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召喚されたのに非戦闘職は不要と放り出されました。理不尽!  作者: 笠谷 柳斗
第一章 リンドウ家ファミリー牧場計画(仮)
33/56

25 Every child has a ビューティホー・ネーム

*読み難かったので文章を少し整えました。内容自体の変更はありません。

「スズちゃんの別腹は、甘い物じゃ無さそうだなぁ?」


 いつのまにか全部食べ終わったらしいタツさんが、の~んびり言った。

 お茶をフーフーしつつ、返事を待ってるっぽい。

 おれの左隣からも、ソワソワしてる気配がほんのり。


 どうやら〈恥ずかしい空気〉を〈換気〉してくれるらしい。

 痛み入りマス。


「そう言えば。おれ、〈茶碗蒸し〉はお腹いっぱいでも食べれたかも」


 法事とか正月に親戚が集まると、〈自分の分の茶碗蒸し〉をナゼかおれの前に置く大人が多かったんだよ。

 みんな『お供え物』って笑うだけで意味不明。

 美味しいから構わず食べてたけどさ。


「あと、〈おでん〉とかの〈出汁が染みた大根〉も、つい食べちゃう」

「どっちも消化が良さそうだ。しっかし〈昆布〉はまだ見つかって無いんだよなー。他の出汁じゃ駄目だろ?」

「んー……〈昆布出汁の〉が好きかも。具無しで〈小鉢蒸し〉作って、オヤツ代わりにしてたぐらい」

「小鉢蒸し? 茶碗蒸しは〈小鉢〉使うと名前変わるのか?」

「いや? 今のは単に〈サイズの違い〉を伝える為の方便だな」

「ああ、成る程」


 その通りデス。混乱させてゴメンなさい。

 でもそっか。〈異世界(ココ)じゃ食べれない〉のか。


 ……あれ?

 おれ、思った以上に〈ションボリング〉? 現在進行形でションボリしてる?



「そう言やレイン、一時期〈夏喜(ナツキ)の専属コック〉みたいに料理作らされてたよな?」

「ああ。〈調合手伝い〉の依頼で、〈異世界料理を再現〉してた。材料が揃わない分、〈魔力や魔法での工夫〉が必要だったらしい」


 〈調合の手伝いで料理〉って言うから、てっきり〈おさんどん〉かと思ったのに。

 むしろ〈食品メーカーの開発部〉みたいな状況じゃね?


「あー、〈それなりに料理が出来る〉上に〈魔法も使える〉となると、リューさんか俺かレインになるのか」

「マキさんとジンさんは〈酒の肴〉、〈クー〉とシノンは〈菓子〉が専門だからな」

「ショコラは〈味見係〉が文字通り〈()()〉で、戦力外だし。実質〈レイン一択〉かぁ……」


 二人とも遠い目をした気配がして、同時にお茶を(すす)ってた。


 ウチの父親だし、ナチュラルに〈ブラックな働き方〉させてたんじゃ無かろうか?

 どうしても懸念が拭えません。


「ウチの父親が、ご迷惑とお手数をお掛けして申し訳アリマセン」


 頭下げても、テーブルにオデコ付いただけだった。プルプルしちゃうのが止めらんない。


「おかげで細かい魔力制御に慣れたし、〈依頼達成数〉が増えて〈冒険者ランク〉も上がった。美味い物も食えてるし、利害が一致したんだよ。だから心配すんな、スズノ」


 クシャクシャって髪をかき回されると同時に、苦笑気味の声が降って来た。

 別に気を遣ってるワケでも無さそうで、ちょっとだけ安心したかも。


「それはともかく。現状で作れる〈似た物〉はあるのか、レイン?」

「そうだな……今手に入る材料で作れるのは、〈プリン〉か〈カブのスープ〉辺りだ」


 そっかプリンもあったなー。

 日本ではずっと〈クリーミーで甘いトロけるプリン〉が流行ってたから、存在自体忘れてたよ。


「昔ながらの〈トロけないプリン〉なら、おれも好きなのになぁ」

「材料あるか見て来る!」


 何気なく呟いたら、『ガタンッ』て音立ててレインさんが立ち上がってマシタ。



**********



「……レインって、あんな奴だったか?」


 パタパタ揺れる赤い尻尾を呆然と見送ってたら、同じく呆然とした重低音が耳に届いた。

 パッと顔を向けると、視線に気付いた太い眉毛が困ったように〈八の字〉になる。


「いや、〈別人〉って意味じゃ無くてな。今まではもっと無気力って言うか、あんな必死な姿は俺も見た事無いし、妙にガキっぽいな――って。俺にそう見えりゃあ不安にもなるかぁ」


 澄んだ茶褐色の瞳が、苦笑混じりに優しく笑った。


「大丈夫だ。アレは正真正銘、レインだよ」

「……ホント?」

「本当。だけど〈独り立ち直前の頃〉に近いから、俺にとっちゃ〈レイン坊〉だ。要するに〈駆け出し(ルーキー)冒険者に見える〉訳だな」


 レインさんが消えたキッチン脇の通路に目を向け、赤茶のアゴをショリショリ撫でて呟くタツさん。


「そう言やあ……〈仲間内以外の護衛〉は初めてなのか。その所為か?」


 そう言われたら『そうなのかも』って思えて来た。


「不安を煽って悪かった。お詫びに〈俺の本名〉教えてやるから、機嫌直せよ。特別だぞ?」


 タツさんが、まだテーブルに懐いてるおれの頭をガシガシ撫でる。

 おれの髪、多分グチャグチャになってる予感。


「その前に。『異世界(ココ)で〈本名〉使うのはヤバい』って、理解してるか?」

「姉ちゃんが言ってた。『召喚された魔法陣に、隷属魔法が入ってるかも』って」

「いや、〈かも〉じゃ無くて〈入ってる〉から。絶対に〈日本名のフルネーム〉は使うなよ?」

「マジデスカ!?」


 思わず頭上げたら、タツさんはメッチャ真剣な表情(カオ)でハッキリ頷いた。


「〈隷属魔法〉は、この国の連中が〈召喚魔法と一緒に〉掛けてる。〈対象〉は〈召喚された人間〉だ」

「ソレ、逃げようが無くね?」

「大丈夫だよ。〈登録された情報と違う〉と〈別人認定される〉から。本名がバレない限り、〈隷属魔法の発動は無い〉んだ。そんなにビビらなくて良いぜ?」


 ニヤッて笑われても、怖いものは怖いのデス。ハイ。



 この世界は、基本的に〈初期スキルと名前〉で〈人物を特定する〉らしい。

 おれたちは〈召喚魔法陣〉に〈召喚された時点の本名〉で登録されてるけど、〈その情報を見れる〉のは〈管理者のみ〉なんだって。

 その〈管理者〉は〈魔法陣を構築した術者〉のコトで、G王国に滅ぼされた〈この地の先住民族〉らしい。

 G王国は単なる〈使用者(ユーザー)〉として使えるだけ。〈構築・管理〉は一切出来ないし、〈情報も見れない〉そうな。


「でも、〈登録〉なんてした憶え無いのに?」

G王国(アッチ)が勝手にやってるよ。〈城で最初に名乗った名前〉と〈鑑定したスキル〉を〈名簿みたいな物〉にこっそり登録して、言う事聞かなきゃ隷属魔法だ。召喚されてすぐ〈偽名〉名乗れる〈マキみたいな猛者〉は、滅多に居ないからな」


 当時は〈地下室に刻まれた魔法陣の上〉に、〈召喚した術者たちに囲まれた状況〉で現れてたんだって。

 メッチャ怖っ!


「俺の時は、居合わせたリューさんが『ローマ字で名前書いて一部変えろ』って言うから従ったけど。忠告聞かずに本名教えちまった二人は、『今も良いように使われてる』って話だぜ」

「うおぅ。何ソレ、マジ恐い……」


 おれ、半泣きになってるかも。


 リューさんはたまたま居たワケじゃ無く、召喚された人に『本名を言うな』って伝える為に警備に加わってたらしい。

 でも、声に出さない〈テレパシーみたいの〉で言われたら――ちょっと怖いよね?


「万全を期して、もう大分前にマキが〈魔法陣への管理者登録〉を済ませてるよ。『パソコンと同じ要領』とか言ってたが、よく解らん。取り敢えず、〈唯一の管理者であるマキ〉以外は〈アクセス全拒否〉にしたとさ」


 つまり〈召喚魔法陣から情報を取るコト〉は不可能に近い、と。

 更に〈魔法陣自体〉もこっそりイジって、〈付近で最も魔力が強い場所〉に現れるようにしたらしい。

 おれたちの時みたいに、〈王サマたちより先〉に〈召喚された人たちと接触する〉為に。


 スゲーなぁ。

 マキさんって、メッチャ頭いいんだね。


 おれは姉ちゃんに言われなきゃ〈異世界ネーム〉なんて考えなかったし、普通に本名名乗っちゃってたかも……。



*********



「そんな顔するなって。〈G王国の人間〉にバレなきゃ大丈夫だから」

「G王国の、って――ケイル団長も?」


 おれが恐る恐る口にすると、タツさんの片眉がグンッて跳ねた。


「ケイルに教えたのか? 三人とも?」

「姉ちゃんが『隠ぺいの相談に乗ってもらう』って。スキルも全部、言ってた」

「そうか……」


 しばらく泳ぎまくってた目が、おれの顔に戻って来た。


「ケイルなら、多分〈召喚に関わった連中〉には伝わらんだろう。だが、〈記憶を読める人間〉や〈同意無く鑑定を使う人間〉も存在する。〈拷問紛いに情報抜かれる事態〉も考えると、知ってる人間は少ない方が良いと思うぞ?」

「……気を付けマス」


 アゴを撫でながら心配そうに見下ろしてたタツさんは、おれの返事に頷いた。


 と思ったら、急にイタズラっ子みたいな顔になったよ。

 何ですか?


「で、俺は〈最後の平仮名一文字〉を抜いた訳だ。〈ウチのボスの呼び方〉は、スズちゃんと同じ法則なんだぜ」


 何ソレ。



 今のシリアスっぽい展開は何だったの?

 『おれには教えてもいい』って判断なら、そりゃヤブサカではありませんケドモ?


「スズちゃん、解るか?」


 ……えっと。〈リュノス・タトゥナー〉だから、〈たとぅなぁン・りゅのすン〉ってコト?

 呼び名の法則って、『最後に〈ノ〉が付くと〈イタリア男(シニョール)〉っぽい』じゃ無いヨネ?

 じゃあ〈りゅーのすン〉で――え?


「もしかして、〈()()()()()()〉?」

「だ~い正~解~!」


 お――ぉおおおお~~!?


「おれ、おれ以外の〈のすけ〉って付く人、会ったの初めて! どーしよ、メッチャ嬉しいっ! おじさん、握手していいっ!?」

「握手ぐらいしてやるから、少し落ち着け。それに〈おじさん〉より、〈名前呼び〉のが良いんだけどなー?」


 名前呼び? していいの?


 〈リューさん〉が居るから〈リューノさん〉は聞き間違いしそう。〈リューノスケさん〉は多分アウト?

 そしたら――。


「じゃあ、おれも〈タツさん〉って呼んでいいですか?」

「勿論良いぞ。敬語も無くて良いぜ。俺たちは〈()()()仲間〉だからな」

「っしゃあーーっ! 初めて〈のすけ仲間〉出来たぁーーっ!」


 メッチャテンション上がっちゃったおれは、両拳突き上げながら立ち上がってた。


 近付くとよく解る〈レインさんよりゴッツい右手〉を、両手でしっかり握って上下にブンブン振り回す。

 でもタツさんはビクともしないし、余裕で笑ってる。

 つか、微笑ましそう。


 何かスゲ~!



********



「スズノ、落ち着け。タツさんは平気でも、お前の方が平気じゃ無ぇぞ」


 不意に後ろから声がして、腕が押さえ付けられて。

 そのまま堅い腕にギュッて抱き締められたら、ヒョイって宙に浮いた。


 流れるような動きで一歩後ろにストンと降ろされると、手首が急にズキッて痛む。


「……手首痛い。ナンデ?」

「急に激しく動かしたから、〈筋肉〉と〈スジ〉が傷んだな。要は〈運動不足〉だ」


 一瞬〈保健室〉に居るような錯覚したけど、ココは〈リバーサイ系列の宿〉。

 おれの目の前に居るのはタツさんで、保健室の先生じゃ無い。


「丁度良いや。スズちゃんは今の内に風呂入っちまえ。今夜移動だし、夕方入って湯冷めでもされたら〈()()()〉面倒だ」


 あー、ソウデショウネー……。


 ココへ来て、ようやく〈別れ際の母と姉の態度〉が理解出来て参りました。

 むしろ、〈今までのおれの無頓着さ〉が〈自分でも怖過ぎ〉なんデスケド?


「ご心配とご迷惑をお掛けしております。……でも、丁度いいって?」

「ココは〈最後(ラスト)()安全地帯(セーフポイント)〉だから、風呂に〈治癒と回復の魔法陣〉が仕込まれてるんだ。人工的な〈回復の泉〉って奴だよ」


 わー、ゲームっぽ……。


 思っただけで〈お口チャック中〉のおれの両手首を、レインさんが気遣わしげに確認してくれる。

 タツさんは、そんなおれたちを見て呆れたように笑ってた。


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