16 思い出でモノクローム
*読み難かったので文章を少し整えました。内容自体の変更はありません。
黒一色だった世界が、急に白い光で包まれた。
と言っても。目の前は相変わらず真っ黒で、ソレ以外の周辺一帯が白く光ってる気がするってだけなんだけど。
音が消えたような感覚の所為か、〈メッチャ早送りしてる声の歌〉を思い出した。
「……『オラ~ハシンジマッタ』か~」
コレ、結局〈呑み過ぎ〉で天国から追放されて生き返るんだっけ?
酒呑めないおれは、追放してもらえないからまっすぐ昇天コースかなー。
「いやいや、気が早いよ?」
姿は見えないけど、苦笑してるっぽい女の人の声。
女神様?
「神様、どうせなら〈薬剤師の兎さん〉がいっぱい居る〈桃源郷の薬局〉に通いたいです。何とかなりませんか?」
「予想以上の〈モフモフ好き〉。でも、予想外に〈重症〉やねぇ……」
眉を顰めてるような声音になった女神様。
困らせちゃったのかな?
ぼんやりする頭でそんなコト考えてたら。
「何で『助けて』って言ってくれねぇんだよ!」
振り絞るように掠れた低い声が、頭のすぐ上から降って来た。
え?……誰だろ。
神様にしては言葉遣いがアレだし。ジョニーさんなワケも無いだろうし。
……空耳?
「オレはそんなに、頼りにならねぇ護衛なのか?」
護衛? 誰の?
おれの護衛?
……あ、〈保護者代わり〉か。
そっかコレ、レインさんの声だ。
――って。え?
レインさん、何でそんな苦しそうな声なの?
どっかケガしちゃった?
衝撃とかは無かった気がするんだけど?
まさか、ダメージ全部引き受けちゃったりしてないよね!?
「……ほぇ?――あぇっ!?」
何コレ、動けない!?
何かジワジワ苦しいし!
ナンデ――今おれ、どうなってんの?
「レインくん。スズノくんの魔力、漏れまくっとるんやけど。大丈夫なん?」
「……あぁ、解ってる」
オレを締め付けてた何かがフッと緩んだ。
ぼんやりだけど、全身が暖かい空気に包まれてる気がする。
さっきまでの〈暖か結界〉より、分厚いカンジ。
「スズノ。大丈夫だから、ゆっくり大きく呼吸しろ」
背中がヌクヌクして温かい。誰かがさすってくれてるみたい。
ほっぺたが触ってる部分も温かくて、無意識に押し付けちゃってる。
言われた通りゆっくり大きく呼吸すると、目の前の黒一色にチカチカ点滅する光が加わった。
何となく停電からの復旧っぽくて、面白い。
「はぁー……すぅー……はぁー……」
ドコかから、〈ジョニーさんに似てる匂い〉がする。
ぽかぽか暖かい空気の匂い――〈お日様の匂い〉かな?
深呼吸の度に黒が段々薄くなって、チカチカする光も減って、思考がハッキリ繋がってくカンジ。
そう言えば。
中学の体育で〈協力的じゃ無いから〉って校庭グルグル走らされた後も、こんな風に動けなくなってた気がする。
あの時は……保健の先生がすっ飛んで来て、〈酸素吸入器〉使ってくれたんだっけ。
あれ――もしかしておれ、酸欠になってたの?
パニクって、全然気付かなかったよ。
**********
「落ち着いたか?」
さっきよりハッキリ声が聞こえると思ったら、レインさんが屈み込んでおれを覗き込んでた。
「ん……多分」
まだ少し酸素が足んないのか、ボヤケたモノクロの世界に居るみたいだけど。
唯一の〈色付き〉――赤いモフモフお耳は見間違えようが無いよね。髪とヒゲと眼帯もうっすら赤いし。
でも何だろう? この色使い、見たコトある気がする。
あ――〈姉ちゃんの友達が描いた本〉の表紙だ!
確か赤と黒の〈二色刷り〉で、リアルな〈日の丸弁当〉が描いてあった。
そのインパクト強過ぎて、『誰も内容覚えてない』って。
その頃ハマってたゲームのギャグマンガらしいけど、おれも内容は覚えてないや。
ちょっとだけ笑えて来た。
「……笑えてんなら、大丈夫か?」
ホッとしたカンジのレインさんの手が、おれの頭をそっと撫でる。
メッチャ気ぃ遣ってくれてんの、何でだろ?
「あ――パニクったから? 迷惑掛けて、ゴメンなさい」
「そうじゃ無ぇだろ……」
謝ったら、思いっ切り不服そうな溜め息返された。
ナンデ?
「じゃあ……おれの所為で攻撃されたから?」
「スズノの所為じゃ無ぇし、ソレは気にする必要も無ぇぞ。シノンとサクラが結界張ってるの、判るだろ? オレたちには当たらねぇよ」
言われて見上げたレインさんの頭のずっとずーっと上の方で、いきなり氷が砕けた。
見えない丸い屋根にぶつかったカンジで、冷たく光る白銀のツブテが、おれたちを避けてキラキラ降り注いでる。
本当に当たらないって解った途端、メッチャ安心したよ。
おれってば、〈現金〉じゃなくて〈超現金〉だったのかも。初めて知った。
「お~、綺麗~!」
あのツブテは〈触ってもアウト〉らしい。
背の高いトレントの葉の触れたトコから氷が表面を覆って、枝も幹も枯らしてく。
樹氷っぽいのも綺麗だと思ったんだけど。
レインさんの更に盛大な溜め息は、何にデスカ?
……おれ、呆れられちゃった?
*********
「あのなぁ。何でオレを呼ばなかったんだ――って話だよ」
「えーと……うん、呼んでないね……」
中腰ツラいだろうに、おれの少し下からジトッとした目で見上げて来るレインさん。
流石に、なかなかの破壊力デスヨ。
見下ろされるより、よっぽど後ろめたく感じマス。
「お前今、〈昨日よりヤバい状態〉になってたんだぞ。解ってんのか?」
昨日よりってコトは――さっきのアレ、酸欠じゃ無くて〈魔力漏れ〉?
あ~、ソレは心配させるわ。怒られても当然だね。
でも、コレだけは言わせて?
「おれ、魔力使ったつもり無かったんだよ。気が付いたら、目の前真っ黒だっただけ」
氷に全力で意識向けちゃったから、ソレだろうなーとは思いますケドモ。
わざとじゃ無いんです。
ええ、決して。
……だから、その見上げて来るのヤメてください。
どーしても目が泳いじゃうよ……。
重くて深~い溜め息ついたレインさんは、諦めたのか中腰ヤメて普通に立ってくれた。
「それにだ。『お前の事は全部オレに護らせろ』って、〈さっき言ったばっかり〉だぞ。なのに『逃げて』とかほざきやがる。忘れるにしても、早過ぎだろ」
「あ、そう言えば――言われた気がする」
何でだろ。今日の出来事だったハズなのに、随分遠く感じるような……?
おれの頭にボフッてカンジで大きな掌が乗って、グリグリ撫でられた。
メッチャ頭揺れてるけど。
撫でられてんだよな、コレ?
もしかして、『このクソガキ~!』って気持ちも入ってる?
唐突に揺れが止まった。
そーっと見上げると、レインさんが困ったような顔でおれを見下ろしてる。
「スズノ、もう一度言うぞ。お前の事は、身体も心も全部オレに護らせろ」
「……でも、充分護ってもらってるし。おれの所為でレインさんがケガするの、イヤだもん」
唯一の色付きだった犬耳とフサフサ尻尾の赤が薄くなって、可哀想なぐらいにヘタっちゃった。
だけどおれだって、どうしたらいいか判んないよ……。
********
「……余計なお世話かも知れへんのやけど」
コテンと首傾げたシノンさんが、おれを見てた。
「シノンさん? 何?」
結界は今のトコ大丈夫みたい。順調に氷を弾いてる。
氷砕く時に魔力がちょっと変な動きするけど、結界には影響無いっぽいし。
「あのね。スズノくんに何かあると、レインくんが〈依頼失敗〉の扱いになってしまうんやけども。ちゃんと理解出来てるんかな?と思って」
「え?――あっ!?」
シノンさんに言われて、初めて気が付いた。
ザーッて、おれの顔から血の気が引く音が聞こえた気がする。
「すいません、ソレを解ってませんでした! 次からは気を付けマス!」
焦って頭下げたおれを、シノンさんは困ったように見て笑ってた。
「オレの事なんかどうでもイイから――」
「それじゃアカンのやて、レインくん。スズノくんの優先順位をちゃんと考えてあげへんと、いつまでも平行線やよ?」
レインさんは何と言うかもう……〈愕然とした表情〉かな?
「まぁ、スズノくんは〈昔のレインくん〉に似てる子ぉみたいやし。レインくんも少しは〈リューさんらの苦労〉知れて、ええんやないの?」
「う……」
シノンさん、レインさんにはニッコリ笑って毒吐いたの?
レインさんが死にそうな顔になったよ。
でも、ソレも〈おれの所為〉か……。
何かゴメンなさい、レインさん。
ブックマークのみならず、評価まで有難う御座います。
ビックリして、少し速度が上がったような上がらないような…取り敢えず、続きを頑張って書きます。




