十◇狂気の森に立つ毒の魔女
猟師小屋の外は雲が覆う空の下。今にも雨が降りそうな森の中。
アダーは裸足のまま、怖い目で睨む男たちの前に立つ。
僕とアダーを猟師小屋ごと取り囲むのは村の男たち。
アダーの前にいるのは司祭様。隣には村長のおじいちゃん。集まる男たちは僕の村の顔見知りばかり。だけど誰もが僕の知らない表情で僕とアダーを睨んでいる。その中には父さんも兄さんもいる。
憎々しげに、敵を見るような目で。
「白の女神様からお告げがあった」
額に深い皺を寄せる司祭様が厳かに言う。
「白の女神様に仇なす魔女を滅ぼせ。魔女に唆された加護無しのシールも滅ぼせ、と」
殺気立つ男たちに囲まれているのに、アダーはいつもと変わらず、表情ひとつ変えない。
「お告げ、と来たか」
「村に穢れを持ち込む邪悪な魔女よ。白の女神様の目は欺けぬ! ここで滅びよ!」
村の男たちは口々に、魔女め、加護無しめ、と言う。手にする鎌を、鍬を掲げる。
みんなが僕を殺そうとしている。僕はギフトの無い罪の子から、白の女神の敵で魔女の手下、ということになったらしい。
そんな白の女神をこれまで崇拝して祈っていたのか、僕は。
虫の卵を吐き出したら女神の敵で村の敵。それでは白の女神とは、人の神様じゃ無くてあの白いムカデの神様だったみたいだ。
そんな女神に祈っていた僕。そんな女神に仕える司祭様。そんな女神を奉り崇めた村の人達。何もかもが狂っている。
だけど頭の中にあの虫のいる人達は、そんなことも知らずに僕とアダーを殺そうとしている。僕たちが死んでいなくなれば、白の女神の加護は安泰で、村は平和で平穏だと。
この世界は、僕の村は、人の為じゃ無くて虫の為にあるみたいだ。なんなんだろう、この世界は? 知らないことは幸せなことなのか。知らないままに虫と共に生きていれば。知ってしまえば、それだけで村の敵、人の敵なのか。違う、虫の敵になるのか。
人は虫の奴隷だったのか。
「加護無しシール! お前はもう弟でも家族でも無い!」
兄さんが大声を出す。二股の鋭い鋤を僕に向ける。
「お前をぶっ殺して、俺の家族は魔女と関係ないって証を立てる! 我が家に白の女神様の加護を!」
兄さんが吠える。誰もが声を上げて罵りつつも、アダーを魔女と恐れている中で、真っ先に動いたのが兄さんだった。
鋤をしっかりと構えて僕に向かって走ってくる。あんなもので刺されたら痛いだろう。死んでしまうのだろう。
だけど、
「僕は死にたくない! 虫の奴隷になるのもイヤだ!」
後ろに下がる。猟師小屋の壁に背をつける。
「アダー! 逃げよう!」
アダーに声をかける。周りを村の人たちに囲まれて逃げ場は無い。だけどアダーなら魔術でなんとかしてくれそうだ。
アダーは悠然と、まるで女王のように村の人達を見ていた。スッと歩いて僕と兄さんの間に割り込むように立つ。鋤を構えた兄さんが突っ込んでくる。
アダーが右手を振る。右手の甲の小さな青い宝石がキラリと光る。兄さんの構える二股の鋤はアダーの手に払われて空を突く。
アダーの右手の人指し指が兄さんの額に触れる。それだけで兄さんの動きはピタリと止まる。兄さんだけ時間が止まったように。
「な、なに?」
兄さんの額から、赤い血が一筋流れて顔を伝う。周囲の男たちも何事かと動きを止めて見る。
「か、からだが、うごか……」
震える声で言う兄さん。二股の鋤を持ったまま両手を上げて固まっている。その顔に驚愕と怯えがある。
「ま、魔女め……」
「魔女を殺そうというならば、もう少し工夫したほうがいい」
人指し指一本で人の動きを止めたアダー。その右手の指の先、青い爪が兄さんの額に刺さっている。アダーはそのまま兄さんの様子をうかがっている。
「えう? あば、と、父さん、あぐば、ばばば、とうさ、あぶば、あばばばばばばば」
兄さんが白目を剥き、口から泡を溢し、意味の解らない声を上げて仰向けにバタリと倒れる。あぶば、あばば、と笑っているような、泣いているような声を上げて。倒れたまま手足がメチャクチャに跳ねる。
父さんが兄さんに近づこうとする。兄さんの暴れる腕が父さんの足を叩く。
村の人たちに怯えが走る。その真ん中でアダーは、いつもの無表情を変えないまま、人指し指の青い爪を見つめる。
「……調律した毒で脳の中の寄生虫だけを殺しても、一度共生に適応した脳は寄生虫が死ぬと障害を残す、か。厄介な」
アダーを睨むおじいちゃんが叫ぶ。
「孫に何をしたァ! ただの薬師では無いなお前はァ!」
「薬も使うが毒の方が得手だ。毒師と言うのが近いだろうか」
「何者だお前は!? 何をしにワシの村に来たァ!」
「私が何者か、か」
呟いてアダーは右手を自分の喉にあてる。白い服についたベルトに指をかけると、ピンと白いベルトが音を立てて外れる。
「敵には名乗っておくか」
アダーは表情の無い顔のまま立つ。身体を締め付けるような白い異国の装束、いくつもある白いベルトが次々と音を立てて外れていく。アダーの身体を拘束しているようなベルトが。
「聞こえているのだろう? 寄生虫の女王」
白い異国の衣装が弾けて、アダーの身体が膨らむ――
そこに立つのは怪物だった。それは魔獣だった。それは恐怖だった。それは見たことも無いもの、それでも見れば恐ろしいと分かるものだった。
誰もが見上げて息を飲み、身を竦めて動けない。
森の中に魔女が立つ。魔女のような怪物が。
お伽噺でしか聞いたことが無いようなバケモノが、周りに恐怖を振りまいて静かに人を見下ろしている。
それは女の形をしていた。暗く赤い色の髪は長く長く伸び、赤い髪の中から山羊の角が天を衝く。
白い肌の肩や腕に、小さな青い虫の甲殻が艶を出して煌めく。白い肌に青い宝石を纏う赤い髪の恐ろしい程に美しい女。
だけど女の形をしているのは上半身だけ。腰から下は大きな四肢の獣の身体。鋭い爪を持った太い四本の獅子の足。
頭の無い獅子の黄金のたてがみの中から、アダーの上半身が生えていた。
その腰から下、四本足の獣の身体からは白い白鳥のような大きな羽毛の翼。黒い蝙蝠のような羽根。二対四枚の白と黒の翼。
獅子の尻からは太く長い黒い大蛇の尻尾。
ありとあらゆる魔獣、人間も含めた怪物を寄せ集めて組み上げられたような、異常な恐怖の形がそこにあった。
アダーの声が、姿は変わっても変わらない声が、静かな声が恐怖の森の中に聞こえる。
「古代魔術文明、クガセナ生体因子研究、変異混成魔獣の実験体、ネクストハイブリッドチルドレンの最後の一体」
アダーの声が意味の解らない言葉を連ねる。
「私の今の名は、アダーゲルダラムラーダ=ハオス。滅日の遺産を回収する」
長く不吉な名前を聞いて、司祭様が目の色を変えて大声で叫ぶ。
「怪物を殺せエエエエ!!」
呆然と見上げ固まっていた村の男たちが、叫び声を出して鎌と鍬を振り上げて、一斉にアダーに突撃する。
「私を怪物と謗るなら、同じ怪物を頭に飼うお前たちはなんだ?」
アダーは迎えるようにふわりと手を広げる。黒と白の四枚の翼が大きく広がる。上半身だけは人の女の身体のあちこちにある、青い虫の甲殻が星のように光る。
それだけでアダーに向かって走る男たちはバタバタと倒れる。足から力が抜けて転ぶように地に伏せる。
「な、な、なんだ?」
「あ、足が動かねえ!」
見上げる半人半獣の魔女は、獅子の足をゆっくりと前に踏み出す。
「ただの麻痺毒だ。死にはしない。これから実験に付き合ってもらう」
淡々と、何事も無かったように淡々と言う。
倒れた男、あれは父さん、の側に寄り、アダーは身を屈めて白い女の手が父さんの頭を掴む。手の甲の小さな青い甲殻がキラリと光る。
「な、なにを、やめ、やめろ、あぎ、やめて、あぎ、あぎがぎぎぎぎぎぎ!」
父さんが叫ぶ。目をグルグルと回して悲鳴を上げる。
「睡眠毒、寄生虫だけを眠らせてもダメか」
アダーが手を離す。父さんは倒れたまま、意味の無い言葉を、あぎ、あぎぎ、と繰り返す。父さんの頭の中が壊された。父さんがおかしくなった。父さんが狂った。
アダーは次々と倒れた男たちの頭に手をつける。
「あごおおおおお!」
「麻痺毒、ダメか」
「びゃやややああやああ!」
「溶血毒、これもダメ」
「えぎぃいいい!」
「虚脱毒、これもダメか」
アダーが触る度に、倒れた村の人たちが壊れていく。狂っていく。頭がおかしくなっていく。
アダーは人の頭の中の虫をどうにかしようとしているらしい。だけどその様子は、アダーが村の男たちの頭の中を、順番に一人ずつ壊していってるようにしか見えない。
一人ずつ順番に狂気の闇に落としていく。
倒れた男たちは這いずって逃げようとする。
「やめろお! 来るなあ!」
「魔女! 触るな! 俺に触るな!」
「助けて、たすけてくれ! 白の女神様あ!」
「いやだあ! 死にたくないい!」
森の中に叫び声が木霊する。アダーに頭を掴まれる前は助けを求め、死にたくないと叫び、白の女神に助けを請う声が。
アダーに頭を掴まれる度に、頭の中を壊された人の、虚ろで意味の無い言葉が、口からよだれと泡と共に出る。
「……寄生虫と共生した脳は変質し、脳の機能の一部を寄生虫が代替する、か。寄生虫をどうかすれば、脳が破損する。これでは治癒の魔法が得意な十二姉でも、変質した脳の再生は不可能だ」
森の中に狂気が満ちる。誰も彼も狂ってしまった。壊れてしまった。人が人の形のまま人では無いものになっていく。
みんな壊れていく。みんな狂っていく。みんな頭の中の虫に生かされている。みんな頭の中の虫を生かすために生きている。その虫が壊されると人も壊されていく。
僕たちは、村の大人たちは、みんな虫の奴隷なのか。兄さんも父さんもおじいちゃんも、虚ろな目で暗い空を見上げて、泣いているのか笑っているのか解らない声を出す。
悲鳴は全て狂声へと変わり、何もかもが狂っていく。おかしくなっていく。
だけど、いつから僕の村は狂っていたのだろうか? 頭の中で虫が生きていることを正常だなんて。それを知らずに平穏だなんて。
じゃあ、何が正気で正常なんだ? 何が狂気で狂っているんだ? 頭がおかしくなりそうだ。いや僕もとっくにおかしくなっているのか? 森の中で響くいくつもの狂声に目眩がする。
「……結論、寄生虫に巣食われた人間はもとに戻せない」
半人半獣の魔女が囁く。獅子の足を踏み締めて悠然と歩く。その先はペタリと座り込む司祭様。
「こ、この、怪物が、む、村の者になんということを」
「村の者を寄生虫の奴隷にしたのは、司祭だろう」
「め、女神よ、白の女神よ、この魔女に天罰を与えたまえ。忌まわしき魔女を滅ぼしたまえ」
「末端の司祭は知らぬのか?」
アダーの両手が司祭様の頭を挟む。そのまま持ち上げる。司祭様は白い髭を震わせて、白の女神を崇める聖句を必死に口にする。
「し、白の女神よ、救いを遣わしたまえ」
「司祭、成人の儀の聖餐と聖酒はどこから送られた?」
「女神よ、白の女神よ、我ら迷える信徒に知恵と勇気を与えたまえ。信心深き者に加護と奇跡を与えたまえ……」
「話してもらうぞ司祭。自白毒、青き酩酊の中で知る事を唄え」
「め、女神よ、白のめが、めが、みひぇ、がみひゃえぇ」
ぶら下がる司祭様の身体から力が抜ける。ダラリ、と垂れ下がる。その顔は酒に酔ったように赤くなる。目がフラフラと泳ぐ。
「司祭、何故、村の人に寄生虫を植えつけた?」
「き? きせいちゅ?」
「虫の卵だ」
「むし? しらない、虫の卵なんて知らない」
「成人の儀で司祭も聖餐を口にしたな?」
「たべた、成人の儀の、ごちそう食べた。美味しいごちそう」
「ならば寄生虫の卵があるのは聖酒、女神の涙か。司祭、女神の涙は何処から運ばれた? 何処で作られている?」
「め、女神の涙は、おうと、王都の、王宮、おうきゅうから」
「王都の王宮、ならばそこに虫の女王がいるか」
アダーの手の甲、小さな青い虫の甲殻がキラリと光る。司祭様の顔がどす黒くなっていく。
「びゃああああああ!!」
司祭様はガクガクと震えてもがく、が、アダーの手はがっちりと司祭様の頭を掴み離さない。司祭様の目がグルリと白目を剥く。アダーは司祭様の目を覗くようにして言う。
「今からそこに行く」
司祭様の左目から涙が溢れ、血が溢れる。暴れる動きがピタリと止まる。眼球が蠢き、司祭様の左目のまぶたの裏から、白いムカデが這い出てくる。
アダーはその白いムカデに語る。
「そこで待っていろドミネイトインゼクト。今の時代に我らは不要だ」
アダーの青い爪が走り白いムカデを傷つける。白いムカデは足の動きをピタリと止めて、クタリと倒れる。片目から白いムカデを生やした司祭様は声も上げずに地面に落ちる。
森の中、立っているのは僕とアダーだけ。
みんな地面に倒れている。
みんな虚ろな声を上げている。
みんな壊れて、みんなおかしくなった。
狂っている。狂ってしまった。
怒りは過ぎ去った。恨みは枯れて消えた。
殺意は霧のように消えた。女神の天罰は何処にも無かった。何もかもが狂気の中へ。
司祭様の祈りは何者にも届かなかった。
女神の加護なんて最初から無かった。
頭の中の虫に弄られて、どうにかなるのがギフトだった。
頭の中に虫を飼うのが大人だった。
僕たちはみんな虫の奴隷だった。
虫が死ぬと壊れてしまうのが大人だった。
森の中で響く声、声、声が、人の口から出る音なのに、人の声とは思えない。言葉にならない音の羅列は、誰が何を言っているのか解らない。あばば、とか、えぶえぶ、とか、ろほほほほ、とか。意味の無い音が狂気の森に響く。
これが人間なのか。こんなものが人間なのか。くだらない、気持ち悪い、呆気ない、怖い、ずっと吐き気が止まらない。
「……もう、イヤだ」
もう、こんな地獄は見たくない。もうこんな狂った世界にいたくない。
「イヤだッ! もうイヤだッ! もうこんなところにいたくないッ! こんな狂った世界に生きていたくないッ!」
叫んだ、大声で叫んだ。
「ああああああああああ!!」
耳に入る気持ち悪い声が聞こえなくなるように、ただ叫ぶ。振り絞って声を出す。涙が滲む。
どうしてこんなことに。
魔女がこっちを向く。獅子の足が草を踏む。
狂気と恐怖を落とした半人半獣の毒の魔女がやってくる。
アダーは右目をつぶったまま、左目だけで僕を見る。身を屈めてそっと僕の頬に触れる。
その手は、あのとき、初めて会った日、僕の目を心配していたときと同じように、優しく触れる手と同じ。青い左の目が僕を見る。
「あ、アダー……」
これがアダーの正体。怪物、毒の魔女。
「アダー、僕を殺して、僕の頭も壊して……、もう、イヤだ。こんな、こんな怖くて、気持ち悪い世界で、生きていたくない……」
「シールには、生きていてもらう」
「なんで……?」
「希望だからだ」
アダーの顔が近づく。右目は相変わらず閉じたまま。優しく頬に触れる手。どうしてアダーは、僕に優しい? 他の人たちを簡単に壊しておいて。どうして僕だけ?
「シールの身体は寄生虫を拒絶した。シールの身体にはあの寄生虫に対する力が育っている。あの村で寄生虫に犯された人間の身体の、抵抗への進化。それがシールの身体に宿る力だ」
「そんな、そんなの知らない。みんな、おじいちゃんも父さんも兄さんも壊れて、母さんも姉さんも頭の中に虫がいて、リィスだって、ノーラだって」
「シールの力は、この小国の人間が産み出した寄生虫への反抗だ」
「そんなのどうでもいい! みんなおかしくなった! こんな虫に支配された気持ち悪いところにいたくない!」
叫んだ。喚いた。僕も狂ってしまいたかった。もう狂っているかもしれなかった。
「アダーがいなければ! アダーさえ来なければ! 僕の村がおかしくなることも無かった! アダーが来たからこんなことに! アダーが、僕と、会わなければ!」
アダーの両手が僕の頬を挟む。アダーの左目の青い瞳は、なんだか少し泣きそうに見えた。
だけど僕の口は止まらずに、言ってしまった。
「アダーに会わなければ、虫のことなんて、何も知らずに、平穏に、平和に……、たとえ僕が加護無しだとしても、みんな、虫のことなんて、知らずに、狂わずに、生きていられた……」
「……その通りだ。だが、私はこの小国の人間、総て壊し狂わせても、私の役目を果たす」
「酷いよ、アダー……」
虫のことなんて、知らなければ良かった。世界の本当の姿なんて、知らなければ。何も知らなければ、狂わずに生きられた。僕ひとりだけが加護無しとなっても、村の人たちはあの村で暮らしていけた。僕の家族も。
アダーのもたらした嵐が、何もかもひっくり返して僕の前に暴き出した。この世界のはらわたを。
人の頭の中のピンクの肉の中に白いムカデが蠢く世界の真実。異常の上を知らずに暮らしていた僕たちは、歪んだ狂気も知らずに平穏だと思い込んでいたんだ。
その恐怖を知ってしまえば、これからどう生きていけばいい?
「僕は、アダーを赦さない。僕の頭も、壊してよ」
「赦さなくていい。赦さずに生きていけ」
アダーの閉じていた右目がゆっくりと開く。
その右目の中には三つの瞳があった。ひとつの目の中に、青色、黄色、赤色の三つの瞳が並んでいた。並ぶ三つの瞳が、じっと僕を見つめていた。
異形の瞳に見入られて、僕の意識が闇に落ちる。気が遠くなる。
そこまでが、僕の正気の限界だった。
「人に赦される怪物など、お伽噺の中だけの話だ」
アダーの声が、とても遠くから、微かに聞こえた。
僕が憶えている、毒の魔女、アダーのことはここまでだ。




