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召喚されたのに非戦闘職は不要と放り出されました。理不尽!  作者: 笠谷 柳斗
第一章 リンドウ家ファミリー牧場計画(仮)
38/56

30 『お嬢さん、お逃げなさい。ほら全力ダッシュ!』

*読み難かったので文章を少し整えました。内容自体の変更はありません。

「……レインくんの寝顔、初めて見たわ」


 ボソッと呟くシノンさん。

 おれも見たい――じゃ無くて、確認したい。


「ちゃんと寝てる? 起きてない?」


 振り向いても、見えるのは肩と髪と眼帯のベルトぐらい。

 あ、〈人の耳〉もちょこっと見えた。


「うん――大丈夫。完全に眠っとる」

「そっか。良かったー」

「サクラちゃんも、ぐっすりやね」

「うん。おれが動いちゃっても全然起きないの」

「ほんま、珍しぃわー」


 二人に毛布掛けてくれたシノンさんが、おれの左手側に座る。


 現在おれたちは小上がりのちゃぶ台で、〈卵プリンとクッキーと緑茶のお茶会〉をしてるトコロです。

 参加者はおれと、絶賛〈湯上がりほこほこ〉状態で〈湯冷め注意報〉出てるシノンさん。


 もう一人の〈ほこほこ〉サクラちゃんは、おれの右膝を枕にしてます。

 レインさんは、おれの背中側でゴロ寝してるっぽい。

 二人とも移動で魔法使うから、魔力を回復しとかなきゃいけないんだってさ。


 寝る前にレインさんが『心配だからやっぱり寝ない。回復薬飲む』って言い出して、一悶着あったけど。

 シノンさんも居るし、何かあったらおれのスキルで起こすって言って押し切ったよ。

 不安そうだった赤い尻尾も、おれのお腹に巻き付けたら安心したみたいだし。

 布団はおれがお風呂行ってる間に片付いてたから、毛布だけ掛けて仮眠中。


「スズノくんの〈清々(すがすが)しい目覚め〉、凄いスキルやねぇ。こんな深く眠っとるのに、時間が来たら起きられるんやろ?」

「んー、多分? おれ的には、発動してるのかよく判らないけど」

「そうなん? 魔力動いてたし、発動しとる筈やよ」

「そっかー」


 姉ちゃんに『歩く目覚まし時計』って言われた時はイヤだったけど。

 心配性っぽいレインさんが安心して寝てくれるなら、悪くないスキルだよなー。


「あ、じゃあ『目覚めた時に魔力と体力と疲労、完全回復してますように』――って。コレは?」


 シノンさんも『敬語無しでいい』って言ってくれたので、もう普通に喋ってます。


「うん、動いた。そんな〈お祈り〉みたいなんで発動するんやねぇ」

「おぉ~。シノンさん、ありがと! おれ、初めて『スキル使った』ってカンジした。手応えは無いけど」

「手応えかー。ウチも無いっちゃ無いよ? サクラちゃんたちが懐いてくれとるだけやもん」

「あー、ソレも大変だねぇ」

「ねー」


 何か〈従兄姉(イトコ)たち〉と一緒に居る雰囲気で落ち着くんだよね。

 レインさんとはちょっと違う、安心なカンジ。



「……シノンさん、メッチャいい匂いするね」


 シノンさんの腕が目の前通ると、幸せな気持ちになる〈お菓子の匂い〉がフワッと漂うんだよ。

 今食べてるクッキーとは違う、美味しそうな匂い。


「今は〈いつものボディソープ〉だけやよ。メイクは出掛ける前で充分やわー」


 おれはスッピンの方が好きかも。

 お化粧の匂い、ちょっと苦手。


「バブルさんの〈ミルク〉の匂い、甘くて美味しそうだよねー。絶対食べないけど」

「あー、せやね。寧ろ〈バニラ〉っぽい気ぃするわー。って、普通食べへんよ」


 何でおれは『ダメ』で、シノンさんは『OK』なのか。

 水場(みずば)三人衆改め、〈(ラク)ーン三兄弟〉を問い詰めたい気持ちでいっぱいデス。

 サクラちゃんとお揃いの〈シャボン玉〉だから、まぁいいんだけどさ。


「……おれの時は〈問答無用で泡チェンジ〉だったのに」

「スズノくん、今何て言うたの?」


 ぶー垂れたおれは、〈強制泡チェンジされたコト〉と〈レインさんが三人を褒めたコト〉をシノンさんに愚痴りマシタヨ。



「え――魔導人形(ゴーレム)が、()()()泡を変えたん?」


 シノンさんも、驚くのは〈魔導人形さんの自主判断〉ってトコなのか。


「あ~、そう言うたら何やいつもと(ちご)うたな。あの三体、妙に張り切っとる言うか……」


 どうやら〈水場三人衆〉は〈楽ーン三兄弟〉って呼び名が気に入っちゃった上に、名前もらったって張り切ってるらしいのデス。

 レインさんの説得にも応じなかったヨ。


 ソレは、マジでゴメンなさい……。


「取り敢えず、事の次第をタツさんに報告するしか無いねぇ。後の対処も、任せるしか無いんと違う?」

「コレ、〈幹部への報告案件〉ナノデスカ?」

「う~ん、どちらかと言うと〈ナッキー対策〉やろか。スズノくんたちの事は、小さな事でも報告せぇって話やね」

「誠に誠に、お手数をお掛けしておりますぅ~!」


 ちゃぶ台に頭を押し付けようとしたら、シノンさんの掌で止められた。

 フワッと甘い香りがする。


「今ここでウチが先に()うたのも、きっと〈えにし〉なんやろうね」


 シノンさんは綺麗な笑顔でおれを見た。

 ちょっと悪戯っぽい目に見えるけど。


「少しだけ、昔話に付き()うてな?」


 一瞬レインさんとサクラちゃんに目をやったシノンさんを見て、おれも頷いた。



**********



 召喚当時のシノンさんは大学生で、動物好きが高じて保護団体に所属してたそうな。

 時期は、〈何百年かに一度の大災害〉が起きたすぐ後。おれが住んでた地域は割と無事だったけど、〈ヒドい状態〉の町や村がまだいっぱいあった頃。

 すぐ戻るつもりで避難した住民たちが帰れなくなって、ペットとかが〈置き去り〉の形になってるのがテレビでよく流れてたんだって。


 要約すると。


 そのペット保護の為に〈ある被災地〉へ出向いて、仲間と手分けして無人の町を回ってたら〈おかしな挙動をしてる三人組〉に遭遇。

 どうやら〈火事場泥棒〉だったらしく、必死に逃げたけど追い詰められて絶体絶命。


 そこへ被災地の支社に出張してた〈ウチの父親〉が偶然車で通り掛かり、車を盾にシノンさんを助けようとした途端、周辺一帯の地面に〈大きな魔法陣〉出現。

 気が付いたら〈ウチの父親と二人きり〉で遺跡に居て、翌日には騎士たちが来て〈あのお城〉に連れてかれて、あれよあれよと言う間に〈役立たず認定〉で放逐決定。


 その時に〈例の三人組〉を見掛けてケイル団長に経緯を伝えつつ、レインさんの師匠の〈リューさん〉に連絡取って保護してもらい、今に至る――と。



 その頃のリューさんたちは『魔王を倒して日本に帰ろう』と色々準備してたそうで、合流した後になかなかハードなスケジュールを組まれたらしい。

 ソレが、〈異世界(コッチ)の時間で十年前〉の出来事。


 今はもう帰るのを諦めたのかな?って一瞬思ったけど。〈魔王を倒しても帰れない確率が高い〉って判ったから、方針転換したんだって。

 おかげでおれは、レインさんに護衛をしてもらえてるそうな。


 その辺はよく解んないけど。〈ウチの父親が暴れないように〉っていう配慮だけは、モノスゴク伝わったヨ……。



*********



 姉ちゃんと一緒に〈ラノベ読んでた〉ウチの父親が付いてたおかげで、シノンさんはイロイロと助かったんだって。

 特に〈異世界(コッチ)ネーム〉の重要性を〈()()()()〉聞いて、蒼白になったって。

 おれと一緒だね。


 本名も教えてもらっちゃった。苗字は結局思い付かなくて、英訳にしたそうです。


 それで、輪堂家全員に感謝してるって言われたけど。

 輪堂家(おれたち)的には、『ウチの父親が役に立って良かったです』に尽きるんだよねー。

 多分、母と姉ちゃんも同じコト言うよって言ったら、シノンさんはちょっと泣きそうになってた。


 でも父親本人には内緒デス。

 母以外から聞いたら、多分泣き暮らしちゃうからね。



「ほんで、ウチは〈シノお姉さん〉でええからね。こっちも〈スズくん〉て呼ぶし」


 今泣いたカラスがニッコリ笑ったヨ。

 ナンデそうなるの?


 しかし、反論出来る雰囲気じゃ無いってのはヒシヒシ伝わってマス。


 まぁね。

 実質八年間ウチの父親に面倒見られたら、もう親戚っぽいカンジになっちゃうよね。


 おれもイヤなワケじゃ無いんだよ。

 従兄姉が結婚して、親戚が増えたコトならあるし。

 ただ、〈お姉さん〉って呼び方が慣れなくて……ちょっと恥ずかしいんだよなぁ。


「う~……〈シノ姉ちゃん〉、じゃダメ?」

「ええな、それ! 良く出来ました、スズくん!」

「わ、にゃぶっ――!?」


 目の前が真っ暗で何かで塞がって息が出来ないんだけどナニっ!?


 何なの、待って。

 ナニコレ。

 苦しいし、取れない!


 ――取れないっ!?


 レインさん、助けてぇ――!


序章からだと一年経ってましたねぇ。

続きを待っていて下さる方々に、限りない感謝と小さな幸運を。

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