04 ふらり馬車から途中下車 sideスズノ
*読み難かったので文章を少し整えました。内容自体の変更はありません。
ボン!って大きな音がして、おれは飛び起きた。
状況がよく解らないまま周囲を見回すと、御者さんと商人さんとロップイヤーのおじさんがビックリした顔でおれを見てる。
それから、おれの右後ろに視線が行った。
おれも目を向けると、黒ブチ模様の白い尻尾がメッチャ逆立ってる。
反対側向いたら、大きな白いブチ猫がメッチャビビった顔でおれを見つめてる。
何だか、空気も変だ。
雰囲気じゃなくて物理的な方。
気圧の変わり方が、日本とはちょっと違うカンジ。
空気が渦状に引っ張られてるけど、その先で魔力に干渉されてるっぽい?
「レイン――オッサン、ドコ?」
首を傾げて呟いた瞬間、外の魔力の流れが変わった。
ブワッと噴き上がってた竜巻がフッて消えたカンジ。
ちょっぴり火の魔力も感じるから、誰かがデッカい〈ドライヤー〉使ったのかも。
そんなの、使えるのは一人しか居ないよね。
多分レインさんは馬車の外に居て、何かと戦ってるんだ。
それは、きっとおれの所為。
おれが『みんな、ケガしたらイヤだ』って言ったから。だから、この中で一番強いレインさんが行ったんだ。
独り――じゃ無いな。姿が見えないシマシマ尻尾のお兄さんと熊のおじ――大きいお兄さんも、多分一緒。
人型っぽい魔力が三つ、ココからちょっと離れたトコに居る。
……無事、なのかな?
さっきから、全っ然動いてないんだけど。
変な魔力が幾つかグルグルしてるから、警戒中ってコト?
う~……見に行きたいけど、足手まといになるからガマンしなきゃ。
「……きっとダイジョブ。〈怖いの〉〈痛いの〉、どっかに飛んでけ~……」
おれは抱えてたぬいぐるみをギューしながら小さい声で呟いて、薄茶のフワフワ毛並みを撫でまくってモフモフした。
あ~、ムチャクチャ癒される~!
ロップイヤーの兎さん、フワフワでメッチャ可愛いよね~。
レインさんにはモフモフさせてって頼めないから、今の内に思いっ切りモフっとこ。
ん?
引っ張るとかしてないよ? ギューしてモフって撫でまくってるだけだよ?
だからそんなにドン引かないでよ、おじさんたち。
**********
……レインさんたち、ずーっと動いてないんだけど。
もしかして……ケガして動けないとか?
いや、レインさんはケガしないよね。
掠り傷付くかどうかって言ってたし!
でも。
シマ兄さんなら、ケガするかも。
熊お兄さんは――シマ兄さんを庇ってケガしそう。しかもその場合、重傷……。
「ムリ! もうガマン出来ない!」
おれは抱えてたフワフワぬいぐるみを目の前に居た御者さんに押し付けて、馬車の外に飛び出してた。
*********
ちょっと走って顔上げたら、レインさんが急いでこっちに来てるのが見えた。
パッと見はドコもケガしてなさそうだけど、見えない部分は判んない。
「オッサンっ――ケガとかしてないっ!?」
「してねぇよ。全員無事だから落ち着け、スズノ」
生きてた――と思った瞬間足がもつれ掛かったけど、転ぶ前にレインさんがガッチリキャッチしてくれた。
ちゃんと触れるし、レインさんの匂いもする。
幻覚とか夢とかじゃ無いみたい。大丈夫そう。
肩をポンポンされて、知らない内に身体中が強張ってたのに気が付いた。
「みんな、ケガしてないんだ。良かったぁ……」
そっとレインさんの上着を握ったら、服の感触も本物だったからやっとホッとした。
馬車に居た人も含めて、誰もケガしてないんだ。ホントに良かったよ。
「遅くなって悪かった。心配させちまったな?」
「ううん。おれのワガママでオッサン困らせたかもって、じっとしてられなくなっただけ。ゴメン」
「構わねぇよ。こんなワガママなら、聞き甲斐もあるってモンだ」
レインさんは優しい。
ってゆーか、お人好し過ぎるかも。
おれの無茶振りなんて、イチイチ聞いてたら命が幾つあっても足んなくなるよ?
戦闘に関わるコト全部、おれは机上の空論なんだから。
ちょっとムリしそうなら断ってって、後でちゃんと言っとかなきゃ。
そんなコト考えてたら、『クルルルル~』って音がおれの中から聞こえてた。
一瞬香ばしい匂いを感じた所為で、おれのお腹が『焼肉食いたい』って騒いでる。
気が抜けたにしても、恥ずかし過ぎるんだけど!
そーっと見上げたら、今にも笑い出しそうなレインさんとバッチリ目が合った。
「ほら、早く馬車に乗れ。それとも野営地まで歩くか?」
「ソレはムリ!」
慌てて馬車に走ったはいいけど、飛び降りたから踏み台出してなかったよ。
自力でよじ登ろうか考えてたら、問答無用でレインさんの小脇に抱えられて馬車に乗せられてました。
片手を荷台の縁に軽く掛けてヒョイッとジャンプで乗れるんだね、馬車って。
一瞬強い風の魔力に包まれたから、魔法の補助があった所為?
どっちにしろ、おれには絶対ムリだけど。
熊お兄さんとシマ兄さんも、人型のブチ兄さんに手を引っ張られて乗ってました。
乗る瞬間、やっぱりレインさんが風の魔法使ってたみたい。
二人とも驚いてたけど、嬉しそうにお礼言ってた。
何か仲良くなってない?
別にいいけどさ。おれが口出すコトじゃ無いし。
とか思ってたら。
ブチ兄さんはおれの顔見るなり、慌てて御者台に行ったよ。
おれの方はいつの間にかキラわれてたらしい。
……ちょっとショック。
********
馬車の中は、何か空気が変だった。
今度は物理じゃなくて、雰囲気の方。
御者さんと商人さんはウッキウキだけど、兎のちびっ子は困り顔のお父さんにしがみ付いてプルプルしてて、ブチ兄さんはおれの顔見てビクッてする。
外に居た三人は無関係っぽいし、多分、おれがやらかしたんだろうな。
正直、さっきレインさんに捕獲されるまでは寝ボケてたカンジだし……。
イロイロいっぱいいっぱいで隠れたかったけど。
唯一隠れられるトイレに立てこもったら大迷惑だよなー。
おれは荷物の陰に丸まって寝たフリです。
いつの間にか、ホントに寝てたっぽい。
気付いたら、レインさんの右膝を枕にしてた。
毛布代わりの真っ赤な尻尾はフサフサで暖かくて最高だけど。
ナゼだ!?
しかも、馬車の空気も穏やかに戻ってた。
特にブチ兄さん。
おれが寝てると安心するってか。
解せぬ。




