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神様のお気に入り  作者: 神崎紗々
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一夜があけて

生まれた時からずっと何かを求められていた。

咲き誇る無数の花、朝なのか夜なのかわからない太陽と月が出ている天気。望めばなんでも出てくる。

そんな場所をフェイレストは嫌っていた。無いものを作り出すというその過程をフェイはとても好きだった。

だからこそ自分の望み通りに動くこの場所は嫌いだ。

そんな嫌いな場所にわざわざ来たのはほんの些細な理由である。

ある一人の神が言ったのだ。

「せっかく全神地上に揃ったんだし全員で集まって話さない?」

その言葉に周りが賛成しあっという間に全員が自分のパートナーが寝た時に集まったのだ。

フェイもあまり来たくなかったが魔王を討伐する側はどうするのかを知っておきたく顔を出しに来た。

自分の体とは何百倍もあるおもそうな扉を軽く片手で押して開く。

「やっほー、みんな久しぶり」

そんな軽いノリで声をかけた。



ぼーっと手のワイングラスを回しながらほかの者達の様子を見ていた。

予想より早く情報収集がおわりやることを無くしたフェイは気だるげそうにしていた。

「よお、久しぶりだな」

隣の椅子に一人の神が座る。

「やあ、久しぶりだね、タルトス」

七神鍛冶の神であるタルトスは僕達みたいに異世界人には付かずにこの世界の住人に付いている非常に稀な神だ。

現神様は総勢十二神、数字が若いほど強いとされるここでは七神でも十分強い。

「お前パートナー出来たんだって?いつかうちの店にも遊びに来いよな」

「いつかっていうか近いうちに行くと思うけどね」

冒険者になったのなら必然と武器無しはとても目立つ。だからと言って安物を使っていたら千冬の魔力に耐えきれず武器が壊れる。それにいつまで経っても異世界の服でいたら余計悪目立ちしてしまうと理解しているはずだ。

だから近いうちにタルトスのパートナーのところへ行くだろう。

「しっかし、お前が気に入るなんて珍しいこともあるもんだね」

「僕をなんだと思っているんだ」

「心の扉を閉めてその鍵を無くした不器用な俺の親友」

「いや何それ」

そんな不思議設定を持った覚えはないぞ。

「ま、その扉の鍵を開けるのは俺じゃないってことだな」

「はいはい」

少し適当にあしらう。

鍵か……。かけた覚えはないけど、かかったとしたらきっとあの時だろう。ずーっと昔の忘れたいけど忘れられない記憶を閉じ込めた時。

「帰るよ」

「まだ三時くらいだぞ?」

「僕のパートナーは早起きなんだよ」

ひらひらっと手を振って部屋の外に出る。

「全く、皮肉なものだね」

千冬のスキルの一つを思い出してそう呟く。

きっとこれも、運命って奴なんだろう。



まだ幼い頃の夢を見ていた。

事故で病院に運ばれ引き取り手が現れるまでまで過ごした夢を。

他の人には見えない私に似て非なる彼女と一緒に遊んだ夢。今では全く姿を見せなくなった彼女とまた一緒に遊ぶ夢。

「おはよ、もう少し寝とく?」

寝ぼけているまま首を横に振る。

少し背伸びをして脳を活性化させる。

「おはよう」

「おはよう、って言ってもまだ四時くらいだけどね」

机の上に地図を広げる。

「地図なんて持ってたっけ?」

「描いた」

城で読んだほんの中に古い地図があった。そこから本を辿りながら地図を今のやつに近付けていったので性格ではないが大まかはあっていると思う。

「ここと、ここと、ここかな。他は合ってるよ」

フェイに指をさされたところを指定された場所に直していく。

「行く、ここ」

地図に描かれてある一つの国を指差す。

タルフ王国。大きな国でここからさほど遠くないドワーフの国。なんでも武器とか作っているとかで作ってもらおう。服もいつまでも制服の間までいる訳にはいかない。

冒険者になったんだったら魔物と戦う機会が来るだろう。制服は少し動きにくいし目立つから早めに変えたい。

「護衛で行く?それともお金払って行く?」

「行く、払って」

一人で行動するならまだしも護衛なら他の冒険者も来るだろうし馬車の人たちが見るかもしれないからあんまり役に立てないし、勿体ないけど今回はお金払って行こう。

「じゃあ行こっか。確か商人達がタルフ王国に向かうはずだから荷物と一緒に乗るんだったら安くして貰えるよ」

なら誰かに取られる前に行かないと。

宿の人に挨拶をして外にでる。

「フードとっても大丈夫なのに」

「癖で」

それに前の記憶がある分少し躊躇ってしまう。今はまだマシだけど昔は当たるだけで火傷みたいに熱くなるとかあったから怖いんだよね。

「いいですか、乗せてもらっても?」

代金を払って一つの馬車に乗る。

あとから自分と同じ飾緒を付けた人達がやってくる。

「ん?お嬢ちゃんも護衛かい?」

ふるふると首を振る。

「へえー、じゃあ武器を買いに行くのか」

「あなた魔法使い?どんな魔法が使えるの?」

後ろのローブを着た女性の人が尋ねる。

「いろいろ」

「そっかー。お姉ちゃんも魔法使いなんだけどなんと火と水と風の三つの属性が使えるのです」

誇らしげにその人は言った。

よく分からないが拍手しておこう。

千冬はそう判断しパチパチパチと手を叩いた。

「おい、そろそろ出るらしいから座れよ」

大人しく座ると数分後に馬車が動き始めた。

だいぶガタガタ揺れて乗り心地が悪い。

冒険者の人達とたわいない話をしている時に何かの大群が近づいているような気がした。

ほんの一瞬だけ外を見るが何も見えない。

けど見えないだけで遠くにいるだけかもしれないし一応言った方がいいのだろうか?

そう考えていると馬車が急ブレーキをかけて止まった。

「冒険者の皆さん、魔物の大群です。迎撃の準備を」

その声が聞こえると武器をとり外に出ていった。他の馬車にも乗っていたらしく何人か出てきた。

さすがに視認できる距離に入り姿を確かめる。

猪に似ていて牙が私が知っているのとは形が違っていた。

ここまで来ることはないと思うが一応私も迎撃の準備をしておこう。外に出て大群を今一度視認する。

スキル 「春夏秋冬」

足から無数の根を生やす。その根はどんどんと延び魔物の下まで到着する。

魔物の足に根を絡ませて動きを止める。

倒したと同時に根を枯らせる。

『多い』

いくら倒してもどんどんと増えてくる。さすがに眠たくなってきた。

『ない、方法、終わらせる?』

『この魔物は自分が生んだ子供が倒される度に強くなる親が存在するんだよ』

念話で聞くとそう返事が帰ってきた。

『親がいなくなると新たな親を作るために子は引いていく。まあ、そろそろ親の体力が無くなるから子は来なくなるけどね』

けど親を倒した方が早く終わる。

近くの魔力を探知する。

森の中に人とは違う魔物の魔力を捉える。

下から親に向かって魔法を放つ。

親の下に魔法陣が現れ赤く光る。

ーーー燃えろ

そう念じると森の中に一つの火柱がたった。

無事子は親がいなくなり帰って行ったが……。

『間違えた』

加減を間違えてしまった。魔力の出しすぎかな。本気の1%くらいしか出てないんだけどな。火事にはならないと思うけど……。

『加減間違えたってレベルじゃないけどね。魔力は本気の0.1でも充分足りるよ。あ、火事にはならないから安心していいよ』

まあ、怪我人が出なかっただけ良かったと思おう。

よし、終わったし質問攻めにされるのもしんどいから寝よう。

そそくさと馬車の中に入り椅子にもたれかかって眠る。



チリチリと炎が燃える音がする。目を開けると体には毛布が被せられており周りには同じように毛布を被って寝ている人が数人。

窓の外を見るとたき火の近くには一人だけ起きて周囲を見張っている。

見つからないように馬車から降り『暗視』の魔法をかける。

『どこに行くのかな』

『分かってるくせに』

馬車から離れた場所の洞窟の前に着く。

「行くのはいいけど普通に行ったら一週間はかかるよ」

実体化したフェイは洞窟にもたれかかり、おもむろに後ろの壁を押した。

「という訳で、普通じゃない隠し通路です」

ゴゴゴゴゴっと音がし壁が崩れ下に続く階段ができる。

「千冬は気づいていると思うけどここダンジョンだからね。たまにこういうふうに隠し通路があるんだよ。時間が経つと元に戻ってスイッチの場所も変わるからね」

中に入り階段を降りていく。

「まあ、早く着ける変わりに罠とか多いけどね」

目の前の棘山を脚力を強化して飛び越える。

罠の場所は把握したし踏まなければ問題ない。魔法で動かしているわけではないので感知は出来ないが観察し構造を考えれば意外と簡単に進める。

最深部かと思われる部屋に到着する。

床に描かれた青の魔法陣。

この形と内容は転移系か。

千冬は手を魔法陣に触れどこに繋がっているのか確かめる。

魔力の跡を辿ってたどり着いたのはまたもや一つの部屋。中には一人の魔力反応。

よし、罠じゃなさそう。

「どれくらい、あと?」

「全然余裕。一、二時間は余裕で話せるね」

魔法陣の真ん中に立ち軽く全体に魔力を通す。

光が溢れ目を閉じる。

「お邪魔します」

再び目を開け先程見つけた人に挨拶をする。

「おお、いらっしゃい」

男の人は焦らず手に持っていた酒の入った杯をくいっと飲んだ。

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