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第七話

 まるで窓から侵入してきたようなマリーナの姿を目にした瞬間、私はこれが現実かどうか判断できなかった。

 もしかしたら、倒れて気絶した私が見ている夢なのかもしれない、そんな思いを抱く。


 こんなときにマリーナがやって来てくれる、それは私にとってあまりにも都合のよすぎる出来事だったから。


「ああ、エレノーラ様!」


「……っ!」


 だが、そんな私の考えはマリーナに抱きつかれた瞬間、消え去ることとなった。


 この二年間、ほとんど触れることのなかった人の温もり。

 それにようやく目の前にいるのが本物のマリーナだと気づいた瞬間、私は強くマリーナを抱き締め返していた。


「マリーナ! 会いたかった……」


 涙がとめどなく溢れだす。

 嗚咽さえ私はこらえることができなくて、けれどそんな自分を情けなく思うことさえできず私はマリーナに抱きつき、泣きじゃくった。


「エレノーラ様……」


 そんな私に、顔を悲痛に歪めマリーナは私を抱きしめる手に力を込める。


「長い間お側を離れてしまって申し訳ございません……。もっと、もっと早く来ることが出来れば……」


 そう呟くマリーナに、私はただ無言で首を横に振った。

 今この時、来てくれたということが私にとってそれだけ嬉しかったのだ。


 ……何せ、この先私に待っているのは最悪の事態かもしれないのだから。


「……最後に、一目でも会えて本当に嬉しかったわ」


「……っ!」


 私の言葉にマリーナの顔に驚愕が走る。

 しかし直ぐに彼女は、私へと口を開く。


「それは一体……? エレノーラ様、私がお側を離れてからのことを教えて頂けないでしょうか?」


 そう告げたマリーナに、一瞬私は公爵家とのことを言うか悩む。

 しかし、ここまで言ってしまってその躊躇は今更だ。

 それに、今や私の中には、久々に会えたマリーナを心配させまいと、秘密を作るだけの気力はなかった。


「実は……」


 そして私は、マリーナへと全てを話し始めた……。

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