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召喚されたのに非戦闘職は不要と放り出されました。理不尽!  作者: 笠谷 柳斗
第一章 リンドウ家ファミリー牧場計画(仮)
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20 タツさんの言う事にゃ③

 一つ息を吐いたリュノスは、言葉を選んでいるのか、ゆっくりと話し出した。


「坊主は……幼児(チビ)の頃から小さくて温和(おとな)しくて、幼稚園でも女の子たちとよく遊んでたらしい。ソレが気に入らないガキ大将にイジメられて、輪堂(リンドウ)家が引っ越す騒ぎになった――ってのが大まかな話だ」

「それやと、タツさん無関係やよね?」


 シノンが小首を傾げ、リュノスも軽く頷く。


「本来幼児の喧嘩だからな。問題は、騒ぎが大きくなった〈間接的な元凶〉の方だ」

「間接的なのに、〈元凶〉?」

「ガキ大将の親のコネで、幼稚園に雇われてた男だ。〈悪い意味での体育会系〉だったらしい。恩人のガキだからって叱りもせず増長させ、『強い男が正しい』とか『やり返さないからイジメられる』とか、教師(ヅラ)で坊主に吹き込んで追い詰めてたんだと」

「追い詰めたって――爆発したん?」

「自分の代わりに姉ちゃんが神社の階段から突き落とされたら、俺だってキレると思うけどな?」


 赤い獣耳がビクリと揺れたのを横目に、リュノスは熱い(ほう)じ茶を(すす)る。

 シノンが、ふと思い付いたように顔を上げた。


「もしかして――血ぃが苦手って、その所為? 神社の階段長いし、頭でも打ってしもたら……」

「即入院したって言うし、そうかもな。ただ古武術かじってたおかげか、無防備に落ちたりはしなかったらしい。思ったより軽い傷で済んだとよ。流石は〈夏喜(ナツキ)の娘〉だぜ」

「それは何よりや。けど犯人は? ちゃんと罰を与えられたんやろうか?」


 鋭く光る金茶色の瞳に、白髪交ざりの短い赤茶色の髪が緩く横に振られる。


「他に目撃者が居なくて、事故で処理されたらしい。だから言われた通り〈やり返した〉ら、今度は坊主の方を一方的に〈加害者扱い〉だと。迎えに来た保護者たちの目の前じゃあ分が悪過ぎる。(ひで)ぇ話さ」

「真っ正直過ぎや、スズノくん……」

「それ以来、〈体育会系の男〉は坊主にとって〈破滅の使者(トラウマ)〉らしい」

「そやけど、そいつとタツさんとは正反対やない? タツさんは『たとえ悪戯(イタズラ)のつもりでも、度を超えたらイジメ』ってスタンスやし、絶対に許さへんやろ?」

「ああ。だから話さえ出来りゃあ、少しは安心して貰えると思うんだよなぁ」

「そうやねぇ」


 二人同時に焙じ茶を口に運ぶ。

 先に長い息を吐いたのは、シノンだった。


「それでナッキーは? そんな連中、黙って放置したん?」

「夏喜だぞ。〈家族の敵〉を、その後も普通に生活させる訳が無ぇだろ。『事実と一緒に注意喚起したら、周辺一帯が自主的にそいつらとの関わりを絶った』だとよ。いつもの事だが、恐ろしいぜ」

「あ~、前に〈人物を見抜く目〉には自信あるて言うてたし。多趣味やから、思い掛けない繋がりの知り合いも多そうやよねぇ」

「引っ越しも、新しい景色で坊主の記憶を上書きする為だったらしい。だが結局、子供たちの〈心の傷〉は癒せなかったとさ」


 目を上げてリュノスの視線を辿ったシノンは、小上がりで眠る少年の蒼白い顔に行き着いた。

 ちゃんと聞いていたのだろう。レインが気遣わしげに海老茶色の頭を撫でている。

 その隣のサクラは、こちらを向いて小首を傾げた。



**********



「……ん? サクラちゃんが気にしてんのは、ちょこっと違うん?」

「あ? 他に何か――サクラ、また何かやらかしたのか?」


 しばらく思い返していたシノンが、ポンと掌を打った。


「そう言えば――スズノくんが〈混乱の状態異常〉になって、サクラちゃんに治してもろたって言うてた」

「ん? 治したって、サクラにそんな能力――……あ」


 首を捻っていたリュノスが、一点を見つめて硬直(フリーズ)した。


「『あ』って何? タツさん?」


 リュノスは小上がりのスズノに目をやり、それからシノンに向ける。


「シノン、坊主が起きたら夏喜の所に送っちまえ。サクラに乗りゃあ、すぐだ。寄り道無しの全速力で行け」

「え――そらナッキーの鑑定なら、大抵の事が判るやろけど?」

「ああ、夏喜に任せる。俺たちは手を出さない方が、多分良い」

「……これまでの事報告して、ナッキーが納得するんやったらええけど?」


 不安そうなシノンに、リュノスは困った顔でバリバリ頭を掻く。

 大きく息を吐き出すと、焙じ茶を一気に(あお)った。


「夏喜には『俺がドジったから急いで来た』って言っとけ。多分、それで済む」

「え――ほんま?」

「ああ。そもそも、俺へのトラウマ対策は〈ダメ元〉なんだ。姉の〈スークン〉の方が気楽だったけどな。『一緒に魔獣でも討伐すりゃ、多分大丈夫』だってさ」

「何処の〈戦闘狂(バトル・ジャンキー)〉や――って。お姉さんの方が、〈()()()()〉なん?」


 シノンが驚愕の表情でリュノスを見た。

 リュノスはリュノスで、記憶を手繰るように斜め上へと視線を飛ばす。


「確か――『二度と不覚を取らない為に古武術極める』とか『男にだけ〈クン付け〉はズルイ』とか、夏喜に直談判したらしいぜ。〈そーゆー()〉だとさ」

「へぇ……」


 程良い熱さの焙じ茶を飲み込んだシノンの目が、小上がりに座ったままの男の背中で止まる。


「道理でナッキーが、〈ヴェラクリスト家のウィルフィナちゃん〉を〈猫っ可愛がる〉訳やわ。『何か似てる』って、性格の方やったんか」


 呟きが聞こえたのか、赤い獣耳がプルンと動いた。



*********



「それより、今はスズノくんやない?」

「ん~……弟の〈スズちゃん〉の方は、もっと簡単だけど半分賭けだ。結果は〈スズちゃん次第〉、だからなぁ」


 シノンが視線を戻すと、天を睨んでいたリュノスがふと気が付いたようにレインを見た。

 ニヤリと笑う。


「坊主が起きて、もし取り乱したらフォロー期待してるぜ。なぁ、レイン坊?」

「オレに出来る事があるならな……」


 何処か投げ遣りにも見えるレインの答えに、リュノスが『何言ってんだコイツ?』と言わんばかりの顔をする。


「出来る事も何も。〈レイン坊の存在〉が肝っつーか、切り札だろ」


 やさぐれ気味だった赤い獣耳が、ピンと立ってリュノスに向いた。

 目を丸くしたシノンも、慌てたようにコップを置く。


「切り札って――どういう意味? 具体的に、何するん?」

「へ? 夏喜より動物好きの〈スズちゃん〉だよな? レイン坊の獣耳(みみ)でも尻尾でもイジらせてりゃあ、すぐご機嫌になるだろが?」

「「――ん?」」


 振り向いたレインと固まったシノンが、ほぼ同時に首を傾げた。


「近所の〈元・狩猟犬〉がずっと鎮静剤だったらしいし、特にフサフサ尻尾がお気に入りだったって言うし。犬系のレイン坊なら、スズちゃんも文句無いだろう?」


 フサフサ尻尾と言う単語に、レインが若干目を泳がせる。


「あ~、確か〈ジョニーさん〉――だったか?」

「鎮静剤って――もしかして、〈アニマル・セラピー〉やったん?」

「そうそう、ソレ。だから、護衛に〈レイン坊を選んだ〉んだろ。能力的には俺でも充分だけど、スズちゃんのトラウマ考えるとリスキーだし。まあ、案の定だった訳だが」


 リュノスが軽く頷き、シノンが細い眉を寄せた。


「……レインくんは、知ってたん?」

「いや、初耳だ……」


 ぎこちなく振り返ったシノンに、レインが力無く(かぶり)を振って応える。


「そりゃわざわざ言わねぇだろ。リューさんも結構な親馬鹿だぜ? 犬扱いしたらレイン坊が傷付くとか考えても、不思議は無ぇさ」


 あっけらかんとして豪快に笑い飛ばすリュノスを、レインとシノンはただ困った顔で見つめていた。


どうも私は「設定書きまくり隊」の隊員だったようです。

連想ゲームで次から次と浮かんで来て、書いてると話が進まないと言う。

伏線的に置いてますけど…文章量が増えるんですよねぇ。

買ってくれる人が居るなら売りたいレベルですわ…。

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