただ一人、父方の一族である荒くれ男どもに取り囲まれ
館の周囲を 父の配下の武装兵どもに取り巻かれた状態で「尼寺へ行け」と迫られた時に。
そして領地すべてを修道院とし私が院長となるがゆえ、男どもは総員退去するようにと切り返したのだ。
(ちなみに デッド地方に3年ほど籠っていた間に、数人いたはずの女どもは全て露と消えたらしい。
もともと子供ができても産むことを望まず、生まれた子も捨ててしまうような連中であったから
弱肉強食で好き勝手に生きて死んでいくそんな仕方のない奴らであった。)
母方の一族が住むスレイン国は、この地より騎馬で約1か月の距離にあり、知的援助は望めても 武力援助など到底無理。
ならば各国が権威を認める「教会」の威光を利用して、我が身と我が領地を守るまで。
(ほとんで勢いで宣言、もしくは はったりですね、これは)
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「な なに お前のような小娘が修道院長になれるはずがない」 口々にわめきたてる男達
「私が10才で修士号をとり 現在博士課程に在籍中であることはデッド地方のみならなずリンド国スレイン国においても周知の事実」
「そして デッドが1国として認められるためには教会の建立が必要であり、
未だデッドに教会が設立できないのは、デッドの人間の誰一人として土地や資金を寄進しようとせず、聖職者もまたデッドに来ることを拒否しているからであることは、皆さまご存知のとおりです。」
「私は学院で高位聖職者の資格も取得しており、我が領地に修道院を設立することは すでにスレイン国・リンド国より認められております。
ですから私は 我が領土すべてを用いて修道院を設立し運営することをここに宣言します。
皆さまにとっても 野蛮な山賊の根城と言われてい来たデッドに隣接するこの地に信仰の場が設けられ、信仰者が集うことにより、もはや蛮族ではないとスレイン国・リンド国の国人の前で胸を張ることができ、商売の滞りもなくなり、利益になるのではありませんか?」
土地をのっとりたかった父の親族は渋い顔をしていたが、
デッドに住む多くの者達は、教会・修道院ができることによる生活上のメリットに心を動かされたようだ。
なにしろ、別大陸にあるといううわさの(おとぎ話の中ともいう)「冒険者ギルドや商業ギルド」などに関する業務をこのあたり一帯で執り行うのが、「教会」であり「修道院」なのだから。
そして修道院長になることができるのは、学院で修士号を取り、修道院設立のための土地と財力を持つ者のみ。さらに修道院の運営を軌道に乗せ、なおかつ博士号をとり、既存の教会長の推薦を受けた者だけが、教会を運営する教会長となれるのである。
教会と修道院の違いといえば、修道院に裁判機能・司法権限がついたものが教会といったところであろう。
「しかし なぜ 我々男に対して退去を命じるのだ!」父の手のものが言う
「そうだ」「そうだ」口々にわめきたてる男達
いつのまにか 父の手引きで館の外にいた武装兵どもも全員館の中に押し入って騒いでいる。
「それは 先ほどまで皆さまがおっしゃっていた通り、私が「女」だからです。」
「修道院が設立される時には 修道院長と異なる性を持つ者は総員退去。
修道院設立後、修道院長が認めた者だけが 指定された敷地の一部に入ることを認められる。
この鉄則を踏まえての要請です」
「しかし か弱き女どもを守る為の男手は必要ではないかな。」父が欲にまみれた顔で近づいてきた。
「笑止! 私が結界魔法を使えることも知らぬのか?!」リンは はったとばかりににらみつけた。
修道院長になるのになぜ高学歴が必要なのか?
それは世俗の法律・知識のみならず、攻撃魔法・防御魔法を使って修道院を守り
修道院の経営や修道院を訪れる人々の人物鑑定を行い
その身元保証を行うだけの力量が必要だからである。
「これより結界を発動する。ここにいる男たちは今すぐこの館から立ち去れ
3日後には 我が領土内に残った男どもの命はない」
結界魔法に押されて父は扉にたたきつけられ、
そのほかの男達も、結界魔法の圧力を感じるや否や大急ぎで屋敷を飛び出し
父ともども馬に飛び乗り全速で逃げ出した。
とりあえず領地全体に「修道院が設立されました。男性は総員退去。残留者の命は保証しない」と警戒警報を響き渡らせておいた。