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召喚されたのに非戦闘職は不要と放り出されました。理不尽!  作者: 笠谷 柳斗
第一章 リンドウ家ファミリー牧場計画(仮)
39/56

31 お目覚めですか、アレレのレ!?

*読み難かったので文章を少し整えました。内容自体の変更はありません。

「何してんだ、お前ら。スズノが窒息するぞ」


 おれが真空パック状態で必死に助けを呼んでたら、返事するように声がした。

 呆れたようなその低音は、おれの背後からシノンさんの方に向かってる。


「それはヤバイ。ナッキーに殲滅せんめつされてしまうわ」

「プひゃっ――!?」


 ベリッてカンジでおれの顔に引っ付いてた何かが無くなり、同時に背中側へと引っ張られた。


「息出来るか、スズノ? 大丈夫か?」


 涙目でよく見えないまま振り向かされて、ボフッてオデコが何かにぶつかる。


 何かって言うか、壁?

 厚くて堅いのに、ぶつかってもあんま痛くない。右側に張り出してる気配があって、追撃からも護られるカンジ。

 全力でしがみ付く。


「はっ、はあっ、ふあぁぁ……死ぬかと、思ったぁ~……」


 じんわり温かい空気を感じて、ようやくゆっくり呼吸出来た。


 でも、酸欠と急な回転で頭の中がグルグルしてる。

 今更ながら手もプルプルしてるし。


「もう大丈夫だから、泣くなよ」

「泣ぃてなぃ~……」


 自分でもビックリの〈思った以上に泣き声〉だったけど。

 コレ〈生理現象的なヤツ〉だもん。

 悲しいとかで泣いてんじゃ無いもん。



 ――って、あれ?


「レインさん、起きてたの?」


 聞き慣れた声だと思って顔上げたら、見慣れた眼帯と(あお)い隻眼に見下ろされてたよ。


「お前に泣いて呼ばれちゃ、起きるに決まってるだろ」


 ぐっと寄った眉間のシワは超不機嫌そうだけど、いつもより掠れた低音の声は心底心配そう。

 さっきまで寝てたハズのレインさんが、おれの頭を腕で庇って呼吸出来る空間を作ってくれてた。


「あの……お休みのトコロ、スミマセンデシタ」


 つか、しがみ付いてたの、壁じゃ無くてレインさんの胸じゃんよ。

 気が付かないとか、おれの脳ミソ半分ぐらい機能停止してたんじゃね?


「全然構わねぇよ」


 ゴツくて大きな手がおれの前髪をかき上げて、ついでに優しい手つきで頭を撫でてくれる。


「でも、泣いてないから」

「コレでもか?」


 おれの目に溜まってた〈生理的な塩水〉、レインさんの指で拭われてマシタ。


「ソレ、は――違うし」


 ビックリしてモゴモゴしちゃったら、フッて緩い吐息が落ちて来たよ。

 状況証拠で〈強がり〉に思われた予感。


 頭ポンポンされちゃった。

 違うのにぃ~!



「やっぱり、おちおち寝てらんねぇなぁ?」


 レインさんは苦笑いだけど、何だかホッとしてるようにも見える。


 そう言えば、おれがムリに寝かせたんだった。

 レインさんは『寝たくない』って言ってたのに。


「……何か、ゴメンなさい」

「イイよ。『何かあったら起こす』は守ってくれたし。ちゃんと『助けて』って呼んでくれたし。上出来だぞ、スズノ」


 おれはナンデ〈お留守番出来た小さい子〉みたいに、頭撫でくり回されて褒められてるんデショウネー?

 レインさんの中のおれって、いったい……?


「ってゆーか、ホントに泣いてないし! 欠伸(アクビ)と同じ、勝手に出た涙だよっ」

「解った、解った。えーと……あら(ビン)? 土瓶に、ハゲ茶瓶? 呼ばれて、飛び出て……」


 え――〈くしゃみで召喚大魔王〉も通じるの?


「――ダ・ダーン!」

「ふぁっ!?」


 ナゼにいきなり〈マッスルポーズ〉!?


「レインくん、そこは『ジャジャジャジャーン』や。『ダ・ダーン』とポーズは、タツさんの〈宴会芸(持ちネタ)〉やよ」

「ん? そうなのか?」


 マジか。


 確かに、タツさんならそのポーズ似合うケドネ?

 それと。

 シノンさん、居るの忘れててゴメンなさい。


「せやけど。〈くしゃみで召喚される大魔王〉は〈欠伸で娘が召喚される〉訳やし……〈蒼黒(そうこく)の魔王の息子〉は〈涙でマッスル召喚される〉のもええかも知れへんね?」


 シノンさんが何か呟いてたけど、『欠伸で娘が』までしか聞き取れなかった。

 ソッチをチラ見したレインさんが、おれの耳のすぐ横に腕寄せたから。


 少し顔しかめてるし、おれが聞いたらマズいのかも?



**********



「スズノ。ちょいと浮かせるから、動くなよ」

「ピョっ――!?」


 くるんと後ろ向くように投げ上げられたのは一瞬で。

 気が付いたらガッチリキャッチされて、床にお尻が着いてました。


「もう気ぃ抜いてイイぞ」

「ふぇ~……え?」


 今おれは、ナゼか〈レインさんの胡座(アグラ)の中〉にスッポリと収まってます。

 ちゃぶ台だから膝の上はムリだったのねー。


 ――って、そーゆーコトじゃ無かろうヨ。


「いやいや、ナンデ!?」


 そりゃ窮屈な体勢だとは思ってたケドネ!?

 レインさんに抱っこされてるのはマジで『ナゼ?』デスヨ!


 ちょ――放してぇ!


「何やの、その警戒っぷり。レインくんて〈彼女サンを束縛するダメ男〉やったん?」

「あ?」

「ぐフっ……」


 その〈彼女サン〉の位置に居るの、どう考えても〈おれ〉ダヨネ?


 メッチャ呆れたシノンさんの声は、レインさんよりもおれに〈クリティカルヒット〉シマシタヨ。

 ナニかがごっそり削られた気がする。


「スズノは男で〈カノジョ〉じゃ無ぇよ。だが、さっきみたいのは二度と御免なんだ」


 言いながら、レインさんがおれの左肩にアゴ乗っけて来る。

 さり気なくほっぺたスリスリして、「もう泣かせねぇからな」って。


「だから『泣いてない』って何度も……二人して〈スルー〉デスカ!」


 無精ヒゲがチクチクしないから、一瞬『ジョニーさんにほっぺた舐められた』と思ってビックリしたのは内緒デス。



 ふと見ると、おれの胸の前で交差してる筋肉質な腕の外側が蒼く光ってた。

 って言うか。

 おれとレインさんの周り、蒼い光が上から螺旋状に降り注いでキラめいてた。


「メッチャ綺麗だけど、コレ何?」

「〈魔力吸収結界〉や。レインくん、本気やねぇ」


 え?

 どーゆーコト?


「さっきの見たら、まぁそうなってしまうかー。全面的にアンタが悪いんやし、温和(おとな)しゅうしとき」


 困った顔のシノンさんの右手は何か〈見えないモノ〉を掴んでるようで、〈ソレ〉がバタバタ暴れるのを捕まえてるっぽい。

 おれの方見て、左手を拝む形にした。


「ごめんねー、スズくん。このコ、悪気は無かったんよ。寧ろ、キミに懐いてしもたんやわ」

「ほぇ?」


 うん。全然解んない。


「そいつ〈ハグレ〉か?」

「せや。サクラちゃんと仲良しなんよ。いつもウチの服に引っ付いて、〈魔力障壁〉の代わりになってくれてるんやけど。まさか、スズくんから離れへんなんてねぇ」

「勝手にスズノの魔力喰った上に、接触部分から〈実体〉造って物理的にしがみ付いてやがったぞ。スズノを窒息させ掛けといて、言う事はソレだけか?」

「う~ん……けど〈窒息〉って概念、このコは理解出来るんやろか?」


 小首傾げるシノンさんに、盛大な舌打ちするレインさん。


 どうやら〈窒息しない子〉らしい。

 まぁ〈透明生物〉だし、呼吸してる様子も無かったもんなー。

 手触りも〈低反発枕〉みたいな〈ムニュっぷり〉だったし。


「ただウチが知る限り、今までに見た事も聞いた事も無い行動やよ。魔導人形(ゴーレム)たちと言い、スズくんそういう〈引き〉強いん?」

「オレが知るか」


 レインさんがまた舌打ちした。


 つーか、いつもよりガラ悪くなってない?

 おれのコトはギュッて抱き締めてるから、メッチャ警戒してるだけ?


「ねぇ。おれには何も見えないんだけど、何なの?」

「見えなくて当然だ。ハグレは〈無属性の下位精霊〉で、実体造れる程魔力高くねぇ」

「せやね。〈属性精霊〉なら〈主属性に絞る〉事で多少密度上がるし、感度良ければ見えるコ()るんやけどねー」


 はい? 〈精霊〉デスカ?

 シノンさんの右手に、ソレが捕まってると?


 んんん?



 あ。

 何か、ボンヤリした〈光の集合体〉が見えるかも。〈魔力の塊〉的な――?


「スズノ、魔力が漏れてる。もうヤメとけ」

「ハイ……」


 あれ――さっき〈()()()()結界〉って、言ってなかった?


「ねぇ……その〈精霊さん〉、この蒼いキラキラに触ったらどうなるの?」

「オレの魔力に変換される。スズノの魔力、勝手に喰いやがったんだ。譲る気は無ぇぞ」


 淡々と言うレインさんは、おれが振り向くのを封じるようにギューッて抱き締めて来てる。

 腕は自由だし、気ぃ遣ってくれてるから別に苦しくは無いんだけど。


「多分ナッキーも同じ事言うわー。いや寧ろ、既に消滅させとるかも? せやから、スズくんは気にせんでええよー」

「あ――うん。状況は、解ったと思う」


 ソレは下手に庇えないね。

 ちゃんと罰しておかないと、ウチの父親が何するか判んないし。


 でも何だろう。『セッショウな~。オダイカン様お許しあれ~』『駄目だ。絶対に譲らん』って副音声が聞こえてる気がするんだよ。

 おれの頭、どうかしちゃってマスカ?


「そやな~。しばらくサクラちゃんと一緒に居って、レインくんの許可取れたらスズくんの服のポッケにでも入っとき。顔に張り付くんは、絶対に〈無し〉や」


 シノンさんの右手がブンブン縦揺れして、パッと開いたら何の気配もしなくなった。

 精霊さん、素早いなー。



*********



 とっくに冷めちゃったお茶飲んで、ふと気が付いた。


「あれ――そう言えば、サクラちゃんは?」


 お茶フーフーしてた時は、おれの右膝に頭乗っけてたハズなのに。

 いつから居ないの!?


「心配せんでも、ほら、そこで寝とるよ?」

「ソコって――ちゃぶ台の向こう? あ、ホントだ」

「見える? 完全に仰向けやよ。可愛いわ~」

「見える見える。〈ヘソ天〉メッチャ可愛い! 天使!」

「な~!」


 スゴいや、サクラちゃん。

 壁の方まで転がってんのに、毛布にくるまって幸せそうな寝顔だよ。

 当分起きる気配が無いね。


 って言うか。

 おれの左肩からもスースー寝息が聞こえてるんデスケド。


「えーと、もしかして……レインさんも、寝ちゃってる?」

「せやね。多分、寝とるわ」


 えー!?

 抱っこしたおれの左肩に頭乗せるって、結構キツい姿勢じゃ無いの?

 何かビクともしないから、どうしようも無いけど。


「さっきガラ悪かったの、まさか寝ぼけてたのかなぁ?」

「寧ろ、眠くてむずかってたんと違う? 設定時間前に、強制的に起こした訳やし」

「え? レインさんは〈幼児(ちみっこ)扱い〉で、おれは〈タイマー扱い〉なの? ねえ、シノンさん?」

「シノ姉ちゃん、やろ? いや~、スズくんのスキルって本気でとんでも無いねぇ」

「……マジデスカ」


 シノンさんは綺麗な笑顔で楽しそうに笑ってる。

 でも、おれは引きつっちゃって笑えないよ。


 おれのスキルさん、〈気軽いお祈り〉でこの威力って……。

 本気で魔力()ぎ込んだら、どうなっちゃうんだろうなぁ?

 あははのは……。


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